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ブラック・サンデー

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Black Sunday


この映画が公開されるはずだった77年当時、俺は中学生だった。
既に日本で試写会は行われていたはずで、それなりに話題になっており、何となく興味を惹かれたので友達と劇場に観に行こうと思っていた。
ところが、突然の公開中止である。
この映画を上映する映画館を爆破するという脅迫があったためだ。

当時、俺の地元では前年の東アジア反日武装戦線による北海道庁爆破事件の衝撃がまだ冷めやらぬ頃であり、「映画館を爆破する」という事が本当にあり得そうな空気感があった。
俺にしてみれば、よど号ハイジャック事件、あさま山荘事件といった一連の新左翼の動きが連日ニュース報道されていた時代に小学生時代を送っていたわけで、自分よりひと回り上の世代の兄ちゃんたちが何かおっかない事をやっているという認識はずっと継続していたし、自分の地元で起こった北海道庁爆破事件はガキでも戦慄を覚えたのだ。
それゆえに、この映画の上映中止は止むを得ない事なんだとすっきりと納得していた。

それから数十年後、DVDの時代になってやっと鑑賞する事が出来た本作は紛れもない傑作だった。
間違いなく名匠ジョン・フランケンハイマー監督の傑作のひとつである政治サスペンス映画だ。
一心乱れぬ緊張感、ほど良いスピード感、ニュー・シネマの面影を残す突き放した視点など、どれをとっても素晴らしい。

レバノンのベイルートを拠点とするパレスチナの過激派組織「黒い九月」の女性闘士が、ベトナム戦争から帰還するも様々な理由から祖国アメリカに復讐を誓う元兵士と共謀し、アメリカのフットボールの最高峰であるスーパーボウルの会場で観客皆殺しを計画するという話だ。
国際的なパレスチナ問題ばかりではなくアメリカの病巣にまで踏み込んでおり、政治的な観点が出来うる限り中立的に描かれている。

ちょっとフリードキンを想わせるドキュメンタリー・タッチの緊張感溢れる導入部からして素晴らしい。
「黒い九月」のアジト内でスクリーンに映し出されるのは、ベトナム戦争で北ベトナム側の捕虜となり、自らの行為を自己批判するアメリカ兵 − 「黒い九月」のメンバーは今回の計画に利用する元兵士のアメリカ人の人的資質について慎重に検討する。
ヒリヒリした空気感を漂わせるこのシーンからして引きずり込まれてしまう。



イメージ 2

「黒い九月」の女性闘士を演じるマルト・ケラーが素晴らしい。
彼女の代表作と言っていいのではないだろうか。
組織の大量殺戮計画のために冷酷に人を殺して任務を遂行する姿には何か言いようのないファム・ファタールさを感じる。
こんな計画が成功するはずはないという前提で観てしまうので、後には退けぬ運命を背負いながら突き進んでゆくこの女性闘士の姿に何か言い知れぬ哀愁を感じてしまうのだ。
彼女が任務のために罪のないアメリカ人を殺せば殺すほど、後には退けぬ彼女の運命を作り上げてしまった世界情勢と政治的背景について深く考えてしまう。

マルト・ケラー演じる女性闘士に対峙するのは、ロバート・ショウ演じるイスラエル諜報部の暗殺者カバコフ少佐。
ロバート・ショウもまたいぶし銀の演技で緊張感を盛り上げていく。
ロバート・ショウがイスラエル側の立場と危機管理の考え方を代表し、アメリカの体制に対して暗に批判的だったりするのが面白い。
イスラエルの百戦錬磨の達人はアメリカでは異邦人なのだ。

ラストの特撮シーンが今の基準から比べて貧弱であるとか、そういう話に興味はない。
この映画は安直なパニック映画などではなく政治サスペンス映画なのだ。

ちなみに、俺がマルト・ケラー演じる女性を「テロリスト」ではなく「闘士」と表記するのは理由がある。
それは、アメリカはどんな大量虐殺を行っても「テロ国家」とは呼ばれず、アメリカ特殊部隊は「テロリスト集団」と呼ばれず、広島・長崎への原爆投下も「テロ」と呼ばれないのであれば、「テロリズム」「テロリスト」「テロ」などという言葉は発生語も含めて全てこの世から抹消したいと考えるからだ。

  • 顔アイコン

    新潮文庫の原作を読んで、楽しみにしていた映画でした。

    bornin195151

    2011/11/16(水) 午後 6:12

  • borninさん

    これはたしかトーマス・ハリスの処女作でしたね。
    後に「羊たちの沈黙」でも話題を集めました。

    そふとましん

    2011/11/16(水) 午後 6:22

  • デンジャラスな題材でしたよね〜、それだけにただの娯楽アクションに比べますとちょっと善悪の感情移入が難しい映画でもあっように思います。TB&ぽち

    pony

    2011/11/16(水) 午後 6:46

  • アバター

    まずレビュー記事に傑作ポチであります!!

