Ashley事件から生命倫理を考える

世の中は想像していたより、はるかにコワイ・・・

ステレオタイプという壁

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ケンブリッジ大からカナダのウエスタン・オンタリオ大に招聘されたA・オウェン教授が
植物状態と診断された患者と脳スキャンを通じてコミュニケーションをとる方法を
研究していることについては以下のエントリーで触れてきましたが、
(23日に出た拙著『死の自己決定権のゆくえ』でも触れています)



この中の12年11月13日の補遺で拾った
Scott Routleyさんの事例を思われるものを含めた3例について
同大のLorona Naci、Adrian Owenの共著論文がJAMA Neurologyに発表され、

Making Every Word Count for Nonresponsive Patients
Lorina Naci, PhD, Adrian M. Owen, PhD
JAMA Neurology, August 12, 2013


植物状態と診断される患者の40%は誤診されており、
実際は一定の意識がある、との研究結果が報告されている。

著者らは

These results suggest that some patients who are presumed to mostly or entirely lack cognitive abilities can have coherent thoughts about the environment that surrounds them.

これらの結果が示唆するのは、
認知能力をほとんど、あるいは完全に欠いているとみなされている患者の中には、
自分を取り巻く状況について一貫性のある思考をすることが可能な人がいる、ということである。


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これもまた、09年10月に書いたものなのですが、
ここしばらく集中的に考えていることに関連するので、発掘してきました。

訴える言葉を持たない人の痛みに気づく

 もう何年も前のことだけど、重症重複障害のために言葉を持たない娘が腸ねん転の手術を受けたことがある。術後、本人は必死に目で訴え、声を出して助けを 求めていたし、親も痛み止めの座薬を繰り返し強く求め続けたにもかかわらず、外科医は娘の痛みに対応してくれなかった。回腹手術直後の痛みを、娘は痛み止 めもなしに放置された。ただ口で「痛い」と言えないというだけで──。

 以来、私は、言葉で訴えることのできにくい患者の痛みに対して、医療はあまりにも鈍いのではないか、という強い疑念を抱えている。

アルベルタ大学作業療法学科が認知症の人の痛み行動ワークショップ

 Medical News Todayの記事「認知症の人の痛みはしばしば見過ごされている」(9月3日)によると、認知症の人で見過ごされがちなのは、関節炎、糖尿病神経障害、骨折、筋肉の拘縮、打撲、腹痛、口腔潰瘍の痛みだそうだ。

 「アルツハイマー病または認知症の人に痛みがある時に、あなたは気づけますか?」 こんな問いを投げかけて、認知症と痛みに関する情報を提供し、認知症の人の痛みに気づくためのツールを紹介するオンライン・ワークショップが、その記事で 紹介されている。カナダ、アルベルタ大学作業療法学科のキャリー・ブラウン准教授が主催するプログラム、Observing & Talking About Painである。

 オンラインでブラウン准教授の講義を聴くことができる他、痛み行動について、認知症の人を介護する家族向けに半日コースのワークショップを開催する場合 のツールキットもダウンロードできる。プレゼン内容や開催までの準備手順を詳しく解説した文書、当日の配布資料、パワーポイントのシートまで、懇切丁寧な 資料となっている。

 プログラムでは、池の水面に散り敷いた落ち葉の写真が、あちこちにシンボルとして使われている。「水面下で起きていることが落ち葉に覆い隠されているように、認知症の人々が経験している痛みの深さを知ることも難しい」と、ブラウン准教授は言う。

 例えば、認知症の人が熱いコーヒーで口の中にやけどをしたとしよう。言葉で伝えられなければ家族には分からないし、本人が痛みの原因を忘れてしまうこと もある。ものを食べようとしない理由が理解されないため、周囲は食べさせようとし、本人はそれに抵抗する。拒絶が攻撃的な行動や閉じこもりに至ると、それ は脈絡のない問題行動とみなされてしまう。痛みが見過ごされることの影響は決して小さくないのだ。

 プレゼンの内容は5つの章に分かれており、 崢砲澆呂覆ぁ廚箸凌析辰砲弔い董なぜ認知症の人の痛みは理解されないのか? 認知症の人に痛みがある理由、D砲澆鮓つけるヒント、つ砲澆鮓つけるためのツールPAINAD、ツ砲澆悗梁弍。

 では認知症の人が一般的に見せる痛み行動について、顔の表情、言葉や音声、身体の動き、行動や感情の変化などを詳細に解説。認知症の人を定期的に観察 し、項目ごとに0点から2点でチェックできる痛み行動のアセスメント・シートがPAINADである。米国老年医学会やオーストラリア痛み学会が作った「高 齢者入所施設での痛みのマネジメント戦略」(右に仮訳を掲載)を元に、アルベルタ大学作業療法学会が提唱しているもの。イ任浪搬臆雜郤圓日ごろ配慮した い注意点をアドバイスする。

