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疲れた……。
のどかな田園風景の中を金沢で借りたレンタカーで走りながら、宙太、深ーいため息をついた。

ゲンさん、風邪でも引いたのかな?
カフェテラスで星子を見送ったあと、宙太、報告のため手配のため捜査一課に連絡を入れたのだが、ゲンさんは不在だった。
仕方なく一課長に現在の状況を報告し、金沢県警への捜査協力を申請したのだが、予想どおり、先方からの依頼もなしに動けるかと一喝され、ついでにどうしてそんなところにいるんだと大目玉を頂戴したのだった。
金沢県警に協力依頼を出してくれるよう頼んではみたものの、返事は協議してみるという心もとないものだった。

……ったくぅ!そりゃ、正直ウチの課じゃこれくらいの事件は日常茶飯事だけどさ、だけど、人ひとり死んでるんだぜ?どっちからの依頼だとか、メンツがどうとか、そんなこと言ってる場合かよ!?
一方的に怒鳴られた腹だちまぎれ……いやいや、次代を担う若手キャリアとしてしなやかな刑事行政を実現する高邁な理想に燃えつつ、刈り入れの終わった田んぼの中を走っていると、並走する線路の先にゴトゴトと走る列車が見えてきた。
時間からして、おそらく星子が乗っている能登路5号だろう。

なんとか、追いついたかな。途中下車とかしないでくれていればいいんだけど……。
まったく、オテンバフィアンセのお守りもラクじゃないよな。
本人にバレたら頼んでないわよ!と激怒されるに違いない感想を抱きつつ、宙太、アクセルを踏み込んだ。


羽咋駅に着いた宙太が平屋建ての駅舎に駆け込むと、ちょうどホームに急行が滑り込んでくるところだった。
よし、なんとか、間に合ったようだ。
待っていると、改札から星子が出てくるのが見えた。

さて、星子チャン、どこへいくんだろう?様子をみていたが、星子、その先の計画はないらしい。しばらくあたりをキョロキョロしていたが、駅のベンチにすわってガイドブック片手に考え込んでしまった。
おいおい星子チャン、ここまで来ておいて行き当たりばったりかい?
とはいえ考えてみれば星子には宙太のような捜査スキルもリソースも何もないのである。
それなのに、数回話したことがあるだけのクラスメイトのためにこんなところまでくるんだから見上げたものというべきだろう。
宙太、少し考えたあと、駅舎を出てタクシー乗り場に向かった。
タクシーの運転席側に回り込み、コンコンと窓をノックすると、眠そうな運ちゃんが顔を出した。
「なんだい?」
「すみません、こういうものですが」
友禅の女の特徴を伝えて、無線で流してもらう。
捜査協力の申請はまだ通っていない。上にバレたら今度こそ大目玉では済まないが、ここは愛しいフィアンセ様のためだ……。
もっとも、友禅の女がここの人間なら市内の移動には自家用車を使っている可能性もある。だが、そもそも車をもっているなら、羽咋から金沢市内までわざわざ不便な電車を使う必要はないだろう。
はたして程なく、友禅の女らしき人物が能登金剛に向かったという連絡が入ってきた。
よし。小さくガッツポーズをとると、宙太、再び駅舎へと向かったのだった。

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