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「すまなかったな、警部。結局、主役の君を一番働かせてしまった」
右京が声をかけると、カウンターに掛けたエプロンをとりあげながら宙太、ウインクした。
「あはは、せっかくみんなが来てくれたんだ。ホストがもてなすのは当然さ」
原宿の宙太のマンション。
普段はほとんど、旅先でしか会うことのない面々だけれど、先日、星子がたまたま連絡のあった小次郎に宙太の誕生日のことを話したところ、いつの間にかメンバー勢揃いでの誕生日パーティが企画されていたのだ。

「じゃ、オレはこれで。」
「ああ、お疲れさん。もっとも三日月君はまた明日、だけどな」
「別に会いたいとも思わないけどな。」
「それは、お互い様だろ?」
「それもそうだな。」
宙太がニヤリと笑うと、マサルもニヤっと笑ってヘルメットを取ると玄関へ向かった。
みんなで集まるのも久しぶりだったし、少し名残惜しいけど、明日まで夏休みの星子はともかく、社会人組は明日も仕事だものね、仕方ないか。
「えーと、じゃあ、私も帰るわね。」
春之介やゲンジロウの手早いアシストもあり、あらかた片付いたリビングを見回した星子、くるりと向きを変えようとした途端、宙太に強く手首を掴まれた。
「あ、星子さんは、ちょっと待って。」
「え?」
見上げた星子に、宙太、ニッコリと笑いかけた。
「せっかくだから、ハニィはもうちょっとゆっくりしていこうか。」
「え……なんでよ?」
「いいからいいから。ね?」
「良くないわよ!」
「わがまま言わないの。あとで送っていってあげるから。」
「結構よ!」
むっと頬を膨らませた星子、先に玄関へ向かっているほかのメンバー達に助けを求めようとしたけれど。
「そうね、そのほうがいいわ。星子ちゃん、少し休ませてもらいなさいよ。」
「せ、せやな。その方がええで。」
「お、さっすが〜。うまくやったじゃん、警部」
って、もともと私達をくっつけたがってる春ちゃんや、面白ければなんでもいい(?)
タケルさんはともかくとしても、あの右京さんとマサルさんまでが複雑そうに眉間にシワを寄せて、
「君を猛獣の檻に残していくのは、不本意極まりないが……。」
「……。まあ、仕方ない……よな」って……。
「え?そんな、みんな、なんで……?」
「という訳さ。じゃあみんな、マイハニーの事はこの僕ちゃんがシッカリと面倒見させてもらいますから、心配しないで、さっさとおかえりくださーい!」
「ち、ちょっと、って、ええええ…え?」

星子がひとり混乱している間にも、メンバーは一人、またひとりと宙太のマンションから帰っていき、星子、とうとう最後の一人になってしまった。

な、なんで、誰ひとり宙太さんに文句も言わないわけ?
身構える星子を、宙太、振りかえるとニヤっと笑った。
「さてと。オジャマ虫クン達もいなくなったし、これで存分に二人で愛を語り合えるね♪」
「ちょっと、待ってよ……。私ももう遅いし、帰らないと……」
思わず顔を強張らせる星子を、宙太、ジッと見つめると、星子の肩を抱き寄せ、囁いた。
「ダーメ。まだハニィをこの部屋から出す訳にはいかないな。」
「え……?」
耳元に、宙太の少しだけアルコールを含んだ熱い息がかかり、ゾクッと身体が震える。
肩に置いた宙太の手が背中に回され、深く抱きしめられると、同時に頭の中が熱くなり、自分の意志と関係なく身体の芯がとろけそうになってしまう……。

