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新しい仕事の作業にかかる時、とっても要領よく、さばける人がいます。
人から教えてもらったことをすぐにこなし、失敗なんてしたこともありません。
次々と、多くの仕事をこなしていきます。ですが、その人は、自分には大きく
足りないことがあったと思ったようです。
ある日、仕事上のトラブルがありました。上司は外出中。もちろん、頼りに
されたのは、その人でしたが、その人にもどうしていいかわからないトラブ
ルでした。このままでは、仕事が前に進まないという時、一人の人が、「こ
うすればいいかも・・・」と、遠慮がちに言ってくれました。
その人の言う通りにすると、たちまちそのトラブルは見事に解消されました。
みんな驚きました。というのも、その人は、仕事のできるという人から「あの
人、こんなことしかできないのよ・・・」なんていう、その人の、みんなが知ら
ない日頃の失敗を、影で、鼻で笑いながら、暴露されたことのある人だった
からです。
そんなこともあって、その人が、仕事のできるという人のわからないことを、
あっという間に解消し、周りから、「ありがとう!」だとか「助かった〜」と言わ
れていた時、私も「やった!すごいよ!」って、両手でVサインしたくなるよう
な嬉しさでいっぱいになりました。
トラブルを解消できたことがどうしても納得できない様子の、仕事のできる人
は「なぜなの?」「いつ上司にきいたの?」「誰から教えてもらったの?」とそ
の人を質問攻めにしましたが、その人は、「誰にも聞いていません。」と言い
ました。そうしてひとこと、「いつも、失敗ばっかりしていたから。」と、ぽつりと
言いました。
そうなのでした。仕事のできると言われた人は、難なく仕事をこなし、上司の言
われる通りの仕事をたくさんこなしていました。ここまでは、よかったのですが、
横で失敗ばかりしているその人のことを、冷たくあしらい、鼻で笑うことしかして
いなかったのです。もしも、その人が困った時、一緒に助け合って行動していた
ら、仕事のできると言われた人だって、今回のトラブルを解消できていたかもし
れません。後になって、大きく足りないと、その人にとって、苦い思いをする結果
を招くことになってしまったようです。
一方、その人は、失敗するたびに、仕事のできるという人から、鼻で笑われる
ことにもめげないで、失敗したことをメモしたりしながら、小さな努力を続けて
いたのだと思います。そして、ここぞという時、力を発揮し、周りから「ありがとう」
の言葉をもらえたのだと思います。
失敗することは、恥ずかしくて、しんどいことですが、もう一度困った時、うまくい
く方法を知ることでもあると、その時、思いました。この時から、私も、失敗をした
時は、もう一度困った時に、うまくいく方法を一つ増やしたと、思うようにしました。
失敗した時は、とても落ち込むけれど、こう思うことで、100パーセントではあり
ませんが、いくらか心が軽くなれるような気がしました。
言われたことを失敗なく、一度に100パーセントこなすと、速攻のよろこびがき
ます。だけど、そんな人だけにしか、よろこびがくるのではないと言い切りたい
です。失敗する人にだって、すぐにではないけれど、遅咲きのよろこびが必ず
やってくる・・・失敗した人の気持ちにもなれるやさしい心のおまけも一緒に、そ
の人の胸の内に・・・必ず、必ず、やってくると、心からそう思いました。
Photo by SSA
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