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「東北地方太平洋沖地震による福島第一原発事故」は現在、日本中(世界中)の関心を集めています。
大学は商学部出身ですが、所属ゼミの担当教授の専門が「経済学」「環境学」だったので卒業論文のテーマは“チェルノブイリ原発事故における経済および環境への複合的影響”という題名で執筆。
もともとが理系ではありませんので「科学(化学)」「物理学」の専門的知識はありませんが、少しばかり持論を展開してみたいと考えました。
まず私たちに非常に大事なことは“デマに惑わされない”という事だと思います。
問題になった「コスモ石油・千葉製油所火災のチェーンメール」ですが、私の携帯電話にも「!有害物質!」というタイトルの全く同じ文面のメールが友人5人から送られてきました。
もちろん、私は一切の転送をしていません。
あくまで火災事故が起きたのは「製油所」であって「化学工場」ではないんです。
燃えた物質もプラントを考えると“液化天然ガス”や“原油”の類ですから「大量の有害物質が降ってくる」なんて有り得ません。
これは福島第一原発事故においても同様で「チェルノブイリ級の事故に発展する」「福島県の広範囲(福島第一原発から半径100キロ以内)が不毛の地になる」「チェルノブイリのように今後癌や白血病を患う人が劇的に増える」など単純に不安を煽るだけの根拠のない文面(一部のブログやメールなど)が出回っています。
↑の3つを客観的に見つめてみましょう。
まず「チェルノブイリ級の事故に発展する」ですが、これは答えは“NO”です。
もともと双方の炉の「減速材(発電時において核分裂後に放出される中性子の速度を下げる役割を果たすもの)」が違うのですから構造自体も異なります。
チェルノブイリ原発は減速材に黒鉛を用いた「黒鉛炉」なのに対して、福島第一原発は減速材に軽水を用いた「軽水炉」。
設計上も黒鉛炉の方がプラントも大きく、軽水炉と比べても蓄積されている放射性物質の量が必然的に違います。
(当然、規模の大きい黒鉛炉の方が多く蓄積されています)
それに加えてチェルノブイリ原発事故の根本原因は運転中に安全装置をバイパスした不適切な動作実験を行い、その実験を無理に強行した為に炉が暴走して炉心溶融後に爆発、炎上した事故。
対照的に福島第一原発事故は地震によって炉が緊急停止し、津波で炉の冷却機能を賄う非常電源系統を失ったことが招いた事故です。
地震後すぐに炉の働き自体は止まっているので、今後も大規模な爆発事象は起こらないでしょう。
次に「福島県の広範囲(福島第一原発から半径100キロ)が不毛の地になる」という話も完全なデマ。
1986年の事故当時、チェルノブイリ原発周辺の森林は大量の放射性物質の下降で木や植物の一部が枯死しました。
ただし皮肉にも発電所周囲30キロから人間の姿が消えたことで、今では鹿や猪をはじめとした希少な動植物が生息数を伸ばしています。
また通称・石棺(事故を起こした4号炉をコンクリートの建造物で覆ったもの)にもコンクリートの隙間から小鳥が出入りし、原子炉建屋内部に巣を作っていると思われます。
動植物は種類によって放射能耐性が大きく異なるので、残留放射能の影響を考えても“不毛の地”になるということは考えにくいのです。
最後に「チェルノブイリのように今後癌や白血病を患う人が劇的に増える」という話も過大評価のし過ぎです。
確かに“現地では事故直後から小児甲状腺癌や白血病患者が急増した”という報告もありますが、放射線蓄積による癌や白血病の発症には数年〜数十年の潜伏期間があります。
症例は事故直後から挙がって来ているので潜伏期間を考えれば現地での癌、白血病発症増加の起因全てが「原発事故によるもの」とは言えません。
あっ、報道などでも一部で取り上げた「ヨウ素剤を飲むと甲状腺癌に効果が…」というのも“子供に限った話”ですからね。
幼児期は甲状腺の働きが活発なので放射性ヨウ素を甲状腺に溜め込んでしまうリスクがあるのです。
(これが↑の小児甲状腺癌の増加との因果関係みたいですが)
20代以降になると甲状腺に身体外からのヨウ素を溜め込む働きが弱くなり、40代以降にもなると働き自体がほぼ止まります。
従って「40代以上の方はヨウ素剤を服用しても何の効果もない」ということになります。
ちなみにチェルノブイリの立ち入り禁止区域(原発から数キロ圏内)には、今も不法に住み着いている方が多数います。
「生まれ育った土地を離れたくない」と移住を拒んだ人々のことです。
チェルノブイリ原発事故では今回の福島第一原発事故よりも比べ物にならない放射性物質が周辺に飛散しましたが、彼らは特に大きく健康を害している様子はありません。
それに今回の福島第一原発事故で健康に影響が出かねない線量の放射線を浴びているのは、原発に留まって事故処理の作業を続けて下さっている方々のみ。
(今も発電所内では満足に食事も取れていない様なので、この方達の健康面は本当に心配ですが…)
元からして事故の規模が違うのですから「劇的に増える」という表現は不適切ですね。
ここまでの記述で「原発肯定派」と思われてしまうかもしれませんが、今回の事故は“決してあってはならない事故”だったという事実に変わりはありません。
事故原因も実に不可解。
「地震で炉が緊急停止した」→ここまでは当然の緊急時のマニュアル通りでしょう。
「その後の津波で非常電源が機能しなくなり炉が冷却できなくなった」→はっきり言えば“非常時に使い物にならないのなら何のための非常電源なんだ?”という話です。
