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ぼくは戦場を逃げ出して 花崗岩を抉ってできた深くて暗い トンネルの中を歩いているようだった そこは横たわったものたちがうめき声をたてていた 考え事をしてるのか 断末魔のうめきか 身じろぎもしないで 様子を探っているとひとりの男が身を起こし 目を凝らしたまなざしでぼくを見る まるでぼくを祝福するかのように手をのばして 男の微笑からぼくはここが恐ろしい広間だと その死んだ微笑からここが地獄だと悟った 亡霊のような顔には無数の恐怖が刻まれている だが地上からは血がしたたり落ちてくることはなく 地上の銃声も聞こえずうめき声も漏れてこない “誰だか知らないけど” ぼくは言った “ここには嘆くべきことはない” “そのとおりだ” 男は言った “過ぎ去ってしまった日々や 希望のないことは別だが 君の希望がどんなものにせよ ぼくにも希望があった ぼくは野生の美を追い求めて 世界を飛び回った それは人のまなざしの中に静かに映るようなものではなく 時間の歩みを打ち破るような烈しいものだった 嘆きがあるとすれば ここでの嘆きより強いものだった ぼくは陽気になって人々を笑わせることもできた また叫ぶこともできた だが何かを叫び忘れていた その叫び忘れていたものとは 真実のことだ 戦争の悲哀 戦争がかもし出す悲惨のことだ このおぞましいことにはもう満足してもよいだろう なのに人々は満足せずに血を流し合い トラのような敏捷さで戦場を駆け巡り 戦列を離れようとしない それだけ進歩から取り残されるのに ぼくは勇気を持っている 不思議な勇気を ぼくは知恵を持っている 大いなる知恵を それでもって世界が壁のない城砦へと 退却していくことを阻止したいんだ 血の海ができて戦車が進めなくなったとき ぼくは起き上がって兵士たちの血をきれいな泉で洗ってやろう 汚すことのできないほど深い真実で清めてやろう ぼくは自分の魂を惜しみなく注いでやる 傷を癒すためではなく 戦争をやめさせるために ぼくは君が殺した敵兵なんだ この暗がりでもすぐ分った 君はそんなふうにしかめ面をしながら 昨日ぼくを剣で刺し殺したんだ はらいのけようとしたけど 手がかじかんでできなかった もう寝よう“ この詩の中の一説「I am the enemy you killed」は、
オーウェンの墓に刻まれた。
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