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相続の時、相続人である遺族が翻弄され判断を間違える一番の原因は、故人の遺志である。遺言状や、生前伴侶や子供達に伝えていた故人の遺志に呪縛され、翻弄されて、正しい判断ができず、挙句の果て、家族内で不協和音が生じてしまう。相続時から相続後にかけて、よくある出来事である。家族の中で、遺族である家族の思いを優先し大事にしようという意見の派閥と、いや、故人の遺志を尊重しようという意見の派閥が、必ず生まれる。そして、両者間での意見の相違は、単なる不協和音から、絶体絶命の関係へと発展してしまうことが多い。
しかし、ここで、覚えておかないといけないことがある。それは、故人の遺志を尊重し、大切にする気持は、素晴らしいことであり大切なことである。だが、故人は、生き返って遺族を援けてはくれないのだ。生き残った遺族が、どんなに苦しい思いをしても、どんなにいがみ合っても、仲裁にも援助のためにも生き返ることはできないということだ。そして、故人は、自分の死後、家族間がどのような状態になるかもわからないのである。あくまで、自分の理想、希望として、遺志を遺族に伝え残すだけのことである。物事というのは、状況、環境によって、対処の仕方も変わって当たり前である。にも関わらず、そのような状況や環境の変化を知ることもできない故人の遺志に呪縛され、翻弄されていては、解決策もみつからない。それどころか、家族間の不協和音はどんどん広がり、修復不可能な状況に陥ってしまう可能性も非常に高い。
故人の遺志を大切にすることは、遺族として大切な気持ではあるが、やはりこの世に生き残っている生身の人間の思いや状況を最優先に考慮して判断することが、家族の不協和音を軽減し、解決する唯一の方法である。家族が、生き残ることが叶わなければ、故人の遺志を守ることさえ叶わない。まずは、この世に生身で生きている遺族の意思を最優先で尊重し、その上で、出来る限りの範囲内で臨機応変に故人の遺志を尊重し、円満な解決策を模索することが、故人も望むところであるに違いない。このことは、案外皆故人の遺志に翻弄され、気付かぬ忘れてはならない大切なポイントである。お忘れなく。
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