「医療の無関心が知的障害者を死に至らせた」とオンブズマンの報告書(英国)

 英国では、2007年に知的障害者のアドボケイト団体Mencapから、知的障害者に対する無理解、無関心から適切な医療が行われないために、救えるはずの命が奪われていると訴える声が上った。

 医療オンブズマンの調査が行われ、今年3月に刊行された調査報告書では、医療サイドの偏見から、障害がなければ当たり前に行われるはずの痛みへの基本的 ケアが行われず、不幸にも死に至ったケースの存在が確認された。オンブズマンは関係者らに患者家族へ賠償金の支払いを命ずると同時に、NHSと社会ケア組 織、ケアの質コミッション、平等と人権コミッション、保健省のそれぞれに対して、システムの見直しや改善計画の策定を命じた。

 言葉で訴えることができない人たちが経験している痛みの深さを知ることは難しい──。日本でも、まず、その難しさを知り、「痛みはない」との神話を疑ってみることから始めて欲しい。

ワークショップのサイトはこちら
http://www.painanddementia.ualberta.ca/
連載「世界の介護と医療の情報を読む」
「介護保険情報」2009年10月号




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ケンブリッジ大、カナダのウエスタン・オンタリオ大のオウェン教授が
植物状態と診断された患者と脳スキャンを通じてコミュニケーションをとる方法を
研究していることについては以下のエントリーで触れてきましたが、



去年のカナダの患者さんの事例以前にオウェン教授らは
脳波を利用したベッドサイドでの簡易な方法でも調べられることを
Lancetで報告していました。

Owen教授らはこれまでに
MRI装置を利用して脳の血流の変化を画像化するfMRIと呼ばれる技術を使って、
植物状態と診断された患者に簡単な質問をし、
イエスだったら、テニスをしているところをイメージし、
ノーだったら、家の中を歩き回っているところをイメージするよう指示して
応えてもらう、という方法によって、

17%の患者で
質問を理解できるだけの意識と、
それを伝えることができるだけのモチベーションがあることを発見してきた。

しかし、fMRIには
物理的に患者をそこに運ばなければならないことに伴う様々な困難と
コストがかかる難点があり、どの患者にも広く実施することができないため、
携帯タイプの脳波検査機を使って、質問ではなく簡単な指示を出すやりかたで、
ベッドサイドで簡易にできる方法を考案したとして、
Lancetに報告されたもの。

The Coma Recovery Scale-Revised の定義に即して植物状態と診断された患者 16人と、
健康な患者12人に、まず右手を握りしめては緩めることをイメージするよう求め、
それを数回やった後に、次には足の指で同じことをイメージするよう指示したところ、

植物状態と診断された患者の3人では
健康な人のほとんどと同じ脳波パターンが検出された。

これまでの17%という結果とほぼ一致する。

一方で、
健康な人の中にも、手や足の動きをイメージすることができにくく、
全く脳波に反応が見られなかったケースもあるため、

植物状態と診断された人の大半で脳波の反応がなかったからといって
この技術によって、それらの人には全く意識がないと判断することはできない、
ということも判明した。

Owenらは脳とコンピューターのインターフェースによって
さらにコミュニケーションの可能性が広がると期待している。


Guardianの記事はこちら↓
Brain scanner brings new hope for patients in vegetative state
The Guardian, November 10, 2011


ちょっと気になるのはチーム(the doctors)が
このブレークスルーには、倫理的に難しい問題があると発言していること。

そこについてはGuardianの一節には、
以下のように書かれている。
It would be difficult to know the inner world of somebody in a vegetative state, and the ability to answer yes or no to a question might not indicate a capacity to consider a complex issue such as whether life was still of value.


