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”「ぼくらはちょっとふたりきりになりたいと思った。それでシャワールームに入っていった。ぼくらはべつに
何もしてないさ、ただそこに立って喋っていた…そのとき、ひとりの小男、青い制服を着て青い帽子をかぶった…」
ロックコンサートのしきたりでステージの前には警官が一列にずらっと並んで立っている。
ティーンエイジャーたちがステージに押し寄せるのを防ぐためだ。インスタマティック銃でものものしく
武装している。彼らのうちの2、3人がジムの方をチラッと振り返った。
「ヤツは僕に言った。『おまえら、そこで何やっとるんだ』と…。ぼくは答えた。『別に何も』…。
だがやつは出て行かない。そこに突っ立って腰のベルトに手を伸ばし…そして、小さな黒い缶を取り出した。
シェイビングクリームみたいなものが入っている缶だ。それから突然ヤツはぼくの顔にそいつを吹き付けた」
今では警官全員がジムの方を振り向いていた。ジムは間の抜けた南部訛りを使い、シャワールームに入ってきた
警官をバカにしたのだ。聴衆はハラをよじって笑った。それはあからさまに警官たちを侮辱する笑いだった。
「誰もがオレを憎んでいる!」ジムは叫んだ。
「この世の誰もがオレを憎んでいる。イカサマな世間全体がオレを憎んでいるんだ!」聴衆はうっとりその叫びを
聞いていた。ジムがバックの3人に合図を送る。バンドは最高のコーラスをワーッと盛り上げた。
「アイム・ア・バックドアマン…」
突然、場内に明かりがついた。ロビーは前の方に出てきてジムに耳打ちした。
「ブタどもが怒こってるようだぜ」ジムは聴衆に向かってたずねた。「もっと俺たちの演奏が聴きたいか?」
ざわついた場内からはっきりとイエスという合唱が返ってきた。「OK、じゃあライトを消してくれ。ライトを消すんだ」
しかし、会場のライトは消えなかった。ニューヘイブン警察青少年課の隊長補佐がステージの上に歩み出て
ジムを逮捕すると告げた。ジムは彼の方を振り返るとレザーのパンツを履いた足を挑発的に一歩踏み出した。
乱れた髪は汗で額に貼りついている。彼は手にしたマイクを警官の鼻先に投げつけた。「OK、ブタ野郎」
ジムのふてくされた態度は教師に反抗する少年のようでもあり、権力を憎悪する大人のようでもあった。
「どうしたんだ、言いたいことがあったら言ってみろよ」もうひとり警官がやってきて2人は両側からジムを取り押さえ
ステージ裏に引きずって行った。駐車場まで引っぱっていかれ、ジムはパトロールカーの前で写真を撮られた。
警官たちはジムを散々殴ったり蹴ったりしたあげく車に押し込んで警察署に連行した。
ジムの罪状は公然わいせつ罪、治安妨害罪、公務執行妨害罪の3つだった。
故意にジムをかばったかどでヴィレッジヴォイスのライターとライフのカメラマンも逮捕された。”
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