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原題: BLACK SWAN 製作年度: 2010年
監督: ダーレン・アロノフスキー 上映時間: 108分
製作総指揮 ブラッドリー・J・フィッシャー 、アリ・ハンデル 、タイラー・トンプソン 、ピーター・フラックマン 、リック・シュウォーツ 、ジョン・アヴネット 原作 −
音楽 クリント・マンセル 脚本 マーク・ヘイマン 、アンドレス・ハインツ 、ジョン・マクラフリン
ナタリー・ポートマン(ニナ・セイヤーズ)
ヴァンサン・カッセル(トーマス・ルロイ)
ミラ・クニス(リリー)
バーバラ・ハーシー(エリカ・セイヤーズ)
ウィノナ・ライダー(ベス・マッキンタイア)
バンジャマン・ミルピエ(−)
クセニア・ソロ(−)
クリスティーナ・アナパウ(−)
ジャネット・モンゴメリー(−)
セバスチャン・スタン(−)
トビー・ヘミングウェイ(−)
◎採点:★★★★★(5/5点)
◎レビュー:映像美を追求した“芸術至上主義の賛歌”。
昔々のそのまた昔、良秀という男がおりました。
彼は、仏様の絵を描くことを生業(なりわい)としていました。
ある日、たいへんなことに、隣の家から火が出て、彼の家にも燃えうつり、大火事となりました。
良秀はからくも逃げのび、道の向かいから、燃えゆく我が家を眺めています。
彼の愛する妻も子も、燃えさかる炎のなかに取り残され、もはや助け出すことは叶(かな)いません。
ところが、なんと、良秀は、自分の家を見ながら、にたにたと笑っているではありませんか。
理解に苦しむ隣人たちは、いったいどうしたことかと良秀に問いただします。
すると、良秀は、次のように答えたのです。
「おまえさんたち、凡人にはわかるまい。
わしはいま、この燃え盛る炎を見て、初めて、不動明王の火炎の描き方を得心したのだ。
これこそ、なんというもうけ物よ。喜ばずにはいられようか。」と。
そののちのこと。
良秀が描いた不動明王の絵は、稀有(けう)の大傑作として、今日まで人々の賞賛の的となっているのです。
〜・〜・〜・〜
芥川龍之介『地獄変』の元ネタでもあります。
『宇治拾遺物語』絵仏師良秀というお話。
映画『ブラック・スワン』を観て、思い出しました。
この映画は、完璧主義がいかに人を恐怖せしめるか、そして。
そういう完璧主義者こそが、いかにすばらしい芸術を生みだしてきたかを。
鑑賞する者に、思い知らせます。
精神のバランスを失った者こそが、常人にはつくり得ぬ、大傑作を生みだすのです。
われわれは、そんな作品を見るにつけ、背筋に怖気(おぞけ)の走る思いがしつつも。
その作品に、激しく感動しないわけにはまいりません。
この映画は、そうした意味で、恐怖映画、ホラー映画であり。
かつ、“芸術至上主義の賛歌”でもあるのです。
私もまた、主人公の生きざまに、震撼するとともに、感動せざるをえませんでした。
この感動を、あらゆる人と共有できないことが残念でもあり。
しかしまた、しかたのないことでもあると思います。
あかるく健全なこころでは、この映画の神髄に感動することはできないでしょう。
“ホワイト・スワン”な人々には、この映画は、ただの気持ちわるい作品にすぎないのです。
芸術家がこころのバランスを失って自滅していく映画なんて、ありきたりだというご批判は。
なるほどごもっともです。
また、若い女性が拒食・過食・自傷行為に陥る物語も、昨今、ありきたりかもしれません。
けれども、この映画のおもしろさは、そのようなストーリーの小道具にあるのではございません。
その“映像表現”こそが魅力的なのです。
バランスを失っていく心理のプロセスを、いかに視覚化して表現するか。
その不安感、苦悩、恐怖心を、どう映像化して見せるか。
そこにチャレンジした映画だと言えます。
白、黒、赤色を象徴的につかった、色彩にも強いこだわりの感じられる、これぞ“映像芸術”です。
