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先月31日、猛暑が続く中、
日本公認会計士協会・前会長の
増田宏一先生による講演会がありました。
増田先生は、今年7月に
会長職を後任の山崎彰三氏へ
引き継ぎましたが、
それまでの15年間、ずっと
協会本部役員(常務理事+副会長、そして、会長)
を務められました。
15年の間、会計士の世界は、
まさに「激動」でした。
金融機関の不良債権処理や
カネボウ・ライブドア等の粉飾決算の問題、
大手監査法人が解散に追い込まれ、
公認会計士法の改正によって
試験制度も大きく変わり、
会計士の世界を取り巻く法律として、
商法と証券取引法がそれぞれ、
会社法と金融商品取引法へ、大きく形を変え、
最近では、
内部統制報告制度・四半期報告制度が導入され、
会計基準の国際的統一の進展
(いわゆる、コンバージェンスからアドプションへ)、
新試験制度の下での合格者の未就職問題など、
一筋縄では解決できない問題が
立て続けに起きています。
このような激動の時代を当事者として
関わってこられた増田先生のお話は
非常に重みがありました。
実は、今後も試験制度の改正が予定されており
(法改正は来年以降で、施行は4年後くらいですが)、
今後も変化は続きます。
監査業務を行う「公認」会計士については、
実務経験・OJTや継続教育などによって
質保証を厳格に行いつつ、
企業内に入って、適正な決算処理・
財務諸表作成などを担当していく
「財務会計士」は、合格者を抑制することなく
優秀な人材へ広く門戸を開いていく、
という二本立ての制度が予定されています。
内需を喚起するビジネスとして、
法務・会計に関する専門的コンサルタント業は
有力な候補です。
そして、会計の分野では、
アジアに流入する海外資本を受け入れる、
信頼性の高い資本市場を、日本国内に構築し、
上海やマレーシアなど、アジア諸国の金融市場と
相互に協力(共存共栄)していくことが
今後の大きな課題です。
ただ、先生の講演の最後でも
言及されていたように、
中国が、会計分野の人材育成
に猛烈な勢いで取り組んでいます。
2009年の年末の時点でも、
9万人を超える会計士がいると言われていますが、
さらに、国家戦略として、
北京・上海・アモイに「国家会計学院」を設立し、
30万人規模で公認会計士を育成する計画
があります。
少し古い報道になりますが、
レコードチャイナのサイトでは、
2008年時点における、中国の会計事務所の
収入が報道されています。
外資系ビッグ4(PwC、E&Y、DTT、KPMG)
の中国事務所が3分の1を占めていますが、
中国本土の会計事務所も
合併によって巨大化している、と報道されており、
09年時点の財務部のコメントとして、
「今後5〜10年のうちに30億元以上の収入を得る、 国際的な会計事務所を5〜10社は育てたい。」
とされています。
会計・監査は、ビジネスの世界における
共通言語・尺度であり、
経済のグローバル化によって、
会計基準の統一化、そして、
専門家の国際競争に必然的に向かいます。
GDPでは日本は中国に抜かれつつありますが、
会計士の分野では、上手く競い合っていきたいものです。
追伸
話はだいぶ変わりますが、
弁護士を目指す人にぜひ聞いて欲しい講演会が、
LECの『法律文化Web』のサイトでアップされましたので、
ご紹介します。 ⇒リンク先はこちら
ウォルト・ディズニー・ジャパンの副代表をされている、
田中久也先生の講演会です。
企業内弁護士として活躍するためには、
その企業が扱っている商品を好きでないとダメ、
ということを、熱く語っていただいています。
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会計士・税理士
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税理士試験の場合、 科目合格制となっているので、 全体の受験者数や合格者数を見ても 実態が掴みづらい点に注意が必要です。 例えば、今年は受験者数が 昨年・一昨年の1000名近くの減少、 というほどには減らず、 出願者数で579名の減少、 受験者数では昨年よりも384名減っただけ、 という結果(51,479名が受験) であったという数字だけを見ると、 税理士試験の受験生離れも一段落したか、 と思ってしまいます。 しかし、科目別の受験者数を見ると、 必修科目である簿記論・財務諸表論 の受験者数が大幅に減っています。 科目 受験者数(前年比) 簿記論 24,468(▲687) 財務諸表論 18,626(▲1,229) 受験生の減少が止まったように見えるのは、 必修科目の合格者が税法受験に移行した 人数が今年は比較的多かったから、 に過ぎません。 しかも、この2科目の合格率を見ると、 簿記論の合格率が大幅に下がっています。 