ざっくりまとめると、
質問に「イエス」―「ノー」で応えられるからといって、
その人が「まだ命に価値があるか」どうかという複雑な問題を
考える能力があるとは言えないだろう、ということ。

ただ、この個所は直接話法がまったく使われていないので、
イマイチ誰がどういう意図でどういう表現で言ったことなのか
はっきりしない点もある。

こうした研究に対しては、
それを「死の自己決定権」を実現させてあげる”親切”につなげようとする動きが
必ずや現れてくるだろうということは、

上記の10年のエントリーでも予想していたけど。

アザラシ肢症のため、
生まれつき両腕がなく両脚も短い障害を持つ
英国の芸術家、アリソン・ラッパーの妊娠裸像が
英国ロンドンのトラファルガー・広場に設置されたことで
批判が巻き起こった一件について、以下のエントリーで取り上げました。



今日、必要があって久しぶりに検索したところ、

以下のブログがラッパーさんのその後を
何枚もの写真と一緒に紹介してくださっていました。

芸術家アリソン・ラッパー
「ハナママゴンの雑記帳」ブログ, 2012/9/2


それによると、あの裸像の石膏取りの際におなかの中にいた息子のパリス君は
現在12歳になったのだとか(誕生日によっては13歳かも)。

子育て中のラッパーさんや、
画家として活動するラッパーさんの姿や作品など、

素敵な写真が沢山あるので、
ぜひ、ハナママゴンさんのブログ・エントリーをご訪問ください。


とても嬉しい発見だったので、
上記12年1月18日のエントリーに書いた以下の個所のコピペと共に、私もエントリーに――。

重症障害児・者を見たことも触ったこともない学者さんたちが
アカデミックな世界で障害のある新生児の中絶や安楽死を議論していることへの疑問から
そういう人たちと「出会う」べく行動を起こしてほしいと、ある人にお願いし、
「見学にいく」のではなく「出会って」ほしいのだと念押ししたのだけれど、

「見学」にいって、フロアで文字通りごろごろしている
いくつもの「ねじれた身体」や「奇妙な身体」を「見て」終わってしまったら、
「自分ならこんな姿になってまで生きたいとは思わない」的な安易な感想に繋がらないとも限らない。

だからこそ、
その中の誰かと触れあい、○○さんという名前を持ち個性を持った人と接し、付き合ううちに、
ねじれた身体が全然問題ではなくなる「○○さんとの出会い」の体験をしてもらいたい。
当ブログでも何度か取り上げてきた英国の神経科医Adrian Owen教授が
BBCの番組Panoramaに出演して、

植物状態とされたカナダの患者が、脳スキャンを使ったやりとりで、
意識があり、苦痛を感じてはいないことを告げた、と報告。

重症の脳損傷を受けた患者が
臨床的に意味の通った情報を医師に提供できたのは初めて。

患者はカナダ、オンタリオ州ロンドンの Scott Routleyさん。

「スコットは意識があり、ちゃんと思考することができていると
我々に示すことができました。

何度かスキャンを行ってきましたが、
彼の脳活動のパターンから、我々の質問に意識的に答えていることは明らかです。

スコットは自分が誰でどこにいるか分かっていると思います」

スコットさんは警察車両との衝突事故を起こして、
Owen教授が介入するまで12年以上の間ずっと植物状態だと考えられてきた。

10年以上担当してきた主治医は、
スキャンの結果でそれまでのアセスメントが全部ふっとんだ、と言い、

「典型的な植物状態の患者の状態だったんですよ。
感情は見られないし、目で物をじっと見ることも物の動きを追うこともなかった。
意味のある自発的な動きも見せたことがなかったので、
fMRIを使えば、こうした認知反応を見せることができたなんて
本当に驚き、感動しました」

Owen教授が研究している脳スキャンによるコミュニケーションとは
患者にテニスをしているところと家でくつろいでいるところを頭に描くよう指示して、
それぞれによって脳の血流パターンが異なるため、
片方をYes, もう一方をNoに振り分けて
Yes –Noの質問に答えてもらう、というもの。

Owen教授はこれまでにも
植物状態とされている患者のほぼ5人に1人には意識がある可能性を指摘してきた。

また、もう一人の交通事故の患者 Steven Grahamさんは
2歳の姪っ子Ceiliを知っているかと問われてYes と答えた。
Ceiliが生まれたのはGrahamさんが事故にあって後のことなので
これによって彼が新たな記憶を形成し残すことができることが明らかとなった。

Panoramaチームは1年以上かけて
カナダのthe Brain and Mind InstituteとケンブリッジのAddenbrooke病院で
Owen教授の研究に参加した植物状態と最少意識い状態の患者さんたちを
撮影してきたという。





以下は、これまで当ブログで拾ってきた回復事例。

【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)






【米国: 可逆的脳死】
臓器摘出直前に“脳死”診断が覆ったケース(2011/7/25)

【米国: Sam Schmidさん】
アリゾナで、またも“脳死”からの回復例(2011/12/24)

【豪:Gloria Cruzさん】
またも“脳死”からの回復事例(豪)(2011/5/13)


【英国: Steven Thorpeさん】
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)

【米: Richard Marshさん】
ロックト・イン症候群からの回復事例(米)(2012/8/9)

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