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”最初の部屋を勢いよく開けて花のカートをひっぱりながら中に入った。そこにいた看護婦が飛び上がった。
棚や薬の入ったキャビネットがぼんやり目の中に飛び込んできた。
「御用は?」看護婦のひとりが厳しく咎めるように言った。看護婦は皆同じような顔をしていて区別がつかない。
「お花を配りに来ました」
さっき口をきいた看護婦が私の肩に手をかけてあいている手のほうで器用にカートを操り
私を部屋の外に連れ出した。それから急に手を伸ばして隣の部屋のスウィングドアをバンと開け、うなずいて
中に入るように合図をした。そして彼女は行ってしまった。
遠くの方でクスクス笑う声が聞えたが背後でドアが閉まって聞えなくなった。
その部屋にはベッドが六台あった。全部女の人でふさがっている。それぞれ起き上がって編み物をしたり
雑誌をパラパラとめくったりピンカールをしていたり動物園のカゴに入れられたオウムみたいに
ぺちゃくちゃしゃべったりしていた。
自分がやることを把握する間もなくブロンドで鋭い逆三角形の顔をした元気な女の人が私に手招きをした。
頼りない笑顔を見せながらカートをベッドのそばまで押していった。
「ちょっと私のデルフィニウムは?」大きくて肉のたるんだ女の人が部屋の向こう側から鷲みたいな鋭い目で
非難がましく私を見ていた。
あごの尖ったブロンドの女の人がカートに屈みこんで「私の黄色いバラはあるけど、
不愉快なアイリスなんかと一緒にされてるじゃない」と言った。
最初の女の人2人の声にほかの人たちの声が加わる。みんな怒っていて、うるさくて、不満に満ちていた。
説明をしようと口を開こうとした時ドアの扉が開いて看護婦がこの騒ぎは何かと不審そうに入ってきた。
「看護婦さん聞いてよ。ラリーが昨日持ってきた大きなデルフィニウムの花束があったんだけど、
あの子が私の黄色のバラの花束めちゃくちゃのしたのよ」
走って逃げながら緑の制服のボタンを外した。洗面所を通り過ぎる時に枯れたろくでもない花が並んだボウルに
制服を突っ込んだ。そして誰もいない裏玄関への階段を二段飛ばしで降りて道路へと向かったので
誰にも会わずにすんだ。”
<コメント>
シルヴィア・プラスは精神病扱いされ自殺した女流詩人である。
彼女の遺作である「ベルジャー」という自伝小説に集団ストーカーの記録が残されている。
彼女がこの小説のゲラ刷りを出版社から送ってもらったとき、笑いながら破り捨てたと言う…。
しかし、この本を読むと、病院はスタッフも患者もアホの巣窟だと言うことが分かります。
プラスの被害記録はたくさんあるので、また随時更新するつもりです。
上のエピソードは精神的に疲れたプラスがボランティアを勧められて
病院で花を配る仕事を無償でやっていた時の事件であるが、
人々の冷たさというか、キリスト教徒の意図的な悪意が居心地を悪くさせています。
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