刑法の私文書偽造罪では、
文書の名義を偽った場合を広く処罰するのではなく、
権利、義務若しくは「事実証明に関する文書」に限って、
偽造を処罰しています。
一昨日(20日)、最高裁は、
家系図6通を作成し、約90万円もの報酬を得た行為が、
行政書士法21条の定める罪に当たるか否かが
問題となった事件について、
「鑑賞や記念品とする目的で使われる場合には
事実証明書類に当たらず、
行政書士の権限を侵害するものではない」
との判断を示し、1審・2審がともに有罪としていたのを
破棄し、無罪を言い渡しました。
改めて行政書士法を見てみると、
21条が、「19条1項の規定に違反した者」につき
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨
定めており、19条1項は
「行政書士又は行政書士法人でない者は、
業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。」
という独占業務を定めています。
この事件で問題となったのは、
1条の2第1項が「行政書士は、
他人の依頼を受け報酬を得て、
官公署に提出する書類(省略)
その他権利義務又は事実証明に関する書類
(実地調査に基づく図面類を含む。)
を作成することを業とする。」
と定める中での、
「事実証明に関する書類」の解釈です。
私文書偽造罪の場合、
「事実証明に関する文書」は、
何らかの事実を称する書面を全て含むのではなく、
処罰範囲を限定する観点から
社会生活上の重要な利害に関係のある
事実を証明しうる文書に限定すべき、と解されています。
典型例は、推薦状や履歴書ですが、
有名な論点として、
大学入試の替え玉受験が行なわれた場合に、
他人の名義を偽って答案を作成した行為が
私文書偽造罪となるか、という問題で、
答案用紙の「事実証明文書」該当性が論点となります。
この点、最高裁は、
答案用紙が採点された結果、
志願者の学力を示す資料となり、
これを基に合否判定、入学許可がなされるので、
志願者の学力という「社会生活上の重要な事項
(判例では「交渉を要する事項」)」
を証明する文書に当たる
との判断を示しました。
刑法と行政書士法は必ずしも同じ解釈を
採る必要はありませんが、
罰則規定ですので、
刑法と同様に制限的に解するべきであり、
観賞用の家系図が
「事実証明書類」に該当しない、との判断は
適切であった、と思います。
|