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”エルモはこの日も朝の九時にステージ入りする。前日強く言ったおかげでスタッフも九時にはステージ入りしており
準備に余念が無い。しかし黒澤はまだ来ていない。彼は前夜から今朝まで酒を飲み続け睡眠薬も服用。
現場に現れたと思ったら機嫌が悪く、カリカリしていてスタッフを怒鳴りつけ、激昂する。
スタッフは対応に戸惑うばかりであった。
今日も撮影現場を見学しようと午前中からやって来たダリルだが、ステージ入りできる状態ではない。
待ちぼうけで四時間もエルモの事務所で雑談。ついにしびれを切らした午後二時三十分、青柳に
「ステージに連れてゆけ、なぜ見せないのだ」と詰め寄ったが全く説明が無い。
しばらくして青柳から「照明器具が落下する事故があった」と連絡を受ける。
午後四時、本日分の撮影中止決定。今日は見られないとあきらめ、ダリルはホテルに引き上げる。
午後五時、エルモは日米合同のスタッフ会議をみずから招集する。
青柳に情報が集中しすぎて、スタッフ間の意思疎通がうまくいかず、このままでは映画製作が破綻すると
考えたためである。スタッフ全員で情報を共有、交換し、トラブルに対処していく、そのためには情報の流れを
良くするキーパーソンを設定する必要があると、エルモは考えた。
一方、スタッフからは撮影機器の操作方法、ラッシュフィルムの扱い、日々の工程などに関して
多くの質問が出た。一番の問題は黒澤に直接質問ができないことだ、という声が上がる。
会議の途中で黒澤がやって来るが、部屋には入ってこない。彼はその場にいる人々を一瞥すると嫌悪感をあらわにし、
背を向ける。それを見て、エルモは黒澤と青柳とスタッフの間に問題があるに違いないと確信する(そう予測していた
エルモはこのスタッフ会議に黒澤を呼ばなかった)。”
「黒澤VSハリウッド『トラトラトラ』その謎のすべて」より
<コメント>
天下の黒澤は、アメリカと合同で「トラトラトラ」という映画を合作することになったが
精神病ということで降板させられ、のちに自殺未遂まで起こすことになる。
これはCIAの作戦か?作戦だとしたら最初から黒澤を精神病扱いする目的で彼を「トラトラトラ」の製作に
ひきづりこんだのか?それとも不可抗力だったのか?
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