あのブログをアップした翌日、一度会社に顔を出して状況を伝えた後
休みを取って病院に直行する。
男性の主治医がナースステーションにいらしたので「どんな具合ですか?」と声をかけると
「ちょっと昨日より麻痺が進んでいます。今日改めてCTと、そしてMRIを撮ります。
今日は造影剤を入れて撮影しますのでより詳細な検査ができると思います。」
笑顔でそう答えるので「そんなものかな」と思い、病室に向かった。
昨日よりひどいなんてもんじゃなかった。
昨日はまだ歩いたり話したりできたのに、今日はまったく反応がない。
目は開けているけれど顔の筋肉がマヒしているせいか表情というものが全くない。
昨日は話しかけたら首を振ることで意思表示ができていたのにそれも全くできない。
こちらの問いかけ自体に反応がないのでもしかしたら言語自体に反応していない、そんな雰囲気だ。
「これは。。。脳こうそくの症状と一緒じゃないか。。。。」
できることは2点。
テレビを見ること。うたた寝から覚めたときに消えていると怒るので(ベッドをたたく)
ずっとつけっぱなしにしていた。
尿意の意思表示。ゆっくり体を起こすので抱きかかえて室内トイレで処理をする。
それだけ。
さすがに「これはもう仕事を辞めなくちゃいけないかもな。。。。」と自分の行く先を案じざる負えなかった。
あんりも悲しいという意識があるのか看護婦さんや先生が話しかけるたびに涙がつーっと頬を伝う。
それがまたたまらなく切ない。
午前中にMRI、午後に脳波の検査を受ける。
「検査が終わったら脳神経内科の先生から説明を受けますので。」と主治医。
後日オットと話したんだけど
「総合病院に入院していたのは運がよかったかも。。。
がんセンターとかだったらどういう対応になっていたんだろうね。。。」
早い対応と継続的な診断が可能な点、総合病院でよかったと思う。
説明室に呼ばれたのは4時半だった。
血液内科の主治医が2名、そして脳神経外科の先生がお話しくださった。
着席すると脳神経外科の先生が説明を始めた。
「まず、今の時点でははっきりとした病名は不明です。」
ここでずっこけてはいけない。原因不明がある意味運が良かったりすることがあるのだ。
「昨日の画像をご覧ください。脳の左側にうっすらと白いもやがかかった状態になっていますね。
脳こうそくの場合、これが翌日になると黒くなるんですが。。。
今日の画像を見てください。その白いもやが消えていますよね。」
「はい。」
「そして右側を見ると今度はこちらに白いもやがかかっているでしょう?」
「はい。」
「そして昨日のもやよりもはっきりしていますよね。で、麻痺症状もひどい。
ただ、この場合だとまだ脳こうそくとしては判断を下すほどの症状が出ていないんです。」
「はぁ。」
「自然に消えた左側の部分は昨日よりも回復しつつあると考えていいと思います。」
「はい。」
「こちらに脳の血管を写した写真があります。」
それにしてもMRIの画像ってすごいのね。。。
脳の血管一本一本が3Dで確認できるようになっている。きれいだ。。。
「こちらについてもあらゆる角度から精査をしましたが
血管が詰まっている様子を発見することができませんでした。」
「はい。」
「可能性としてはMRIに写らない程度のごくごく細い血管が何らかの原因で収縮して
血の巡りが悪くなっている可能性があります。
病名をつけるならば血管炎、あるいは血管攣縮かと。」
「今の状況がずっと続く可能性は?」
「正直な話、はっきりと病名が付けることができない今の時点では何とも申し上げられません。
悪くなるかもしれない。よくなるかもしれない。このままかもしれない。」
「白血病との関連は?」
替わって血液内科の担当医が答える。
「これについては僕たちも疑ったのですが治療の進行状況や骨髄の白血球の数から考えると
まずありえないです。今までもこういうケースはなかったです。
ご安心いただきたいのは白血病の治療については大変スムーズに進めることができています。」
「昨日本人が何気なく『今回は白血球の数値がなかなか上がらない』とぼやいていましたが。」
「それは、治療が長引くと骨髄も疲れが出てしまってそういう時期が必ず来ます。
あんりさんの薬に対する反応がいいので経過を見ながら投薬間隔を伸ばすことも検討しているくらいです。」
「ではとりあえず今の時点でははっきりとした診断を下せるほど兆候が表れていないし
