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嫁さんの実家にはみかんの木があり、
どこからともなく金木犀の香りが漂ってくる。
それと混じって、とても穏やかな香りがする。
嫁さんが子供の頃からそのままの部屋。
湿っぽい空気といっぱいの本、学習机。
ここには俺の知らない頃の嫁さんのにおいと面影がある。
どこか遠くへ行った、嫁さんの幼馴染の家には、
年老いた両親と犬がすんでいる。
「ああ、お久しぶり」そんな会話が聞こえる。
そして、嫁もそこでは、
みんなからは10代の印象しかもたれていない。
高校を出て、すぐに家を出ていたから。
本棚には、嫁さんが4年生の頃の写真がある。
きっと、お義父さんにとっては、
この頃が一番かわいかったのだろう。
そこは時間が止まっている。
将来のため、未来のためと、
がんばっていた時代そのまんまで、
時間が止まっている。
僕の家からたった10分ぐらいのところにある、
僕の生家があったところ。
あれほど立ち退きを迫られて、こっちも死ぬほど抵抗して、
いろいろな犠牲を払ったのに、
できたのは5台分のコインパーキングだった。
観光客向けに、たった5台分の駐車場を作ること、
そのために、僕らを追っ払おうとしてたとは思えない。
彼らは何のために、毎週僕にいじめられ、
ののしられ続けていたのだろう。
痛めたひざを引きづりながら、家族サービスを犠牲にして、
必死になってやっていたのは何でだろう。
挙句に果てに僕に大金を巻き上げられたのはなんでだろう。
むなしい気持ちと、たった5台分の駐車場。
そこまでやって残ったのは、
たったそれだけなのに。
もう、
誰かが勝手に区画をして、
誰かが勝手に理屈をつけた
そんなパラダイスとは、いいかげんおさらばしよう。
青臭い正義感や使命感はもう終わりにしよう。
夢は見るものでなく叶ったものなのだとしたら、
やることをきちんとやろう。
これまでのように、いままでのように、
仕事して、飯を食って、寝て。
いつもと変わらない営みを大事にしよう。
その誰もが普通にやっている脈々とした流れを
大切に思えるようになろう。
毎朝、仕事場から嫁を送り出す。
夕方、無事に帰ってくる顔を見る。
もう、それだけで十分じゃないか。
執着することはもうないのだから。
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あと1000人ほどです。
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