|
日本には大阪の東洋陶磁美術館にある、重文の通称木の葉天目(玳皮天目茶碗)をはじめ、
幾つかの木の葉天目の良品があります。木の葉天目は中国宋代の吉州窯で生産されたもので
すが、本家の中国には良品は残っていないようです。
この木の葉天目の技法については定説がない、と本には載っています。しかし、日本の陶
芸家で木の葉天目を手がけている人は、恐らく百人は下らないでしょう。
日本で最初に木の葉天目を焼成したとされているのは、人間国宝になった石黒宗麿氏です。
その後、電気窯の普及によって木の葉天目を作り易い環境が整った結果、次々に木の葉天目
を製作する陶芸家が出ています。
陶芸家にとって、木の葉天目というものは、作ってみたくなる衝動をおぼえるもののよう
です。現在では相当数の木の葉天目が作られ、販売されています。それでいて、木の葉天目
の技法について定説がないというのも、おかしな話です。
これは私の推測ですが、現在作られている木の葉天目の内には、二度焼きの手法や上絵の
技法を応用したものが一部にあり、又、陶芸家は皆、技法を秘密にするために公刊本に反映
されにくいのかも知れません。
それと同時に、本の解説を書いている方は大抵の場合、陶芸の技術には関心が薄い人が多
いからかも知れません。もちろん、800年も前の事ですから、完璧に実証する事は不可能
です。それでも現在では定説をたてるだけの材料はそろっている様には思います。
木の葉天目の技法自体は、さほど複雑なものではありません。ただ、葉脈や虫食いの跡ま
で残って、葉の緑色まで出て、釉調もよく、美的なものを作るとなると、極めて困難になり
ます。何しろ、そうした条件を満たしている木の葉天目は、日本にある伝世の数点だけと言
っても良いのですから。
一番上の写真は、重文の木の葉天目の部分写真です。上から二番目の写真は、私が十数年
前に試作した木の葉天目の部分写真です。これは石灰釉で酸化金属類も使用したものです。
葉脈までリアルに出て、緑色もかすかに感じられますが、釉調が気に入りません。一番下の
写真は数年前に試作した灰釉での木の葉天目の部分写真です。これは葉脈が出ていません。
灰釉だと石灰釉に比べて木の葉天目の焼成は格段にむずかしくなります。
どちらも、自然の木の葉を釉掛け後に載せて、そのまま窯詰めして焼成したものです。
焼成すると、葉は縮むので、予定の大きさよりも三割ほど大きい葉を使用します。本にはよ
く<自然の木の葉を貼付けて>焼成したように書かれていますが、縮む事の出来る状態であ
る必要があるので、<自然の木の葉を載せて>焼成したと記載した方が真実に近いように思
います。
恐らく当分の間は、<木の葉天目の技法については定説はない>と書かれ続けるのでしょ
うから、私も他の多くの陶芸家諸氏と同様に秘密にしておく事にします。
(注)重文の木の葉天目の写真は『中国の陶磁6天目』平凡社刊より引用させていただきました。
◎他の木の葉天目の参考書籍
『東洋陶磁の展開』大阪市立東洋陶磁美術館刊
『陶磁大系38天目』平凡社刊
『中国陶磁全集15吉州窯』美乃美刊
『世界陶磁全集12宋』小学館刊
『日本の名陶十撰』毎日新聞社刊
|
東洋陶磁美術館は、僕の住む街、大阪に在るので、出来た頃は良く行きました。凄く、落ち着く美術館なんですよね。木の葉天目も覚えてますし、油滴天目も素晴らしかった…個人的には、ちょっと華美かなぁって気もしたんですが。ところで、木の葉天目に使われる葉っぱには、何が一番適しているんでしょうか?もちろん、葉の硬さと葉脈の太さとか、あると思うのですが、日本人の陶芸に対する美意識的なところでは、どういう葉っぱが美しいとされているんでしょうか?
2005/10/9(日) 午前 7:20
東洋陶磁美術館は豪華な建物ですね。あそこには朝鮮陶磁の優品が沢山ありますが、遠くて残念です。日本の木の葉天目では一番よく使用されている葉は椋(むく)の木の葉です。一枚葉の方が日本人好みでしょうか。吉州窯では三枚に分かれた葉も使用しています。『桐一葉』とか『樋口一葉』とか、一枚葉が日本人の美意識には合致しているようです。
2005/10/9(日) 午後 10:40
ぜひ、東洋陶磁美術館へ再訪の際は、御一報くださいね。酒の美味しい店にご案内させて頂きますから(笑)文学も陶芸も、芸術と言うか、日本人の美意識に叶っているんですね。勉強になりました。
2005/10/10(月) 午前 6:25
有難うございます。こちらこそミサオさんの文章で勉強させてもらってます。高校の頃は文学にも興味があって、文学部も受験しましたが、たまたま合格したのが経済学部だったので、思考様式が文学部的でなくなりましたが、基本的には文学は好きです。長い文章もちゃんと読ませていただいています。(笑)
2005/10/10(月) 午後 11:23
懐かしいです〜。東洋陶磁美術館行きました。 大阪に居た頃は未だ陶芸を習ってなかったんですが、何故か行ってます。興味があったんですネ、私。
2005/10/11(火) 午前 8:19
好き嫌いは先天的な所がありますからね。猫好きも焼き物好きも、生まれつきかも知れませんよ。私の場合、少なくとも猫好きは先天的なものだと断言できます。
2005/10/11(火) 午後 11:21