    ワタシもほぼ同意でありまして、色んな物議がありますが9.11もアラブの過激派からしたらテロルではなく聖戦なんですよね。

    理由はどうあれ本気度が凄まじかったです。映画はスリリングで素晴らしい内容でありました!!

    気ままに

    2011/11/16(水) 午後 7:05

  • やっぱりマルト・ケラーが良かったですね〜
    これ原作めっちゃ面白いです!

    ちゃーりー・わかめ

    2011/11/16(水) 午後 8:08

  • ほんとすごい内容みたいですね。
    これを中学生時代に観ようと思ってたそふとましんさんもすごいんではないでしょうか^^
    関係ないけど、曜日に色を付けるとなんかカッコイイですよね〜
    ブルーマンデーとかとかww

    プチマリー

    2011/11/17(木) 午前 9:47

  • ポニーさん

    TB&ぽち有難うございます(^^♪
    この映画は意図的にマルト・ケラー側に感情移入させようとしているようにも思えるんです。
    ほぼマルト・ケラーが主役と言っていいくらいですよね。
    ニューシネマの残像も感じる映画ですね。
    要するに、観終わってすっきりはしませんよね・・・。

    そふとましん

    2011/11/17(木) 午前 10:37

  • 気ままにさん

    傑ポチ有難うございます(^^♪
    俺は近代戦における空爆とか、ああいう民間人をも巻き込むものはすべてテロじゃないかと思います。
    アメリカやヨーロッパがやればテロじゃなくて、アラブ諸国がやればテロ?・・・定義はあるんでしょうけど、アメリカに都合のいい定義など通用しないと思っています。

    それにしてもこの映画は期待以上の凄まじさを感じました。
    77年という時代も無視出来ないと思います。

    そふとましん

    2011/11/17(木) 午前 10:38

  • ちゃーりーさん

    マルト・ケラーは絶品でしたね。
    どうしたって彼女に感情移入してしまう映画でした。

    これがトーマス・ハリスの処女作だったらしいですね。
    原作は読んでいませんが、面白そうですね♪

    そふとましん

    2011/11/17(木) 午前 10:38

  • プチマリーさん

    中学生時代に観たいと思った動機はどうって事はなくて、政治的背景はあると思いましたが、基本はパニック映画かなという感じでした。
    上映中止になった事を知ってから、むしろもっと観たくなりました。

    曜日に色ですか〜♪(^o^)
    ありますね〜(^^♪
    若い女性に人気のブラック・サンダーとか♪(^o^)
    ・・・それはお菓子でした・・・♪(-_-;)(笑)

    そふとましん

    2011/11/17(木) 午前 10:38

  • 顔アイコン

    これ、昔、昔に名画座で見た記憶があります
    すっごく面白かった、原作も読みました
    トマス・ハリス、寡作にして傑作書く作家ですよね

    [ ビジネス東京 ]

    2011/11/17(木) 午後 0:11

  • ビジネス東京さん

    名画座とはいえ公開されたんですか??(・o・)
    試写会は行われましたが、日本での劇場公開は2006年までなかったと認識していました・・・。

    そふとましん

    2011/11/17(木) 午後 0:24

  • こりゃ傑作っす。私も中学で観に行くつもりでした。
    ブルースダーンとロバートショウの対決ちゅうのが通好みでよろし。
    結末はともかくアメリカやシオニズム的な映画ではありませんね。

    [ キヨモジ ]

    2011/11/18(金) 午前 0:05

  • キヨモジさん

    あの当時ってまだただならぬ雰囲気があって、こっちじゃ道庁爆破事件ですから、観に行きたいけど劇場爆破されたらたまらんなって、そういう事を中学生のガキだった俺がマジで考えたりしていました。
    ブルースダーンとロバートショウという組み合わせはたしかに通好みですよね〜。
    ああいう結末であっても、シオニズムに肩入れしているとは思えませんね。
    出来る限り中立的な視点で描いて善悪二元論じゃないところがこの映画の優れたところだと思います。

    そふとましん

    2011/11/18(金) 午前 9:25

  • 私も文庫で原作読みました☆彡
    映画見てみたいです(^^♪

    wonderyama

    2011/11/18(金) 午後 11:08

  • wonderyamaさん

    頂いたコメントを見ると原作を読まれている方が多いようですね♪
    映画は絶対のおススメです。
    政治サスペンス映画として超一級です♪
    これが長年日本未公開だった事が悔やまれます。

    そふとましん

    2011/11/19(土) 午前 10:50

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