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いつか出る、出る と言われ続けていた
「違法の相対性」が出題されました。

最近は、どの学説を採るか
によって答案構成が大きく異なる
問題となる傾向が見られます。

今年の問題も、
積極的加害意思がある場合に
「防衛の意思」に欠けるとして
正当防衛を否定する立場に立つと、
甲については正当防衛を否定し、
乙については正当防衛を肯定できます。

そして、乙に正当防衛が成立することを前提に、
乙に加勢するために後から
殴打行為に加わった丙について、
違法性阻却が認められるかが問題となります。

本件は「一部実行全部責任」をどこまで
拡張するか、という問題です。

まず、甲と乙との間には、
甲が、乙に対し、
「一緒に反撃しよう。」
と言って、乙が了承した
ことにより共謀が成立し、
Aに対する傷害の共同正犯が成立します。
これは、行為無価値・結果無価値
いずれの見解でも同じ結論となります。

よって、仮に丙が加わる前の、
乙が木の棒でAの頭部を殴った行為によて
脳損傷が生じ、Aが死亡した場合であっても、
甲はA死亡の結果について責任を負います。

問題は、丙の加功が乙との間で
共同正犯となるか、という点です。
仮に、乙との間で共同正犯となるのであれば、
乙を介して、丙と甲との間にも
「共同して犯罪を実行した」関係を
肯定することができます。

この点、結果無価値を徹底する立場からは、
客観的に結果に寄与している以上、
意思の連絡がなくても
共同正犯を認めることができます。

これは、客観的因果を重視し、
犯罪結果惹起の危険性を高めている限り、
「一部実行全部責任」を拡張する見解です。

ただ、受験上は、共同正犯の成立については、
共同実行の事実だけでなく、
共同実行の意思を要求する見解に立つべきですし、
本件では、丙が一方的に乙に加勢しようとしているので、
丙に幇助犯が成立するに過ぎないと解するべきです。

そして、一番問題となる、
A死亡結果を甲に負わせてよいのか、
という点は、207条(同時傷害の特例)
を適用し、仮に、丙の殴打行為によって
A死亡結果が生じたとしても、
丙の行為と甲の行為との間には207条の
因果関係擬制が認められ、この擬制は
傷害致死罪の場合にも適用されるから、
甲は傷害致死罪の共同正犯の罪責を負うと解されます。
(最小従属性説を前提とする)

なお、乙については正当防衛によって
違法性阻却されますが、
構成要件の段階では共同正犯成立の要件を充たすので、
甲について共同正犯の成立を認めることは問題ありません。

さらに、丙については、
乙に加功したことにより
既にAが路上に倒れている以上、
「急迫不正の侵害」が認められず、
正当防衛による違法性阻却はありません。
そして、構成要件段階では
乙に対する加功が幇助となるため、
傷害罪の幇助犯が成立します。
A死亡結果については、原因が丙の行為でない可能性がある以上、
「疑わしきは被告人の利益に」の原則から、
傷害致死罪については罪責を負いません。


次に、第2問です。
各論の問題は、行為者ごとに
刑法上問題となりそうな行為を抽出する
ことからスタートします。
甲については、
・AIT名義で国際運転免許証様の文書を作成し、
 かつ、乙へ交付した行為
・AITが発行する国際運転免許証が有効であるか
 のように偽り、乙から20万円を詐取した行為
・乙をして、虚偽の購入契約を装わせ、
 信販会社が甲の経営する会社の口座に20万円を振り込んだ行為
の3つが問題となります。

このうち、第一の文書作成について、
名義に対する信用を重視する
形式主義の立場からは、何ら犯罪が成立しないと
解されます。
AIT名義の文書には、
運転免許としての法的効果が認められない以上、
内容的な虚偽はありますが、
この虚偽は、第二の「乙から20万円を受け取った行為」
について詐欺罪を成立させれば十分です。

最後に、第三の行為である、
信販会社に振込みをさせた行為
ですが、問題文にもあるように
「商品の購入を仮装した
クレジット契約はA信販会社の約款で
禁止されている」以上、
甲・乙は、信販会社に対して共同して
詐欺行為を犯したことになります。

なお、乙はA信販会社からの請求に対し、
20万円を支払っていますが、
詐欺罪は「個別財産に対する罪」であるので、
後から財産を補填したとしても、
犯罪は成立します。
すなわち、伝票がA信販会社へ交付された時点で
欺もう行為の「実行の着手」があり、
A信販会社が甲の管理する預金口座へ
20万円を振り込んだ時点で、詐欺罪は既遂となります。

これに対し、乙は、
信販会社を被欺もう者・被害者とする詐欺罪の
共同正犯の罪責を負います。
前述のように、乙が信販会社に対して
20万円支払った行為は、すでに犯罪が成立した後に
損害を補填したに過ぎず、
犯罪の成否には影響しません。

現場思考として問題となるのは、
甲は、乙と「共同して」犯罪実行する意思はなく、
乙を信販会社から金を引き出すための道具
として利用したに過ぎず、
利益は全て甲が取得してしまっているので、
このような事情の下では、
甲と乙は共同正犯というよりも、
甲のみが正犯で、乙は単なる幇助犯である
と解する方が自然ではないか、とも思えます。

新司法試験でも頻出の、

最終的な利益が帰属していない者について
共同正犯の罪責を負わせてよいのか、
共同正犯と幇助の区別は何か

という論点が旧司でも登場したことになります。

この記事に

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第1の文書作成の行為について形式主義の観点からあっさりと偽造の成立を否定するのも一つのスジでしょうが、判例(最判平成15年10月6日・刑集第57巻9号987頁)はこの場合私文書偽造を肯定していますよね。

問題文がわざわざ「AIT」名義と設定されている時点でこの事案が素材になっていることには気づかれるべきで、判例に反対する立場に立たれる場合でもこの判例に言及することは必須ですし、むしろ大多数の受験生は判例の立場で論述する(5年前の有名な最判ですから、最新判例で知らないことは許されない)でしょうから、判例の言及や批判がない点で先生のblogの記述には問題があると思うのですがいかがでしょうか? 削除

2009/10/10(土) 午前 1:40 [ Next Person ] 返信する

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