科目 合格率(合格者数) 昨年度 簿記論 9.9(2,418人) 14.2 財務諸表論 16.0(2,976人) 16.1 簿記論(計算重視)はもともと 財務諸表論(理論重視)よりも 合格率は低めで、その分、 再受験者が多くいます。 そのため、今年も受験者数の減少幅が 相対的に少なかったのですが、 今年はさらに簿記論の合格率が下がったので、 来年の簿記論も、 受験者数はキープされ、その分、 合格率が下がってしまう、 という「抜けにくいループ」状態が高まりそうです。 他にも、科目ごとの受験者数に着目すると、 税法の中で比較的人気のあった 相続税法の受験者数が222名、減っています。 相続税法は、将来的に 抜本改正の噂もあるので、 受験生が敬遠したのかもしれません。 科目 受験者数(前年比) 合格者数 合格率 所得税法 3,007(+35) 402 13.4 法人税法 7,746(+103) 934 12.1 相続税法 4,129(▲222) 608 14.7 消費税法 10,857(+84) 1,344 12.4 酒税法 1,244(+123) 129 10.4 国税徴収法 1,139(+79) 129 11.3 住民税 649(+101) 118 18.2 事業税 854(+79) 118 13.8 固定資産税 1,828(▲44) 182 10.0 ちなみに、今年、5科目合格を 勝ち取った「合格者」は1,058名でした。 会計士が毎年2000名近くの 合格者を輩出していることを考えると、 少なく感じますし、 科目ごとの合格率が10%前後である中で 5科目合格を勝ち取るためには、 受験に専念していたとしても、 最短で3年はかかってしまう、と言われています。 今日の記事は、数字の羅列が多いですが、
税理士会が、 公認会計士が税理士登録できることに 反発する理由が何となく分かっていただけたと思います。 |
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今日の日経新聞で、 会計専門家に新資格 という記事が載っていました。 この記事は若干ミスリーディングです。 見出しを素直に読めば、 企業の採用ニーズの高い、 会計専門家を国家資格として創設する、 という、チャンス拡大の方向かな、 と感じるはずです。 しかし、実際には、 「公認会計士制度に関する懇談会」が8日、 設置され、明日(10日)に初会合を開く、 という話がメインです。 公認会計士は、一昨年、昨年と 合格者を大増員しましたが、 最近では、監査法人の採用枠が減ってしまっています。 今回の動きの背景には、 「公認会計士」試験の合格者数を 減らし、さらに、 受験資格まで制限して(大卒者に限定しよう、 という話も出ています)、 監査法人での実務経験を受けることの出来る 人数まで絞り込んでしまおう という考えがあります。 法科大学院制度が導入される前の (旧)司法試験は、まさに、 上記の考え方に近く、 司法研修所でしっかりとした研修を 施すことができる人数に 合格者を絞り込む、 という参入障壁となっていました。 その当時、 最難関試験としての司法試験、 社会人が多く目指す司法書士試験、 そして、学生・社会人を問わず 法律に興味がある人が目指す行政書士試験、 という三段階があるのが、 法律系資格でした。 今回、新資格創設が登場してきたのは、 会計士試験の競争率を難しくして、 社会人には、 企業で勤めることを前提とした新資格か、 独立開業向きの資格である税理士試験、 のいずれかを目指してもらい、 学生・社会人を問わず 経理・財務に興味がある人が目指す 日商簿記やビジネス会計 などの検定試験、 という三段階制を 会計系資格についても用意する、 という考えが背景にあると思われます。 以前、「@キャンパス」を見た感想 でも書きましたが、 試験に合格すれば、基本「受け身」で 仕事が舞い込んでくる、 という業務独占的な発想は、 長期的に見て、その士業のプラス・ 活性化につながりません。 どんな業態も、新規参入の脅威に さらされながら、日々、 サービスの質やコストを見直しているのであって、 クライアントが競争の中で 何とか生き残りをしている以上、 専門士業も、同様のプレッシャーに耐えていく姿勢が 必要であろう、と思うのです。 もっとも、企業相手でない、 刑事弁護や弱者救済の活動は 別段の考慮が必要です。 刑事弁護や弱者救済の仕事だけでは 弁護士として、事務所経費を賄うだけで 精一杯で、自分個人の質素な暮らしも維持できない、 という状況が大問題です。 とはいえ、国からの補助金でどうにかしよう、 という考えも捨てるべきだと思います。 弁護士自治を唱えている以上、 こういう公益活動をしている 弁護士をバックアップすることこそ、 弁護士会の役割です。 弁護士会が会費を徴収するにあたって、 高額な収入を得ている弁護士からは、 多くの会費を払ってもらい (その分、寄付金扱いで所得税減税を申告させる) その会費を再分配して、 公益活動に励む弁護士を応援する、 というのは大賛成です。 実際、現状の弁護士会は
