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石丸次郎氏はアジアプレス・インターナショナル 大阪オフィス代表である。このフリージャーナリストの集団に所属する吉田敏浩さんに自分の受けた弾圧について取材を受けて、岩波新書「ルポ 戦争協力拒否」のなかで取り上げてもらっている。イラク戦争報道での綿井健陽さんなどなかなか気鋭のジャーナしストを抱えたところでもある。石丸さんは数百人もの脱北者への聞き取りをベースにしながらこの2冊を書いた。 「北のサラムたち」(インフォバーン) 「北朝鮮難民」(講談社現代新書) 他に訳書に「涙で描いた祖国」(風媒社)がある。石丸さんの関連した著作では以上3冊に目を通している。 9/17日朝首脳会談後、人の薦めもあってまず目を通したのがこれらだった。石丸さん自身は会談後の講演の中で金正日体制下の抑圧のひどさは知ってはいても、拉致事件そのものには確信がなかったという。あまりにも荒唐無稽、と映ったからだろう。しかし、大量の脱北者からの聞き取りによる政治抑圧や、飢餓のひどさに関する記述は説得力がある。 脱北者をかれは「北朝鮮難民」と呼ぶ。国際的には脱北者は難民認定されてはいない。しかし、実際住むことができないほどの経済的な困窮・政治抑圧にさらされているわけでその難民認定を行うべきではないか。そのような主張に基づきこう呼ぶ。彼らも自分らが助かりたい一心で、大げさに誇張したり事実を歪曲したり、ということはあるそうだ。だから大量の聞き取りを行って、矛盾や事実関係の精査を行って真実の姿へたどり着くしかない。北朝鮮国内での開かれた取材が不可能ならこれ以外に方法がない。 これらの著作で出てくる公開処刑や強制収容所の実態は明白な人権侵害である。国際的に問題にされ是正されるべきだ。また、一方これらの問題を考える上で民族排外主義や差別主義にも陥ってはならない。右派からは平然とそうした主張が出てくる。石丸さんはかつて韓国にも留学、韓国内の民主化運動にも心を寄せていた。そんなリベラルなスタンスだから、拉致報道後のその危険性にも憂慮し、報道内容を批判する議員会館内での集会などにも関わったりしている。この問題をめぐってはジャーナリストの中でもっとも信頼できる人物だと思う。 なお以前紹介した辛淑玉さんの「鬼哭啾啾」の中でも彼は登場する。そもそも脱北者と彼女が会って話をするきっかけを作ったのも石丸さんだったそうだ。まだ拉致問題、朝鮮民主主義人民共和国について何も読んだことがない、というならまず彼の著作を推薦する。 |
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