鐘が美しい音色をたてて
朝の澄み渡った空気に響き渡り
ラヴェンダーとタイムの花に囲まれ
祈りを捧げる子どもに届く
鐘を撞く男は光る鳥を脇に見て
ラテン語で祈りをつぶやきながら
古綱を張った石の上にまたがり
はるかな鐘の響きを聞くのみだ
俺がその鐘を撞く男なのだ ああ 狂おしき夜に
俺は理想の鐘を鳴らそうとして綱を引くが
忠実な翼も冷たい罪業で空回りし
鐘は途切れがちで空ろな響きをたてるのみ
だがそのうち 俺は鐘を撞くことに疲れ
サタンよ 石をどけて古綱で首をくくるだろう
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王女さま! へベが担いだ壺から水が流れ出し
それがあなたの唇を潤すさまが妬ましくて
わたしはわたしで火を使う でも司祭のようにではなく
またセーブルの皿にあなたの裸体を描くこともしない
わたしはあなたの飼いならされたペットではなく
ボンボンでも 口紅でも おもちゃでもないから
わたしはあなたの視線がわたしに注がれるのを感じ
名工が編み上げたというあなたのブロンドの髪に見入る
名付けてください ラズベリーのようなあなたの唇の笑い声が
おとなしい羊たちの鳴き声と溶け合い
わたしの願いをもてあそぶ うっとりとした音をたてて
名付けてください 愛の天使が扇の翼に
フルートを手に羊たちを眠らせるわたしの姿を描くように
王女さま わたしをあなたの笑い声の牧童と名付けてください
ヘベはギリシャ神話に出てくる若さの女神である。
神々の宴会に給仕係として仕え、
壺を持ってネクタルをついで回った。
美術作品では、壺を肩に担いだ姿で描かれることが多い。
アングルの有名な絵「泉」も、ヘベをイメージしているとされる。
この詩はそのヘベをイメージしながら、
女性の美しさを幻想的に表現したものだ。
書かれた時期からして、
その女性はマリー・ジェラールだと思われる。
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月は悲しみに沈んでいた
涙にくれた翼の天使が夢見心地に弓を持ち
湿った花々に囲まれながら ビオラを弾くと
白く咽ぶ音は紺碧の花弁の上をすべっていった
あれは初めて君の接吻に祝福された日
わたしは自分の夢に殉教し
悲しみの匂いに酔った
その匂いに後悔も消えうせ
夢は心の中に舞い戻っていくのだった
私は古びた敷石に目を向けつつ歩んでいた
すると太陽の光を髪に受けた君が
夕べの街角に微笑みながら現れたのだ
君の姿は光の帽子を被った妖精のようで
少年の頃に夢の中で出会った気がした
妖精のいつも開き加減の両手からは
薫り高い星屑が雪のように降っていた
最初の四句では、詩神としての女性が、
羽根を広げ弓をもつ天使のイメージに描かれ、
それは悲しみの情緒を伴っている。
次の五句は、女性と初めて結ばれたときの喜びを語り、
最後の七句ではその女性の妖精のようなイメージが語られる。
妖精の開かれた手からは星屑が舞い散るが、
それはマラルメにとって、
詩を構成する断片の数々に他ならなかった。
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この泡と 処女なる詩が
描かれているのは聖餐の杯
彼方ではシレーヌの一群が溺れ
みな身を逆さにしている
さあ船出だ 我が友たちよ
我はすでに船尾にあり
諸君は舳先に立って
雷光ひらめく冬の波を掻き分けて進め
我は心地よき酔いに促され
倒れるのを恐れることなく
高々と乾杯の杯を上げよう
孤独に 暗礁に 星に
何であれ我らの航海にとって
不安を知らせるすべてのものに
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この泡と 処女なる詩が
描かれているのは聖餐の杯
彼方ではシレーヌの一群が溺れ
みな身を逆さにしている
さあ船出だ 我が友たちよ
我はすでに船尾にあり
諸君は舳先に立って
雷光ひらめく冬の波を掻き分けて進め
我は心地よき酔いに促され
倒れるのを恐れることなく
高々と乾杯の杯を上げよう
孤独に 暗礁に 星に
何であれ我らの航海にとって
不安を知らせるすべてのものに
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