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霊峰富士山も平面的に見れば二等辺三角形に近い姿をしています。安定感を感じる形ですが、逆さに見れば不安定です。『なにも逆さに見なくてもいいじゃないか』と思う素直な人も居られるでしょうが、斜めの性格の人間も多いのです。
陶芸の世界には三角座標というのが有ります。石灰ー長石ー珪石の三要素の組み合わせによって釉薬の成り立ちを説明する方法ですが、これも見方によって変わってきます。
料理番組でも材料の種類と量を示して、作り方の手順を教えていますが、誰も同じように作れば一流シェフの料理と同じになるなどとは思わないでしょう。料理は毎日食べているものですから日常の世界のものです。これに対して陶芸は当初は非日常の世界です。そのために、三角座標による説明も『例えばの話・・・』という前提が意識の中に入りずらいような気がします。
薬に万能薬が無いように、釉薬にも万能の原材料など無いのですが、三角座標の説明から釉薬の成り立ちを理解すると、石灰、長石、珪石の三種類の原料ばかりが使用されがちになります。どうも世の中には素直な人が多いようです。
私も根は素直なので当初は前出の三原料を多用していました。本に例示されている伝統釉の調合例にも長石や珪石が使用されている場合がほとんどなのですから当然です。
しかし、今から考えると随分と時間を浪費したような気がします。長石にしても珪石にしても岩石に含まれる要素を抽出したもので、大抵の岩石には含まれています。工業製品の生産には便利ですが、昔は陶石の中で耐火度の低いもの、つまりは長石質成分の多いものを釉石として使用していた所も多かったのです。粘土が存在していても現在市販されているような長石や珪石が採取出来る所は少ないからです。
三種類の原料の割合を変えてサンプルを作り、三角形に並べると、いかにも科学的に見えるのですが、坏土の種類と焼成方法、焼成温度によって異なってしまうのですから、その組み合わせは莫大な数になってしまいます。
私は基本的に釉石(陶石など)と釉灰との二元合わせで調合していますので、組み合わせの数を減少させる事が出来ます。緑釉には酸化銅を使っていますが、炭酸バリウム、酸化錫、亜鉛華などは使用しない事にしています。調合の原材料の数が増えると失敗した時に原因を掴めないからです。
三角関係は疲れるだけですから、やはり一対一の関係がうまくいくような気がします。
(注)この記事は『焼き物雑記の昼寝部屋』でアップしたものです。
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