チームワークがなぁなぁ主義になってしまっていると、誰もが感じていたチームの枠では、仕事の分配が他のチームの人から見ても無残に偏っていたそうです。それ以外のチームの枠では、先に入社した人も、後から入社した人も、お互いの知らない、経験を積んで習得した仕事の知識を教え合い、誰が休んでもうまく仕事が回るようにを目標に掲げて仕事をしていたそうです。
ところが、なぁなぁ主義のチームでは、友達感覚の人にだけ仕事を回し、そうでない人には何も回さない風潮が起きて、仕事の知識が見事に偏ってしまいました。始めは他のチームと同じような雰囲気だったのですが、後で入ってきた人が、見事にその雰囲気を壊してしまったそうです。
以前のチームの雰囲気であれば、時間が余った人に、相手の知らない仕事を教え、その仕事をみんなで分配して、助け合っていたのですが、その人は、友達感覚の人にだけ分配しました。友達感覚でない人には、仕事が少なく、手持ちぶたさになった時、何か手伝うことはあるかと聞きにいってもそっけなく、中には上司のいないところで「渡せる仕事、あるっちゃぁ〜あるけど、あなたのレベルじゃちょっとねぇ〜。」と言われた人もいたそうです。上司からもらった資料も、「あの人はこれできるけど、あの人はできないからいらないわよね〜。」と、チーム全体に、いるいらないの声がけをすることもしませんでした。自分がトップで後のものは下という、自分勝手なカースト制を作り出したいのです。
あまりにも不平等だと感じた、その人よりも先に入社していた一人の人が「別に役職もない人ばかりのチームなのに、上下なんてつくらなくていんじゃない?みんな同じチームの仲間でいいんじゃないの?」と問いかけたところ「私はあなたの部下ではありません。私は○○さんの部下です。後から入ってきた私の部下には仕事を回しますが、あなたは部下ではないので渡せないです。それが仕事というものですから。」と言われたそうです。あまりにも横柄な口ぶりと態度に怒りも飛び越し、もうあきれ返るばかりにしかならなかったそうです。
「仕事って、上司に好かれないとダメなんです。」が口癖なその人は、上司の前では、思いっきり女の子の笑顔で、気に入るような会話を選んでいました。その流れで上司はチームの仕事の仕分けなど、大半のことをまかせるようになったのです。しかし、少しでも上司を不機嫌にさせると、そのチームのはねっ返りのなさそうな人に「ねぇ!!私何かしたあー?!上司のあの目つき!何なのよっ!!!」と、上司に言えない暴言を、ぶつけていたそうです。またこなす仕事の種類の少ない人には「レベルが低い仕事しかしないというやり方はだめですよ♪」とクスッと笑ったり、時にはレベルが低いといった人の仕事を手伝って失敗した時、その人のいないところで、上司に「たぶんその人がしたんですね。」と言っていたそうです。また別件で、上司の前では「私がしました。」と謝っていたかと思うと、グループのみんなには、はねっ返りのない人がしたんだと、こっそり耳打ちをすることもあったそうです。
特にミスに関してはものすごく、誰がしたのだと、ことごとく追及し、自分であったときには「あー私っておっちょこっちょいだからぁ〜。」と笑ってすますけれど、それ以外は、みんなに聞こえるように大きな声で「ここ、ミスしていました!あ〜だこ〜だ・・・」と、まるでドラマに出てくるできる女を真似るような口ぶりで話していたそうです。相手のミスを強調する意味もありますが、上司に私はこれだけ指導力がありますということをアピールしたいと意図が一番だったようです。先に入社した人のミスに対しての口調は、それこそ得意げだったそうです。そんなことをしているうち、ミスをしたのは誰だという追及ばかりが先行する風潮、そして、その時にミスの多かった人のすぐそばで、チームの人がかたまって「信じられない!」などその人のことを笑ったり、その人のミスを叩いたりする悪い風潮が増えだしたとのことです。ミスをする人は委縮してしまい、ミスの数も中々減らない状況に。そんな状況にもかかわらず、たまたま部下のミスをチェックをし損ねた上司までもが「ミスをしたのはこの人です。」と大勢の前で呼び出し、ひと騒ぎを起こすまでになってしまいました。
