Ashley事件から生命倫理を考える

世の中は想像していたより、はるかにコワイ・・・

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【4月15日追記】
その後、この論文を読んで詳細を別エントリーに取りまとめました。


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またも医師による自殺幇助に新たなパターンが登場――。

シアトルのがんセンター、the Seattle Cancer Care Allianceが
PASの全プロセスをシステマティックに引き受けるプログラムを実施しており、
患者や家族に好評だと、4月11日にNEJMのオンライン版で論文発表。

その名も the Death with Dignity プログラム。

参加希望の患者には、最初に担当のアドボケイトがつく。
同センターの職員である有資格のソーシャル・ワーカー。

この人が、担当医と共に
患者がターミナルであること、自己決定能力があること、
全ての選択肢を理解した上で決断していることを確認し、
手続きがすべて合法的に行われるように全プロセスを通じて仕切る。

担当医が個人的な信条から参加したくない場合には、
参加してもよいとする医療職から候補を選ぶ。

患者の意向は記録され、
グリーフ・ケア、法的支援、家族へのケアまで怠りない。

手続きが所定の通りに行われて処方箋が出されると、
薬剤師が患者と会い、副作用などについて詳しく説明する。

処方箋で薬を手に入れるかどうか
飲むかどうかは、その後の患者次第。

2009年から2011年の間に114人の患者から問い合わせがあり、
そのうち44人(38%)は問い合わせだけで終わるか、参加資格がないとみなされた。

30人(26%)は
最初の申請を行った後に参加を取りやめたか、その段階で亡くなった。

40人(一回目の申請をした患者の35%)が致死薬の処方を受け、
この40人は全員が既に死亡しているが
致死薬(セコバルビタール)を飲んで死んだのは24人。

結局、自殺幇助で実際に死んだのはプログラム参加者の21%で
同センターの患者の年間死亡件数のうち 0.02%に当たる。

参加理由で最も多いのは
「自律の喪失」                97%
「楽しい活動ができなくなる/なった」   89%
「尊厳の喪失」                 75%

これまでに家族からも介護者からも苦情は出ておらず、
患者の死は穏やかだったと言われる。

薬を実際に手に入れるか、飲むかに関わらず、
処方箋が出ることに患者と家族が感謝を語り、
不透明な状況でも自分でコントロールできると思えることが大事なのだと
話すのが常だという。

PAS反対論者は弱者への圧力になると言うが、
プログラム参加者のほとんどは白人の教育レベルの高い男性だと著者らは反論している。

(でも、それは
こうしたがんセンターにかかれるのが既に選別された層だからでもあろうし、
また、弱者への圧力はPASに追いやるという以外の形で起こる可能性もある)

不測の合併症は起きていないが、
薬を飲んだ後、死ぬまで1日かかった患者が一人。
死が長引いたことは家族にとっても医師にとっても辛い体験となった。

同様のケースはこれまでにも報告されている。
(これはORとWAの年間報告書に情報があります)

気になるのは記事の以下の個所。

The program’s policy - written by the Seattle Cancer Care Alliance’s
medical director and approved by a majority of the medical executive
committee members, as with any clinical policy - requires that patients
request information about medically assisted suicide from their physicians,
or that these clinicians raise the topic, to be considered for referral.

患者側から情報を求めるだけでなく、
医師の側から切り出してもいい、ということになっている。

Cancer patients embrace pioneer assisted-suicide program
Family Practice News, April 10, 2013


前から、ちょっと気に掛ってはいたのだけれど、
がんセンターがこういうプログラムを実施すると、
PASはいよいよ緩和ケアの一環と位置付けられていきそうな気配。



まさに、安藤泰至先生が言う「死や死にゆく人をめぐるケアの医療化」そのもの ↓
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』書評を書きました(2013/4/3)

こうして「医療によって効率的に死なせるシステム」が整備された社会ができていく――。


改めて、エマニュエルが言っていることを読み返したくなる ↓
Dr. Emanuel「PASに関する4つの神話」(2012/11/5)
「安楽死やPAS合法化は、痛苦の責を患者に転嫁する」と16年前にエマニュエル(2013/3/22)

【追記】
その後、LA Timesも記事にしています(私は読んでいません)。
http://www.latimes.com/health/boostershots/la-heb-death-with-dignity-seattle-20130410,0,7934455.story

さっそく、この論文が「すべり坂懸念を否定するデータ」と報じられている。
http://health.usnews.com/health-news/news/articles/2013/04/10/physician-assisted-suicide-program-rarely-used-study-finds

【追追記】
Wesley Smithが、自殺クリニックだと批判している。
http://www.nationalreview.com/human-exceptionalism/345308/suicide-clinic-washington

【13日追記】
医療系のサイトが、この論文を「患者も家族も感謝」というタイトルで。
http://www.clinicaladvisor.com/patients-families-grateful-for-physician-assisted-suicide-program/article/288336/

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an important sense of control というのがキーワードみたいな気がしてきた。出生前、新生児、成人を問わず遺伝子診断でも、子育てでも、病気予防でも、監視社会や働かせ方や、その他なんでもかんでもで。

2013/4/12(金) 午前 11:15 [ spi*zi*ar* ] 返信する

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