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人間のからだには、「免疫」という働きがある。 からだの中で、異物とされるもの ― 病原体やがん細胞など ― を見つけ出し、殺滅することで 生物体を、病気から保護する機構のことである。 今、ゲノム解析 (遺伝子の読み解き) が進み、この免疫機構についても、解明が進んできている。 日本の免疫学者に、多田富雄氏という人がいる。 ユング派の心理学者として名高い 河合隼雄氏と対談したことが、以前あった。 その対談で、「自己」 の受取りについての、免疫学と心理学での違いについて、 こんなふうに示されていた。 河合: 心理学のほうでも 自己ということが問題になるわけですが、そのときに普通一般に考えられている よりは、自己というものを相当広くかんがえざるを得ない。 文科系の人だったら だいたい みんな自己というか 自分のことを考えているわけですね。 われわれが一番衝撃的に感じるのは、自己というのは脳で判定しているのではないというところです。 それでまずギョッとするんじゃないかと思いますね。 多田: 身体的な自己というものがあって、それは免疫のほうではもう、ここ数十年来、問題になっているわけです。 もともと、免疫というのは自己を守るシステムであるという、そういう規定ですから、非常に堅固で、遺伝的 に決定されている自己というものがあると考えていたのですね。 ところが免疫の気功がだんだん解明されてきますと、どこまでが自己でどこまでが非自己なのかわからなく なってしまう。 だから 非自己は自己の延長線上にあって、自己もまた非自己と取り替えが可能という、そういうことになって きますね。 多田: (人間の体の構成成分などを考えますと) 人間というのは 99.99%以上同じ物質で出来ているわけですね。 0.01%以下のものが違うだけなんですけど、そればっかりの違いに対して あれほど不寛容であるという。 多田: その0.01%以下の違いというのが、非常に少ない数の分子に集まっているわけですね。 それがHLA抗原と呼ばれているもので、HLA抗原の微細な違いで、自己と非自己を識別しているというのが 従来の考え方なんですね。今はそれだけじゃすまなくなってきたんですけど。 河合: (0.01%の違いは視覚的に見分けられないが、免疫はその識別力をもっている。にもかかわらず) そのシステムが堅固なシステムでないというのは、本当に不思議なことですね。 多田: ええ。通常は、少々の違いぐらいは受け入れながら、共存関係をつくるというのが、どうも もともとの免疫の目的だったらしいんですね。 ですけど ある特別な条件下、たとえば臓器移植みたいな状態ですけれども、その場合には 非常に鋭敏に、しかも不寛容に排除してしまう、そういうことになるんです。 河合: たとえば思想的に異質なものが入ってくる場合、自分の考えと全然違う考えを聞いた時に、 われわれはそれを受け入れて変わる時と、排除する時がありますよね。 私の持っている思想体系が非常に堅固に反応を示して、ものすごく いやがる時と、けっこう ほいほい入れる時がとあるわけでしょう。 そんなとこの感じもよく似ていますね。 多田: だからまるっきり違うものに関しては むしろ寛容になって、ここだけは受け入れられない というところ に対しては とでも不寛容になるのですね。 河合: その、ここだけは というとこが面白いですね。 これに続いて、話題は、「自己」と「非自己」を識別するのが 『胸腺』であり、免疫機構が胸腺を中心に 関連づけられることへと進む。 とてもおもしろい対談である。 これは、本になっている。 ●河合隼雄 「河合隼雄対談集 こころの声を聴く」 7 ×多田富雄 新潮社 ●多田富雄 「免疫の意味論」 青土社 2010/06/16
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