強制加入団体なので、この手の会費徴収が 難しいかもしれませんが、 強制加入であることは維持しつつ、 弁護士会が所得の再分配機能を果たす道が あるのではないか、と思う次第です。 |
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kul*y*n0*25さんから 税理士資格に未来はあるのですか という重めのコメントがありました。 今日は、あまり知られていない 税理士試験の制度改革の動き を紹介しつつ、税理士資格について 私の考えを少し書いてみます。 まず、現状の税理士試験の仕組みですが、 科目合格制という特殊な制度 が採用されています。 簿記論と財務諸表論が必須科目で、 この他に税法科目を3科目合格することで 初めて税理士試験合格となります。 税法科目は全部で9科目の中から 3つ選ぶことになりますが、 所得税法か法人税法は いずれか1科目を必ず選択しなければならず、 他の2科目として「相続税法」と「消費税法」 を選ぶ受験生が多いです。 (税法の受験者数を見ると、 所得税法=約3000名 法人税法=7500〜800名 相続税法=4000〜4500名 消費税法=1万名強 その他の税法科目は1000人前後の受験者数) ちなみに、税理士になるには、 5科目合格だけでは足りず、 税理士会への登録が必要で、 その条件として2年以上の実務経験が必要です。 科目合格制のメリットとして、 一度合格すると、その科目は一生有効 であるので、 社会人(会計事務所勤務の方が多い)が 働きながら長期計画で5科目合格を目指す、 という対策が可能です。 もっとも、裏返しとして、 1つの科目に集中して「マニアック」に 勉強している受験生がいるため、 試験のレベルが高くなり、 合格率が低くなってしまう、 というデメリットがあります。 例えば、平成20年の税理士試験の 科目別合格率を見ると、 必須科目である簿記論は14.2%で、 財務諸表論は16.1%であるのに対し、 所得税法は12.8%、法人税法は11.0%です。 必須科目の場合、最初に目指すので、 長年受験している人が相対的に少ないので、 合格率が高めになっています。 それぞれの科目の合格率が10〜16%程度なので、 一度の試験で5科目全てを 一気に合格することはほぼ不可能です。 実際、標準的な勉強期間は4年以上と言われています。 さて、最近、問題となっているのは、 公認会計士試験の試験制度が 変更され、短答式に一度合格すると、 その年プラス2年間、短答式が免除され、 論文試験の対策だけに特化できる、 という二段階制となり、 しかも、論文式は科目合格が認められ、 短答式も今年からは年2回の実施となる、 というように、非常に受けやすい試験となり、 しかも、合格者数が増加しているために、 会計系の難関資格を目指す受験者が 税理士試験を避けて、 会計士を目指す傾向があることです。 ★会計士になると、自動的に 税理士試験合格の資格も認められ、 2年以上の実務経験があれば、 税理士登録ができる、という点も 受験生が会計士試験を目指す理由です。 この問題点に対する1つの解決策として、 税理士試験を、会計士試験に近い形へ 制度変更しよう、という話があります。 変更の概要は、一言で言えば、 公認会計士試験とほぼ同等とする ということです。 受験生が税理士試験を 敬遠する理由の1つに、 受験資格の制限があります。 これは税理士法5条で定められていますが、 要は、大学に通っていない人にとっては、 簿記1級を取得しない限り、 税理士試験を受験できないことを意味します。 しかし、昨今の会計士試験の状況を見ると、 簿記1級に合格できる実力があるなら、 会計士の短答式は十分に合格できるので、 普通に予備校等で受験相談をすれば、 会計士試験の受験を勧められるでしょう。 そこで、制度変更によって、 この5条を削除し、誰でも受験できるようにする、 という提言がされています。 会計士試験において、高校生の 短答式合格者が登場して 話題になったように、 大学入学前でも受験できることは、 「飛び級」制度がないわが国では、 それだけでアピールポイントとなります。 また、会計士と同じ2段階方式を採用して しかも、短答式試験は年2回実施、 というところも会計士と同じです。 基本的に、受けやすくする方向での変更ですが、 一点、注意が必要なのは、 一度、合格した科目の取扱いです。 先ほど紹介したように、 科目合格制には、メリット・デメリット 両方あるので、変更案では、 「科目合格は一生有効」を見直し、 科目合格の効力を一定年数に制限すべき、 とされています。 もちろん、この制度変更は、 仮に成立しても(当然、税理士法の改正 を伴うので、国会での審議・議決が必要です)、 現在の科目合格者への影響を緩和するため、 一定の経過措置が採られるでしょうし、 来年からすぐにこうなる、 というわけではありません。 しかし、標準的な勉強期間が4年以上、 ですので、今から税理士を目指す方には 知っておいて欲しい情報です。 