ある忙しい時期。どのチームもとてつもない激しい忙しさの為、いくらかのミスがあったそうですが、それぞれのチームでは「これ、もしかして違ってるのと違うかな?」「すみません。助かりました。」「いいえ、どういたしまして。」の助け合いの声があがっていたといいます。なぁなぁのチームでもミスがあったそうです。相変わらず、カースト制をつくりたがるその人は、自分のミスに対して要領よく愛想よく笑いながらミスを切り抜けていました。しかし、はねっ返りのない人がミスをした瞬間、同じようなミスをしたのにもかかわらず、わざと大きな声を出し、資料で机をコツンと叩き「コレ!訂正してく下さい。」と言ったかと思うと、「この件、一度、上司に相談しないといけないですね。」と大ごとにもっていこうとしたそうです。
丁度、はねっ返りのない人が席をあけていた時、その人と、その人の上司は、もっと上の上司と、別の仕事の話を、偶然に始めたそうです。その時の流れで、ミスの対応についてのことが出た時、その人の上司は「最近のミスはBさん(はねっ返りのない人)なんですよ〜。ホント、ダメな人なんです。」と言い、そばについてたその人も「確かに。確かに。」とニヤニヤ愛想笑いをふりまいたそうです。・・・と、その時・・・・!!!
「何ていう言い方するんじゃー!!!! 人のせいにする前に、お前がしっかりと指導しなくてどうするんじゃー!!!」
「そんなことほじくりかえすより、ミスは誰がしたんだっていうことよりも、それをみんなで共有して、これからどうしていけばいいか考えていくことの方が大事やろがー!!!」
・・・と、みんなの前で大声で言ったそうです。
周りのみんなは、突然の出来事に唖然としてしまったそうです。カースト制をつくろうとしているその人も、そばにいたのが気まずくなったのか、うつむきがちになったそうです。
大声をあげた上司は、その現場の個々のチーム全体を総括する上司でした。カースト制をつくろうとした人は、この上司に顔を売るチャンスだったのに、その場にいた為、逆効果になってしまったようです。
その後の別のお話ですが、総括する上司は、大雨の日、「オフィスの床が濡れているな。濡れたまま入ってきたのは誰なんだろうね。」と、自分のデスクに座っていたその人に笑いながら話しかけたそうです。すると、とっさに小さな声で、廊下のそばにある席を見ながら「Bさん(はねっ返りのない人)です。Bさん・・・」と言ったそうです。 ・・・と。
「あんたが、濡れたままのコートを椅子にかけてるからだろ!しっかり拭いてかけないといけないだろが!!!」
・・・と、叱られたそうです。その総括している上司は、誰かに濡れ衣をかけている様子もお見とおしだったようなのです。暫くの間、二人の間に会話はなかったそうです。
更にそれからの後のお話ですが、チームのみんなが仕事の少ない時期、その人は、上司から大きな仕事をまかされたそうです。チームの中には、手持ちぶたさは嫌だから、できればその人のお手伝いをしたいという人もでました。その声をきいたその人は、友達感覚の人には「上司に声をかけてみるわ。」と言ったのですが、その他の人に対しては「私たちには、仕事がありますが、あなたたちにはないので、自分の場所で、ずっと待機するしかないですね。」といってのけたそうです。もちろん「あなたたちには、ありません。」と言われた同じチームの人が良い気がするはずがありません。その人たちにすれば「無いのは無いで仕方ないこと。また自分たちで何かを探すなりすればいいから。でも、ないからそこでずっと待機しておけっていう、その口ブリはいったい何様なのか!!」ということだったそうです。その人たちは、少ない仕事をわけあいながら、また探してきた少ない仕事を分けあいながら、毎日仕事に励んでいたそうです。
ある朝のことです。出勤した時、カースト制をつくろうとしている人が、ポツンと背を向けて、自分の机に座っていたそうです。下を向きながら、どことなく元気がなかったそうです。どことなくへんだと思いつつ、
少ない仕事をわけあっていた人が机につくと、はっと気づいたそうなのです。なんと、みんなで分け合っていた仕事の三分の一ほどがありません。