「高さ10mを超える想定外の規模の津波が…」→国の原子力安全保安院や東京電力はこんなことを言っていますが、そもそも原子力の運営において“想定外の事態”なんて決してあってはならないのです。
事故後の結果論ではありますが「たとえ高さ30m、40mの津波であっても」想定すべきだったはず。
“非常電源が機能しない”という事実が分かると、東京電力は11日夜になって東京から「電源車」という電源供給の車両を派遣しました。
ここまで来ると「何で発電所近隣の安全な場所に電源車を置いていなかったのか?」と↑の情報を知った殆どの方がそう考えると思います。
このような事態を避けるために「五重」でも「六重」でもバックアップ体制を取る必要があったんですけどね。
ちなみに自衛隊や政令指定消防が懸命に行っている「炉への海水放水(注入)作業」も最初は原子力安全保安院、東京電力ともに躊躇しました。
理由は「そんなことをしたら廃炉にせざるを得なくなる」と考えたからです。
確かに建設、運営で今までに何百億、何千億というお金が掛かりましたが、アンタらは「国の英知の結集」と言えるほどのエリート集団でしょうよ。
今となっては↑の海水注入に加えて水蒸気爆発などで色々なプラント設備が吹き飛んでしまったので、今後福島第一原発の1号機〜4号機が廃炉となるのは間違いありません。
↑を上手く対応できていれば少なくても福島や茨城、栃木の農作物への風評被害なんて起きなかったでしょうね。
さぁ、そろそろ私の持論もそろそろ佳境へ移ります。
福島第一原発敷地内の土壌から放射性物質の中でも特に毒性が高い“プルトニウム”が検出されたということは、今後の周辺環境の浄化に数十年〜百年単位もの時間が掛かります。
微量ではあるものの「プルトニウム(高温状態でしか生成されない)放出=燃料棒(原子炉本体)の損傷」という事実から炉の解体を含めた復旧には莫大な費用も必要としますね。
今回の事故の“国際原子力事象評価尺度”も現状では原子力安全保安院は「評価尺度:5(事業所外へリスクを伴う事故)」という認識のようですが「評価尺度:6(大事故)」へ移行しつつあります。
(ちなみにチェルノブイリ原発事故は想定される最大尺度の「評価尺度:7(深刻な事故)」という位置付け)
関東圏の生活に影響大ありの“計画停電”も長ければ「来年いっぱい」ぐらいまで続くかもしれません…。
ただし、今の私たちの生活から“原子力発電”を切り離すことは容易ではありません。
「火力発電所を増やせば良い」
今の中東情勢を考えてみて下さい。
日本は産油国ではないのですよ?
ちなみに火力発電の原料となる原油も“30年後には枯渇する”と言われています。
「水力発電所を増やせば良い」
大量の水を必要とします。
作れる場所も限られます。
またダムを作るのですか?
「風力発電、太陽光発電などエコ発電を普及させれば良い」
皆が個人で設備投資できますか?
太陽光発電のコストを知っていますか?
電気料金が何倍に跳ね上がっても文句を言いませんか?
「原子力発電なんて要らない!」と本気で言えるのは“今の生活水準を完全に捨てられる”という人だけです。
北朝鮮みたいに「予告なしの大規模停電」が頻発しても文句を言いませんか?
暑くても冷房、寒くても暖房なんて使えなくなりますよ?
テレビも「限られた時間」しか見られなくなりますよ?
夜中にお腹が減ってもコンビニもファミレスも空いていませんよ?
ゲームセンターやカラオケ、ボーリング場のような娯楽施設も大方は街から姿を消しますよ?
電車も運行本数が減る上に冷房の付かない真夏の満員電車に耐えられますか?
今後に新たな「安価で大量生産可能な代替エネルギー」でも開発されれば話は別ですが、今の時点で一切の原子力を排除すれば間違いなく日本(世界)経済は急激に衰退します。
「環境先進国」と言われるフランスでさえ国内消費電力の80%以上を原子力に頼っているのですから。
外国の話で思い出しましたけど、ロシア政府は「日本政府は原発の情報を隠匿している」「日本からの全輸入品は放射線検査をクリアしたものを」なんて注文付けてくれていますが、あなた方は旧ソ連時代に廃炉になった原子炉を日本海の海上に何機も投棄しているのですよ?
チェルノブイリ原発事故ですら最初は内密に処理しようとしていた国がそんなことを言える立場ですかね??
そういった背景を考えずに単純に“原子力は危ない”という表現だけをするのであれば、自動車やオートバイだって“日本だけで年間1万人が交通事故死するのだから危ない”という理論と何ら変わりないと思います。
ただ「起きてはならない事故」が起きてしまった以上、今後は国民全体で今後の原子力政策について議論しなければなりません。
今まで私たちは利便性だけ追って全然考えていませんでしたから。
風評被害の大きい福島県の方々には「お見舞い」という言葉では片付けられない負担を背負わせてしまいました。
原子力安全保安院や東京電力の会見は専門用語を連発し、何か国民を“煙に巻いている”ような気がしてなりません。
(放射能の測定単位もシーベルト、ベクレル、キュリー、グレイなど数が多すぎて何がなんだか訳が分かりませんし)
国民もバカではないので会見も少しは分かり易く(節電に関しても「こうすると家庭電力を抑えられますよ」みたいなワンポイント助言が欲しいですね)して頂きたいかなと。
今は福島第一原発で復旧作業に従事している方々の無事を祈り、今回の事故の被害がこれ以上大きくならないよう願うばかりです。
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