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ハロルド・ピンターの発言集「何も起こりはしなかった」より:
”ラモン・シモ:あなたが『ガーディアン』のエッセイで採りあげていることには、記憶の問題、記憶が権力や
マスコミによってどのように操作されるかという問題もあります。平凡な人間がそういう過程と闘い、
それに呑み込まれないようにするにはどうしたらいいのでしょう。
ハロルド・ピンター:それこそ重要な点です。嘆かわしいことに今では世界中でマスコミが政治的に利用されています。
マスコミと政治的権力を握っている人々との間には非常に緊密な関係があるので、
両者を区別するのは容易なことではありません。このことはテレビについては確かに指摘できます。
世界中のテレビは私の理解によると今ではほぼ3人の人間によって事実上支配されています。
あるニュース番組を見ようとすると、このバルセロナやロンドンで見られるのと全く同じものがサハラ砂漠でも
見られるのです。なぜなら、それは大元で統制されているからです。別の言い方をするとそのニュース
番組が伝えることは注意深く選ばれており、厳密に統制を加えたニュースが何処からか流れてくる。
ルパート・マードックと言う名前をもう少しで口にするところでした。
しかし、ルパート・マードックひとりの問題ではありません。
現在のイギリスでは野党がーそれはおそらく次の政権につくだろうと思われますがールパート・マードックと
非常に友好的な関係を結んでいます。野党がそういうことをするのは自らも獲得したいと思うような
権力をマードックが握っているからです。コレは極めて腐敗した事態です。要するに、権力は金であり、
金は権力であるのです。コレは誰もが良く知っている決まり文句ですがそれでもまったく吐き気がするような
意味でこれが当てはまる場合は今尚たくさんあるのです。私が本当にがっかりするのは世界中で行われている統制が
極現実的な理由で人々を恐ろしく弱気にさせてしまったということです。ついこの間のことですが
イギリスで私は何人かの人々に向かってこういう事態について話をしていました。
聞き手の多くは大学関係者でした。ひとりの男が立ち上がって言いましたー
「お話には賛成です。しかし、わたしはカーディフ大学の講師なんです。だからそういうことを公の場で言うことは
とてもできません」別の人が言いましたー「まさか職を失うだろうと言うんじゃないでしょうね?」最初の男が
答えましたー「ええ、職を失うとは思いません。しかし私は昇進できないでしょう」コレは言論の自由に対する
想像を絶する、また恐るべき抑圧ですが、ついでに言うとこれはいわゆる民主国家で起こっていることなのです。
あなたの質問は凡人に何が出来るかというものでした。私の考えでは私たちににできることはー
と言うのも私たちはすべて凡人なのですからーそのことをここにしっかりと納め(額に触れる)
それを口に出してはっきり言おうとすることです。”
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