kul*y*n0*25さんはすでに簿記論を合格され、 5科目合格への道を歩み始めているのですから、 試験制度変更はあまり気にせず、 合格に向かって邁進すべきです。 税理士の将来は決して暗くないです。 現在、政策の方向は「高福祉の実現」 に向かっています。 子ども手当て支給、母子加算の復活や、 後期高齢者医療制度の見直しなどは、 すべて社会保障費の増加を招きます。 法人税の税収が落ち込む一方、 個人からの徴収には限度があります。 消費税を上げるとしても、 10%程度が限界だと思われます。 短期的には、特別会計の埋蔵金 (主に、剰余金)を一般会計へ回す という手法を採ると思います。 そして、特別会計を精査すれば、 公益法人や独立行政法人(旧・特殊法人)への お金の動きをチェックすることになり、 必ずしも公益法人等で 運営する必要がない事業 が明らかになるはずです。 (いわゆる「事業仕分け」) 「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話 ではありますが、 埋蔵金の精査 →公益法人の解体 →民間事業者が運営を担う (公設民営も含む) →これらの事業者の法人税・事業税 の税務申告が増える というプロセスは十分に期待できます。 もちろん、年末調整を廃止して、
サラリーマン全員に確定申告を義務づければ、 税理士マーケットは広がりますが、 日本人の場合、計数能力が比較的高いですし、 電子申告も可能なので、 税理士に依頼せずに自分で 確定申告してしまう層が多いと思われるので、 公益法人が担っている事業の見直し が税収確保を図りつつ、経済を活性化でき、 かつ、税理士の業務も拡大する、 という三方よしの改革だと考えます。 |
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最近、IFAS(国際会計基準) の話題が雑誌等に出ることが 増えてきました。 日経ビジネスの8月31日号は、 特集でIFASを取り上げ、 早ければ2015年にも国内で強制適用となること、 モノサシが変わることで 企業行動にも変化が起き、 大企業だけでなく、下請けや取引先の 中小企業まで含めて、 その影響は広く及んでいく、 という論調の記事となっていました。 適用企業においては、 社内のプロジェクトチーム立ち上げ、 会計システムの変更なども必要となるので、 5年程度の準備期間は必要となり、 そうすると、来年(2010年)からは 準備に入ることになるので、 すでに直近の切迫した課題であると言えます。 さて、IFAS適用による 大きな変化の1つに、 「包括利益」概念の導入があります。 従来の財務諸表の考え方では、 会計年度(通常は4月から翌年3月まで) 内での売上から、それに見合う原価、 さらに、販売管理費 (営業マンの人件費や広告宣伝費用)、 本社経費などを差し引いて、 営業利益を出してきました。 これがフローの数字であり、 1年間でどれだけ儲かったか、を示すのが 損益計算書です。 いわゆる「収益−費用=利益」です。 これに対して、その企業が保有している 現金、土地・建物、商品在庫、 債権(売掛金や貸付金)、特許権 などの財産(資産)、 債務(買掛金・手形)、借金 や退職金の積立て等の負債、 そして、純資産(株主の出資金等)などの 財産状態を示すものが 貸借対照表であり、こちらはその企業が 蓄えてきた財産のストックを表すものです。 このフローとストックの違いは、 会計の分野に限らず、 数字を扱う際には必ず意識を しなければならないものです。 例えば、中国の軍事費が急激に伸びている、 という話がありますが、これは基本的に フローの単年度予算の話であり、 ストックとして中国の軍事力を見た場合、 武器が旧式であったり、 訓練が行き届いていなかったり、 あまり脅威を強調し過ぎるべきではない、 ということになります。 さて、IFASが適用されると、 このフローとストックが混じり合った ものとして、企業の利益を捉えることになります。 具体的には、 企業間の株式持ち合い等で 保有している有価証券についても、 投資用のものと同様に、 含み益・含み損を計上する必要があります。 また、外国に子会社を持っている場合に、 為替変動によって、その子会社に対する 持分を日本円に換算した場合に出る増減額も 包括利益算出の際に考慮されます。 以前に購入した株式(又は不動産)を 市場で売却せずに保有し続け、 簿価でP/L上に載せておき、 本業の儲け具合を見ながら 市場で売却して純利益を確保する、 という「含み益」経営は、IFAS導入後は 成り立たないことになります。 「収益−費用=利益」ではなく、
「期末純資産−期首純資産=包括利益」 によって企業を評価することになり、 従来はフローが主に注目されていたのが、 ストックにも同様に目配りをすることになり、 株式持合いや、財産(特に、不動産のように 価格変動が大きいもの)の管理、 海外の子会社との資本関係など、 様々な面で企業行動に影響が出るはずです。 |
