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昨日に引き続き、本の紹介です。
古代中国の、少しマイナーな人物を主人公とする
作品を多く書いてきた宮城谷氏(司馬遼太郎氏の弟子、
ともされます)が作家生活25周年を記念して
2年前から毎日新聞で連載されていた「劉邦」が
単行本三部作として出版されました。
ネット上の書評を読むと、
劉邦にだけフォーカスされている結果、
項羽、韓信といったライバル、
張良や簫何といった側近が完全な脇役で
あまり描かれていない、
という批判が見られます。
司馬作品の「項羽と劉邦」だと、
劉邦が天下を獲れたのは
項羽が厳しすぎ人望が無さ過ぎた、
という敵失による部分が大きく、
さらに、韓信が項羽側につかず、
張良や簫何が優秀であった、という2点が重要
という描かれ方です。
一種、バカ殿的な扱いです。
これに対し、宮城谷作品では、
劉邦は義を重んじ、戦乱の中でも優しさ・愛情をもって
行動した人物として、一貫性をもって描かれており、
誉め過ぎとも思えますが、
今の日本で、こういうリーダーがいたらな、
と思わせる効果もあり、私としては司馬作品よりも
こっちの劉邦の方が史実に近かったのではないか
と思ったりしました。 |
書評・雑学系
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ウォーラーステインが提唱した
「世界システム論」に関する予備知識を
要求する本ではありますが、
「長期の16世紀」(1500年から1600年代半ば)を、
従来とは異なる見方で捉えています。
従来の世界システム論では、
ヨーロッパで複数の王国が競い合い
大航海時代とともに、アメリカ大陸が植民地として
組み込まれていく(=環大西洋世界が作られていく)
15世紀から18世紀について、
「世界=経済」(資本主義)を発展させた西欧
(いち早く近代に突入)と
前近代的な帝国が残っていた「世界=帝国」
(外部世界であり、その後、西欧に包摂されていく)
とに分断して捉えられてきました。
この西欧中心主義に対して、日本の近代化は
例外事象として見られることが多く、
著者の山下範久氏(ウォーラーステインに直接、師事した)
はその点に疑問を感じ、本書を書いたそうです。
2003年に発刊されているので、
労働、土地、貨幣(金融)の商品化・グローバル化について
考察した終章は物足りない感じがしますが、
長期の16世紀に対する新しい捉え方は魅力的です。
曰く、西欧社会も含めて、
北ユーラシア(ロシア)、
西アジア(オスマン帝国)
南アジア(インド・ムガール帝国)
東アジア(明朝から清朝への交代、日本は戦国時代)
の5つの地域でそれぞれ「帝国」が勢力を伸ばした時代、
として捉え直しています。
そして、長期の16世紀の前半と後半では
地域をまたぐ交通に関して
前半:リスク受容=新航路の開拓、地域をまたぐ交易
に対して、
後半:リスク回避=国家管理、地域内完結の交易
という変化が起きた、として整理します。
前半期、ロシアでは雷帝と呼ばれた
イヴァン四世(1584年まで在位)が、
オスマン朝ではスレイマン大帝(1566年まで在位)が、
インドではアクバル大帝(1605年まで在位)が、
それぞれ中央集権的な帝国の礎を築いています。
この時期、西欧は中東と、中東はインドと、
インドは東南アジアが、東南アジアは中国が、
それぞれ繋がり、 域際的(地域をまたぐ)流通網が
完成しています。
中国・東南アジアからは絹や香料に代表される
「東方」の物産が流れ、
西欧(産出はアメリカ大陸)からは貨幣として
銀が流れ、中国は貿易黒字大国となっていました。
しかし、後半期=16世紀の半ば以降、
域際的交通は国家管理の下に置かれ、
域内の流通網とは切り離されて(不可視化)、
地域で閉じた秩序が現れてきます。
日本では、「鎖国」政策が典型であり、
長崎を唯一の貿易港とすることで、
オランダとの貿易は、域内の朝貢貿易(対中国・対朝鮮)
とは切り離されて管理されます。
流通網が域際から域内完結へ、
という世界的文脈で見ると、
織田・豊臣政権から徳川政権へ、
という国内の変化も必然であるかのように見えてきます。
また、近世と近代の違いとして、
近世「帝国」においては、中心と周辺という
空間的文脈が国・地域の発展度合いを決めていたのに対し、
近代の資本主義的「競争」においては、
時間的文脈が先進国と発展途上国を分ける、
と説明します。
イギリスで産業革命が起こった結果
技術・機械が導入されていく過程と
国家の発展過程が対応することになり、
後進国は、時間的に劣後している結果
西欧に追いついていないのであって、
技術や市場システムをうまく導入できれば
地理的条件に関係なく「世界=経済」の中で
中心的地位を占めることができるようになったのが
近代である、という捉え方です。
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昨日の記事では、50代男性の資産運用・
将来設計に関する意識調査を紹介しました。
若干、マイナーな調査だったので、
今日はメジャーな方を紹介します。