〜・〜・〜・〜
私はふだん、大きな映画館でメジャーな映画を観るのが嫌いです。
なぜなら、そこは、ポップコーンなどのお菓子の匂いや食べる音、しゃべり声、いびき、さらには。
うしろから席を蹴ってくる輩から、エンドロールを見ずに席をたつ大群まで。
ありとあらゆる“鑑賞の邪魔”が存在するからです。
それゆえ、都合で、品川のスクリーンで観ることになったのを、残念に思って鑑賞しました。
なのに。
この『ブラック・スワン』。
結末をむかえ、エンドロールが流れだしても、席を立って帰る人がほとんどいないではありませんか。
観客のほぼ大半が、身じろぎもせず、静まり返ったままだったのです。
よく考えれば、上映中も、ポップコーンを食べる音も聞こえず、何の邪魔も入らなかったことに。
思い当たりました。
スクリーンが消え、明かりが点(つ)いてからも、多くの人が無言で、よたよたと映画館を後にしてゆきました。
ただ、女子高生2人組のつぶやきだけが耳に入ってきました。
「こわかったね・・・」
「・・・てゆうか、こわすぎだよ・・・」
これは、そういう映画です。
こころに生傷を抱えている人は、決して観てはいけません。
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あ〜〜
久々のレビューがブラック・スワンですか〜
>決して観てはいけません・
などと書かれると、無性に見たくなる性分なのでありまして(笑)
大震災以降、映画館へ足が向かない私ですが・・見たいですね。
いくつかレビューを読み、ポートマンが実際に踊ってるはいるけど・
バレエ本来のつま先立ち?をしていない・
というのを読んでなんだかなぁ・・と思ってましたけど
そこは気にせず見るべきなのかも知れませんね?
2011/6/4(土) 午後 6:00
sanaeさん、こんにちは☆
チビちゃんがおるので、なかなか映画を観る機会がなく、映画館もものすごく久しぶりでした〜。
東京に行ったついでに、地元和歌山でも観れる映画を観てしまいました。(涙)
でも、感動したんだから、わざわざ東京で観る必要はなかったとはいえ、観れたことはとてもラッキー、良かったです。
ナタリー・ポートマン、じぶんで踊っているシーンもそこそこあるのでしょうか。
スタントマン?みたいな人が代わりに踊っている場面も、案外おおいのだろうなあなどと思っていましたが。
いずれにせよ、踊り自体も良かったですよ☆
わたしのようなバレエ素人には、充分感動したし、一度本物のバレエの舞台を観にいきたいなと思わせるだけのものはありました。
大阪まで出ないと観れないので、行きませんが。(苦笑)
つま先立ち? してたと思うのですが。。どうだったか。
していないなんてありえないと思っていたので、あまり注意深くは観ていませんでした。
まあ、そこは、プロと比べちゃかわいそうなので、「上手だ」という設定で観てください。(笑)
2011/6/6(月) 午後 4:56
文章の隅々にまで賛同!!
私の言いたいことが簡潔に書かれてる記事です。
そうなんですよね〜
芸術の域にまで高めるためにはこの位、自分を痛めつけないと
ならないのかもしれません。
それをホラーっぽくして描いたのがこの作品ですね。
TBさせてくださいね。ポチ
2011/6/10(金) 午後 3:57
Cartoucheさん、こんにちは☆
ご賛同いただけてうれしいです!(笑)
たとえば、この主人公を、「こころのバランスを失ったから、だめな人間だ!」などと批判する気にはなりませんよね。
もちろん、正常なこころでいてほしいけれど、真の芸術を生み出すために、こころがこわれてしまう人間もいる、それは残念だけど、逆にそれだからこそ、彼女が作りあげた芸術は、賛嘆したいと思うのです。
きっと彼女はそれを願って、こころまで狂わせたのですから。
芸術っておそろしいけど、芸術ってすごい。そんな映画でしたよね。
TBありがとうございます☆
2011/6/11(土) 午後 0:51