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最初に筆者自身も書いているように、本書に登場する多数の人々は、偉人や賢人ばかりでなく、失敗した人も、無名の人もすべて、筆者自身が気になったひとはすべて収録した、という怪書です。できれば、合わせて「アラマタ大辞典」と一緒に読むと、モット面白いです。
このなかで、惹かれた人物がいます。葦原金次郎というひとです。明治後半から昭和10年代の長きに渡って大衆に人気があった統合失調症患者で、自称天皇だったそうです。このひととよく似たひとで、アメリカにジョシュア・ノートンという人があります。100年ほど前にサンフランシスコに実在した自称「アメリカ皇帝」だそうです。
詳しい経歴などは適当に調べてください。
二人は似ています。かたや「自称天皇」、かたや「アメリカ皇帝」です。しかし、いたって人畜無害な、イノセントなひとたちでありました。そして、死ぬときにはほとんど財産を持っていなかったことも共通しています。町の人すべてが知っていて、それでいて、誰一人彼らを悪くいう人はいないというのは、ある意味ですごいことです。
むかし、河原町にいた伝説のホームレス、ジュリーのようです。
皇帝ノートンが亡くなったとき、彼の持ち物は5ドルちょいの現金。サンフランシスコ、コマーシャル・ストリートの彼の下宿の部屋には、2ドル50セントの現金、散歩用ステッキのコレクション、なぜかヴィクトリア女王と交わした書簡、1,098,235株の無価値な金山の株だけが残されていたそうです。
しかし、彼の残した遺産は、モットすごいものでした。当時、世間の人はまったく取り合わなかったのですが、生前にかれはこんな「勅命」を出しています。
「朕が命じたことについて、サンフランシスコの市民はオークランドの架橋計画および隧道建設計画検討の資金を準備し、どちらの計画がより優れたるかを決定すべし。当市の市民は当命令を無視しており、朕は我が権威を顕示せんがため、かくのごとく命令する。彼らがなおも朕に逆らう場合、陸軍は両議会議員を逮捕すべし。御名御璽 1872年9月17日 サンフランシスコ」
なんと、この勅命は実行に移されるのです。もちろん、彼の勅命がそうさせたのではなく、社会がそれを求めたからですが。そう、この勅命はのちに、ゴールデンゲートブリッジとならんで、サンフランシスコの象徴にもなる、あのベイブリッジとなって実現します。
現在、世間には「自称救世主」や「自称カミサマ」見たいな人がたくさんいます。「世直し」ができると豪語する傲慢なひともいます。全部うそ臭い。本当に世のため人のためと考えるなら、移動に新幹線のグリーン車をつかったり、運転手付でレクサスを乗り回したり、豪華ディナーを毎晩堪能できたりするのはなぜでしょうか。彼らを崇拝する人たちも、なんでその矛盾を突っ込まないのか。
そして、ノートン皇帝や芦原天皇のような遺産を彼らは残すことができるのか、僕には甚だ疑問です。
最近よく思います、本当に狂っているのは誰か?本当に狂っている事とはなにか?もしも、この世界が全部狂っているとしたら、狂っているような言動を取るひとが、実は真理をぼくらに示しているのではないか・・・。さて、新しく総理大臣になられる方の奥様は、UFOに乗って金星に行かれたことがあるそうです。ぼくは彼女が葦原天皇のような、愛される「狂人」になってほしいと思います。
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