国立社会保障・人口問題研究所
という、ここ10年くらい、少子化・高齢化問題で
一躍、注目を集めるようになった機関です。
この機関のHPで、人口動態が
1920年から2010年までの90年間で
いかに逆ピラミッド型になったか、を
視覚的に見せてくれています(リンク先はこちら)。
この逆ピラミッドが、さらに2060年まで進むと
70歳以上の高齢者1人を支える現役世代(20代〜50代)
がほぼ1人になってしまう「肩車」状況が発生します。
さて、2012年に行われた「生活と支え合いに関する調査」
を紹介します。
概要だけでも56ページもありますが、
家族の助け合い、生活費用の担い手、
人と人とのつながり、生活に困難を抱える世帯の状況、
過去1年間の医療機関および健康診断の未受診、
暮らし向きと生活の変化、
東日本大震災の影響、の7項目からなっており、
興味深いデータが並んでいます。
「人と人とのつながり」では、
会話(あいさつ程度も含む)の頻度が調査されており、
高齢者(65歳以上)の単身世帯において
「会話頻度が2週間に1回以下」という孤独状態の
割合が、女性では3.9%に対し、男性では16.7%となり、
6人に1人は、ほとんど誰とも話さない生活を暮している
状況が示されています。
ちなみに、夫婦世帯の場合、男性は4.1%、
女性は1.6%となります。
あいさつ程度でも「会話」としてカウントしているので、
夫婦で暮らしていても、4%はほとんど会話が無い、
という状況はちょっと悲しいですが、
まずは、単身世帯における男性高齢者の孤独感が
解決しなければ問題です。
民間ベースでは、高齢者向けの結婚相談サービスが
盛んになっていますが、
資産が少ないと結婚が難しく、
逆に、資産が多すぎると息子・娘が再婚に反対する、
という状況があるようです。
多くの自治体では、弁当宅配サービスが行われていますが、
自宅へ届けるのではなく、
高齢者向けの食堂を作るべき、という意見もあります。
また、健康増進プログラムや趣味の会には
参加しない(地域社会への馴染みがない)
高齢者が来やすい「仕事」の場を作ることも大事、とされます。
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芥川賞受賞作としては初となる、
単行本が200万部突破。
また、もう1作品も含めた
芥川賞受賞作が掲載された月刊誌「文藝春秋」も
100万部を突破。
さらに、電子版のダウンロードも10万部突破
といくつもの記録を塗り替えています。
私は純文学はほとんど読まないのですが、
「文藝春秋」を定期購読していたので、週末、
読んでみました。
短い作品(選評の中で、村上龍氏は
「長すぎる」としていましたが、小ネタを盛り込み過ぎ、
という点では確かに長く感じますが、
純文学風の部分だけを読んでいく、
と心掛ければ、かなり早く読み終えます)なので、
2時間ほどで読了しました。
LECの朝礼でも少し感想を述べましたが、
冒頭、花火大会が始まるまでの前座として
漫才を披露するはずが、
スケジュールがずれ込んで、花火の轟音が
している中、誰の耳にも届かず、
誰からも見てもらえない舞台で
ネタを披露しなければならなくなる、という話から
始まります。
教育コンテンツに関わっている私のような読み手からすると、
受け手が存在しないものを「コンテンツ」と呼べるのか、
という古くからの問題を改めて考えさせられる導入部でした。
人文系のコンテンツ作りに向けた狂気・情熱が伝わる、
というのが私の感想で、
作中に含まれる、語感でくすっとさせる小ネタも含めて
<予定調和を崩す天才肌と、地道な論理派の掛け合い>
という読み方は可能だと感じました。
ラストシーンが無茶苦茶、という意見をよく聞きますが、
かつての恋人が結婚して子供を育てて、
というシーンが途中に挟まっていること
(これを見ているのは神谷ではなく、
語り手の徳永ですが)を踏まえると、
そういう幸せな家庭で夫・父親になる、
という状況の対極に追い込もうとしたのかな、と
感じたりしました。
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今日、8月6日は、広島に原爆が投下されてから70年。
そんな中、AKBの島崎遥香さんがツイッターで
8月6日は「ぱるるの日」、と投稿して炎上した、
というニュースがありました。
ちゃんと歴史を勉強しろ、という批判も多く、
そんな中、たまたま、学習指導要領の改定の報道もあり、
次期指導要領から、近現代史を必修科目とするそうです。
とはいえ、近代(明治維新以降)からスタートしてしまうと
結局、大正デモクラシー位で終わってしまうので、
もっと直接的に、昭和史を必修化する、として欲しいです。
今日から、日経新聞1面において
「戦後70年 これからの世界」という連載が始まりました。
第1回は「人間の安全保障」や
capability approach(潜在能力アプローチ)などを
提唱し、ノーべル経済学賞を受賞したアルティマ・セン氏
によるインタビューでした。
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