ここから本文です

書庫全体表示

星を追うもの 25

25

「……ここは?」
寝ぼけ眼のまま星子が訊ねると、宙太、ニッコリと笑った。
「起きたかい?そこの丘の上からサンティアゴ・デ・コンポステーラが見えるんだ。」
「え、本当?」
「せっかくだから見ていかないかい?峯村さんや三日月君も、必ず通るはずのポイントだしさ。」
というわけで車を降りると、丘へと続くゆるやかな坂道を上り始めた星子、思わず息を呑んだ。
地面を簡単に整地しただけの道が、まるで星屑を振り撒いたように輝いている。
「これ……なあに?」
「ああ……これ、多分雲母かな。」
「ウンモ?」
「このあたりはもともと、花崗岩の産地でね、サンティアゴの大聖堂もほとんどこの花崗岩で作られてるんだ。その花崗岩に含まれた雲母が風化して……」
説明してくれる宙太の声は、途中で聞こえなくなっていた。

「コンポステーラって……だから、星の降る野……?」
星子が思わず呟くと、宙太も何かに気付いたように キラキラと光る歩道を見上げて、それからタレ目をほころばせた。
「……ああ。もしかして、そうなのかもな。」

歩道を登りきると、丘の上にはゆるやかな草原が広がっていた。
「見えるかな?あの、森の先あたりに小さく搭が見えるだろ?」
言われて目をこらすと草原の先に広がる森の更に先に、確かにちょこんと3本ほどの尖塔がつき出しているのが分かる。
「わあ、ちっちゃい……!あそこがサンティアゴ・デ・コンポステーラ?」
「ああ。ここは巡礼路の中で最初に聖地が見える場所でね、モンテ・ド・ゴゾ、つまり歓喜の丘って意味なんだ」
宙太、丘の上に建てられた巡礼者の銅像を差しながら答えた。
「歓喜の丘……。」
たしかにあんなに小さく尖塔が見えるだけでも、長い巡礼を続けてきた巡礼者には苦労が報われる瞬間だろう。
でも聖地に着いて……私達はマサルさんを捕まえることが出来るのかしら?
やっとここまで辿りついたという高揚感と、不安とを抱えながら、駐車場へ戻ろうとした瞬間、歩道のゆるやかなカーブの向こうに、一瞬、黒のライダースーツが見えた。

「マサルさん!!」
星子が声を上げるとマサル、はっとしたように顔をあげた。
「星子さんッ……警部!」
「よう三日月君、こんな所にいたのかい?急に連絡取れなくなるもんだから、課長がおかんむりだったぜ?」
宙太がニヤリとウインクすると、マサル、厳しい顔で宙太を睨んだ。
「やっぱり、アンタが来たのか。」
「おっと、誤解しないでくれよな?オレ、貧乏クジ引いちゃってさ、例のインターポールの研修に来ただけさ。」
宙太、にこやかに手を振ってみせたけれど、マサル、フッと皮肉げに笑った。
「あんたにしちゃ、下手なウソだな。」
「ん?なんで?」
「インターポールの研修ならマドリードだろ。なのにアンタがそれがわざわざこんなところまで来たってことは、オレがここにいる理由も知ってるってことだろ?」
「ま、それもそうか。」
宙太、アッサリと認めると、肩をすくめた。
「それにしてもさ、三日月クン。なんだって今更、カレ……峯村さんを追いかけだしたんだい?」
「……あんたには関係ない。」
マサル、頑なに首をふると、そのあとで一瞬視線を泳がせた。
「あんたの命令に従う義務は……警察はもう俺には関係ない。それは、あんたも知ってるはずだ。」

………え?
「じゃあな。」
「……三日月君!」
「あ、待って!」

今の言葉は……どういう意味?
星子、思わず坂道を駆け出そうとした瞬間……、ズルッと足元の砂利が滑った。
「キャッ……!」
「星子さん……ッ!三日月君!……待て!」
星子の悲鳴にマサル、一瞬躊躇うように振り向いたけれど、足を止めることはせずに足早にその場を立ち去ってしまった。
あたりにバイクのエンジン音が響き、丘の麓の道をマサルのナナハンが走り去っていく。
「宙太さん!私のことはいいから、マサルさんを……!」
星子、必死に訴えたけれど、宙太は仕方ないといった顔でナナハンを見送ると、まだ立ち上がれずにいる星子を抱え起こした。
「ハニィ、大丈夫かい?」
「いまの……どういうこと?」
「…………。足を見せてごらん。骨折していないといいんだけどな。」
「宙太さん、なにか知ってるの?……マサルさんが、警察を辞めるって……知ってたの?」
思わず宙太に掴み掛からんばかりに問いかけると、宙太は苦しそうに視線を落とした。

「受理は……まだされてない。」
「受理は、って……。じゃあ、時間の問題ってこと……!?」
星子、呆然と宙太を見上げた。



(続きます)



そうそう、このお話を書こうと思ったもうひとつの理由(ひとつ目は現地の男性達w)が、このキラキラと光る坂道でした。
コンポステーラの由来は一般的には「星がヤコブの墓を導いた」という伝説から
コンポ(野原)+ステーラ(星)、
または「コンポステラ」という単語自体がラテン語で「墓」を意味することに由来するらしいのですが。
でも、あの坂道を見たとき、私「ああ、コンポステーラってこれのことだ!」って思ったんですよー。
道がホントにキラキラ光ってて、私が見たときは太陽だったけどこれを月の光でみたら、本当に地面に落ちた星のカケラが光ってるように見えるはず♪
もしかしたら「星が導いた」っていうヤコブの伝説自体、この土地だからこそ生まれた伝説だったのかな・・・?なんて思ってみたりして。
あ、もちろん、これはなんの根拠もない、ただの推測ですがw




原作はこちらから!

この記事に

  • コンポステーラ…、由来がとても素敵。現地もとても素敵なんでしょうね。それにしてもマサルさん、あなたは、どうしていつもそんなにまっすぐ無鉄砲に突き進もうとするのかしら…。そこがいいとこなんだけど、なんだけど…ね

    [ でらっくま ]

    2014/7/22(火) 午前 5:25

    返信する
  • 顔アイコン

    >でらっくま様

    自分で書いててナンですが、本当にマサルさんは思い込んだら一直線というか、不器用ですよね…
    たまには「上司」の要領のよさを見習っ……ってムリか、やっぱり-▽-;

    [ すぴか ]

    2014/7/22(火) 午後 7:54

    返信する
  • どこにカキコむか迷ったのですがこちらに…。今更ながら、ブログリンクのやり方を思い出しまして、ブログリンクさせていただきました。よろしくお願いします(*^^*)

    [ でらっくま ]

    2014/8/29(金) 午後 10:18

    返信する
  • ありがとうございます〜\(^o^)/
    こちらこそ、改めましてよろしくお願い致します♪

    [ すぴか ]

    2014/8/30(土) 午後 0:07

    返信する

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
  • 名前
  • パスワード
  • ブログ

開くトラックバック(0)

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事