よくみると、カースト制をつくろうとしている人の机の元にそれがありました。遅刻寸前に出勤するその人が、早くに出勤すること自体変だと思っていたそうなのですが、予想外のことに気づいた人はびっくりして、その人を見ていると、その人は気づいて振り向き、「今日は、まかされているお仕事が、まだ他の部署から届いていませんので、今日はお手伝いします。」っと、にっこりとほほ笑んだそうです。それを聞いた瞬間、その人は「あなたたちには、ありません。」の一言が頭をよぎり、おなかの中が煮えたぎりそうになったそうです。
そして、更に減ってしまった仕事を、残りのみんなで分け合わなくてはならなかったそうです。その異様な雰囲気に気づいた上司は、カースト制をつくろうとしているその人に「この仕事をしてください。」と、別の仕事を少し与えたそうです。とりあえず持ちこたえた雰囲気の中、暫くしてその人は、上司に与えられた仕事を終わらせてしまいました。もう手渡すものがなくなったのか上司はそれっきり、その人に何も渡さずに終わりました。そして更に、自分が机に持って行った仕事も終わらせてしまいました。手持ちぶたさになってしまったその人は、トイレに行って暫く帰ってきませんでした。帰ってきてからも、うろうろと、自分の机には戻らず、部署にいってまかされている仕事が届いていないかそわそわしていたそうです。
結局、戻ってきたのは「あなたたちには、ありません。」と言った人たちの机のそばだったそうです。けれど、この時はさすがに、今までのこともあるのか、それとも、言葉にすれば怒りに変わってしまう気持ちが嫌なのか、言われた人たちも、ただ、黙々といつもの業務をこなしているのがせいいっぱいという感じだったそうです。そんな雰囲気の中、その人は、それでも何も言わずに、その人たちの机にある仕事を、くちびるをかみながら、じっと見続けていたそうです。・・・と、その時でした。
「だいじょうぶですか。何もなかったら、これ持って行って下さいね。」
それは、Bさん(はねっ返りのない人)の声でした。自分の残り少ない分をその人に分けてあげようとしたのです。「あなたたちには、ありません。」Bさんも、その人にそう言われた一人だったのに・・・。
周りのチームの人たちも、Bさんの声に気付きました。何となく、その人に、ひごろからされている仕打ちのことを感じている人たちは、きっとその行動に驚いたと思うとのことでした。一瞬、手が伸びたようなのですが、直ぐに手を戻し、その人のプライドが許さなかったのか、その人は、「あとで仕事が来るから大丈夫です。」と、自分の机に戻ってしまったようです。
なぜあの時、Bさんは、ひどい仕打ちをしているその人に、あのような声をかけたのかと尋ねれば、Bさんは、こう言ったといいます。「人にされて嫌なことはしたくないから・・・。」
私は、このお話を聞いて、Bさんが、人に優しくしようと意識するのではなく、自分がもしそうだったらというようなことを、ごく普通に当たり前のように、そういう風に考えられる人であったことに、その人の心の高さを大きく感じました。また、この方と同じく、「ミスはみんなで共有してこれからに役立てよう・・・」そう言われたという、総括されている上司のひとことにも同じことを思いました。「やってしまったことは、自分もまわりも、みんな辛い・・・だからこそ、辛いことが、その先、少しでも減るようにするにはどうすればいいのか、考えよう。」というその気持ち。ある意味、その方は、人の気持ちも総括のできる方なんだなということを、深く感じました。
総括されていた上司の言葉を聞いて、あるグループでは、チーム別ミーティングを開くチームもでてきたそうです。そこでは、他から上司に報告のあったミスや、その時々に多かったチーム内でのミスなどを、名前を伏せて書いて、それを話し合ったり、或いは自らのミスをあげて、どうすればいいですかと相談して、みんなにアドバイスしてもらうなどするそうです。高い心は、また高い心の人をつくってゆくのだなと、そのお話を聞いてそう思いました。
最初から、高い役職の人に好かれようとか、人に何も分け合うこともせず、自分だけ仕事を多く覚えようとか、そういうゆがんだ計算の答えには、どこを探しても優しさなんて答えは見つからないと思います。いつも、もしも自分がそんな立場だったらということを、自らの気持ちに置き換えながら行動できるように意識すること・・・。それが優しさへの近道なのだなぁと、心からそう思いました。
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