先もどうなるかは不透明だということですね。」
「はい。ただ、当たり前のことですが悪くならないように脳神経的な処置をさせていただきます。
血流維持をするために点滴を行い、血管の炎症を抑えるためのステロイド剤を投与します。
親御さんの承認が必要ですがよろしいでしょうか?」
「かしこまりました。処置をお願いします。
ただ、、、こういったケースはまれなことなのでしょうか?」
「はい。僕も思春期の脳こうそくは初めてです。おそらく数パーセントの確立でのり患かと。」
血液内科の先生も「あまり見たことがないですね。」
「じゃぁ白血病に関係なく、あんりという個体が持つ特性が今回の疾患を招いた、と。」
「そうですね。。。」
「ストレスの可能性もありますか?」
「心因性の可能性も全く否定できません。いろいろありますからね。。。」
白血球の数が上がらず、さらに個室、私自身が風邪をひいて2週間お見舞いに行けなかったこと。
全てが重なりストレスとなった可能性もある。。。
「わかりました。治療をお願いします。ご丁寧なご説明をありがとうございました。」
実はこの日は通販で注文した家具が来る予定になっていた。
予定の時間まであと20分。(予定外とは言え、またばたばた。。。)
あんりに声をかけて家に帰る。「家と近くて良かった」
家具の搬入を終えてまた病院に向かう。
すると。顔に表情が戻っていて体もほとんど普通に動かせるようになっていた。
「えっ!こんなに元気になったんですか!」
「すごい回復力ですよね!」と看護婦さん。
声がまだ出ないけれど首を振ることで意思の疎通もできるようになっていた。
「お、ぴったんこカンカン、マツコ・デラックスだって〜!おもしろそー」とあんりを振り返ると
首を左右に大きく振る。
「チャンネル変える?」
首を大きく縦に振る。
Mステスペシャルが映ると大きく首を縦に振る。
「これがいいのか。」
お見舞い時間が終わる8時近くに
ファンキーモンキーベイビーが出る。私は彼らの歌が好きなので「これを聞いたら帰るね」
歌は「あとひとつ」だ。
あとひとつの坂道を ひとつだけの夜を 超えられたなら 笑える日がくるって
今日も信じているから 君もあきらめないで
あんりが聞きながらぽろぽろと涙を流していた。
今までもずっとつらかった。そして今はまたもっとつらいだろう。
「つらい時は泣いていいからね。。。ゆっくりと病気を治していこうね。
あんりは先生や看護婦さんに恵まれているから大丈夫だよ。」
そう言って病室を後にした。
そして25日。10時ごろに病室に向かう。
普通にベッドの上に座るあんりがいた。表情も普通だ。
適切な処置を受けると人間ここまで回復するのか。。。医療のすごさとあんりの若さに感謝。
声は相変わらず出ないので筆談、エア筆談で言葉を交わす。
「頼まれていたVIVI、読む?」
うなずくあんりに渡す。ページをしばらくめくった後に
「ねえちゃんが帰ってきたら買い物に行きたい」
「そうだね、バーゲンが始まるだろうし。楽しみにしてるよ。」
うなずく。
「今日はだいぶ調子がいいみたいだね」
うなずく。
会話をすることで脳に刺激を与えることができたらという思いもあってくだらない話を続ける。
笑いあう。
「この分だとゆっくり回復していきそうだね。またバカ話をしよう。」
そう言って10時ごろに病室を出る。今度は舅の介護施設への引越しの手伝いだ。
重なる時は何でも重なる。。。
そして3時に帰ると。。。普通に話せるようになっていました。
もちろんまだ完全に回復していないので言葉はたどたどしいけれど。。。。
「昨日の朝、まひがひどくなっていたのは誰が見つけたの?」
「意識がもうろうとしていたから看護婦さん2人がベッドごとどこかに連れて行ったところまでは覚えてる。」
。。。。昨日は実は緊急事態だったのだ。
私は朝、主治医に会ったのに、話したのにそんなことはみじんも感じさせなかった。
医者の笑顔にころっとだまされたよ。
「今日はなんだか愛想がいいな」ぐらいに思ったけど。
役者だな。医者との対話では笑顔注意だな(笑)
というわけで一進一退はあるかもしれないけれど最悪の状況は脱しました。
ちょうど年末年始の休暇と重なるため、あんりと病院で過ごす時間をたくさん取れます。
明日の午前中に会社に行って残った仕事を片付けたら一足早く休みを取るつもりです。
ご心配をおかけしました。はげましのコメントやクリスマスのメッセージをありがとうございました。