「宙太……さ……」
怖くなり、思わず体を強張らせると、星子の髪に顔をうずめたままの宙太が忍び笑いをもらした。
「なーんてね。」
「え?」
「まったく……。いけない子だねハニィは。一体何を飲んだんだい?」
「え?何って……」
そういえば、なんで私……こんなに暑いのかしら?
星子、あわてて頬に手を当てると、その上から、宙太の両手が星子の両頬を挟みこんだ。
「なんでも何も、もう真っ赤になってるじゃないか。君にはちゃんと、ノンアルコールのカクテルを渡してたハズなのにさ」
宙太がいたずらっぽく星子をにらんだ。
「あ……私、もしかして?」
「だから、オシオキしないとね♪」
次の瞬間、星子の体はふわりと抱き上げられていた。



「ちょっ……!ちょっと待って!ねえったら!」
星子、わめいたけれど、宙太、かまわず星子を抱き上げたままリビングに運ぶと、ソファに座らせた。

あ……ああ、ソファ、なのね。
少しだけ拍子抜けしつつ、ほっとする星子に宙太はダイニングテーブルの上に残ったままカラフェから、カップにミネラルウォーターをそそいで、星子に手渡した。
「まったくハニィは……。ここ、どこだと思ってるんだい?」
「どこって……。宙太さんのマンションでしょ?」
「そ。でもって、一応これでもボクちゃん、警察官なんでね。酔っ払い女子高生を僕の家から帰らせるわけにはいかないのさ。まして、こんな時期にはね。」
「それは……。」
たしかに、この宙太のマンションは、中高校生に人気のショップが連なる原宿にも近い。
夏休みも終わりかけのこの時期、未成年の星子が真っ赤な顔で夜の原宿を歩こうものなら、補導員の格好の獲物になってしまうだろう。
「本当は、僕が送ってあげられれば良かったんだけど、今日は僕も飲んじゃったからね。今夜はここで休んでいきなよ。明日、自宅まで送っていくからさ。」
ニンマリと微笑まれ、星子、あわててソファから立ち上がった。
「そ、そんな!だ、大丈夫よ、私、ひとりで帰れるから……」
一歩を踏み出した途端、世界がグラリと回った。
「……おっと。無理するなよ、ハニィ」
慌てて抱きとめた宙太の声がやけに遠く聞こえる。
「あれ?え……?」
さっきまでなんともなかったはずの頭のなかで、ゆっくりと重くて不快な何かが回りだし、目の前の視界が歪んでいく。
こみ上げるムカツキに耐えられず、ギュッと目をつぶってしまった星子の頭を、宙太は自分の膝に乗せると、小さく息をついた。
「ほら、大丈夫じゃないだろ?」
「でも……。」
「ご両親には僕からきちんと謝っておくよ。それに、いくらハニィが酔って抵抗出来ないからって……君を泣かせるようなことを、僕が出来ると思うかい……?」
目をつぶってしまっているせいで、宙太の顔はみえない。それでもゆっくりと星子の髪を撫でる宙太の声は、けれど真摯なものだった。
「……うん。……ごめんなさい」
「ん?何がだい?」
やっぱり、酔いが回っているせいかしら、宙太さんのいつも通りの飄々とした優しさに、柄にもなく泣きそうになってしまう。
「だって……せっかくのお誕生日なのに……」
情けなくて、額に手をやったままぼんやりと宙太を見上げると、宙太、小さく笑った。
「いつも言ってるだろ。僕にとっては……君のそばに居られることが一番のプレゼントだって。……マイハニィ」
ささやきとともに、額に柔らかな唇が降ってくる。
その優しい感触を受け止めながら、星子、そっと宙太の背中に腕を回した。

「いまさらだけど……、お誕生日おめでとう。宙太さん」


(おわり)


ほんとー今更ですがw お誕生日に上げようと思って準備してたSS、やっと出来たのでこそーりあげときますw
準備っていっても、もともとこれの下書きにはなりきりコミュよりって副題がついてて、たぶんなりきりのまくら投げ大会とか、あの辺のパーティネタの別バージョンで作ってたものだと思われます…
こんな体たらくですがまた一年、警部殿をたゆまず、しっかり推してまいりたいと存じますのでよろしくお願い致しますw

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