【寿社会の虚実】「無縁社会」壊れた家族 死体遺棄 進む刑事事件化 世界に冠たる長寿社会であるはずの日本で、思わぬほころびが露呈した。この夏、全国各地で戸籍や住民票上では生存していることになっていながら、実際には行方が分からない高齢者の存在が次々と発覚した。家族と同じ家のなかで、ミイラとなって30年も“生き続けた”高齢者もいた。「名ばかり高齢者」「無縁社会」といった言葉も登場した。年の瀬に、高齢者行方不明の現場をもう一度歩いた。
各地で明るみになった長寿社会のほころび。発端は7月29日、東京都足立区で、生きていれば111歳になる加藤宗現(そうげん)さんのミイラ化した遺体が発見されたことだった。死後30年以上。家族はその死を秘していた。
事態は刑事事件化。4人いた家族の中で、宗現さんの娘(81)、孫娘(53)が、詐欺罪で起訴された。教員だった加藤さんの妻(平成16年死亡)の遺族共済年金計約915万円を“生存していた”宗現さんの口座に振り込ませて、だまし取ったことが立件された。
年の瀬を迎えた加藤さん宅。インターホンを押すと、小声で「はい」と女性の声。会話を進めようとすると無言になり、インターホンは切られた。
「もう静かにしておいてほしい。私が何かお話しすることで誰も刺激したくない」。この夏、宗現さん宅の様子がおかしいことを最初に指摘した地区の民生委員の女性(73)はそうつぶやいた。
2階建ての加藤さん宅は事件発覚当時と同様、庭の樹木が生い茂っている。近所との交流もないようだ。
すでに孫娘には11月22日、懲役2年6月、執行猶予4年が東京地裁で言い渡され確定している。裁判では孫娘の人生とともに、宗現さんを含む一家の奇妙な姿が明らかになった。
法廷に立った孫娘。小柄で、53歳という実年年齢よりもはるかに老けて見えた。法廷での供述によると、孫娘は21歳以降ずっと足立区の自宅に縛り付けられるようにすごした。結婚歴もなく、友人は「一人もいない」という。
そんな家庭に宗現さんが君臨していた。「洗濯、掃除、買い物の毎日で、座るひまもなかった。厳格で頑固。祖父の発言は絶対で逆らえなかった」と孫娘。
検察側の冒頭陳述などによると、宗現さんは昭和53年10月ごろから言動に奇異な点が現れ始めた。「故郷の寺が見えるから見なさい」「鉄兜をかぶった兵隊の行列がいるから見るように」などと虚空を指さして語り始めた。怒鳴られるのを恐れ、孫娘は「見えるね」などと相づちを打たざるを得なかった。
同年11月ごろ「俺は即身成仏になるから、今後部屋に入るな」と家族に告げた。まもなく加藤さんは死亡したとみられる。それでも家族は放置した。
宗現さんが姿を見せなくなって以降、家の決定権を引き継いだのは娘だった。遺族年金の不正受給を主導したのも娘で、受給の申請用紙を孫娘に取りに行かせた。「母の言うことにも逆らえなかった」
弁護士からの「他の家族と違うとは思わなかったか」という質問に、孫娘はこう答えた。「絶対に服従するという決まりだった」
島田一裁判官は「主導したのは共犯者である被告の母(宗現さんの娘)であり、被告(孫娘)は従属的な立場だった」と指摘した。
娘の裁判は来年2月に公判が予定されている。 |

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