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5月23日、
自閉症アドボケイトのASAN、Not Dead Yet さらに12の障害者団体が連盟で
ウィスコンシン州の最高裁に「法廷の友」意見書を提出。

ウィスコンシン大学病院(UWHC)が、
障害児者が肺炎など、治療が可能な病気にかかったさいに、
抗生剤や栄養と水分の補給などの治療を差し控えているとして、
2つのケースを中心に、ウィスコンシン州のP&A(障害者の人権擁護システム)が提訴していたもの。

1つのケースでは
13歳の子どもが肺炎で死亡。

日常的なケアを担っている人たちが治療の中止に反対したところ、
UWHCの医師らが家族に同大への転院を勧め、
転院後に抗生剤と栄養と水分を停止し、ホスピス・ケアに移行。
子どもはその翌日に死亡した、とされる。

もう一つのケースでは、成人障害者について
同病院の医師らが家族に抗生剤と栄養と水分の中止を提案し、
その後、治療が拒否された、とされる。

医師らの判断は
障害があることからQOLの低さを根拠にしていると見られ、
いずれのケースでも倫理委員会の承認なしに治療が中止された。

意見書著者のASANの公共政策担当ディレクターのSamantha Crane氏は

We need the court to recognize that people with disabilities shouldn’t be refused care simply because a doctor doesn’t think their lives are worth living.

患者の生は生きるに値しないと医師が思っているからというだけで
障害のある人々が治療を拒否されることはあってはならないと、
裁判所に認識してもらう必要がある。

Often, this sort of judgment serves as cover for discriminatory denials of care.

多いんですよ、こういう判断を隠れ蓑に、差別的な治療拒否が行われていることが。


意見書が主張しているのは、

UWHCのこうした方針は、
全国的に広がっている障害者への医療差別を象徴するものであり、

治療拒否によって命を落とさないよう、弱者を護るためには
法的な保護が必要である。


NDYの会長/CEOのDian Coleman氏は、

The concern that many of us with lifelong severe disabilities have is that children with disabilities are not receiving the same legal protection as nondisabled children.

生まれつき重い障害をもつ我々の多くが懸念しているのは
障害のある子どもたちには障害のない子どもたちと同じ法的保護が与えられていないこと。

A disabled child with parents who prefer to withhold medical care that would save the child, or who succumb to pressure from hospital doctors to withhold care, should not be permitted to deprive their child of a future just because the parents and doctor harbor common prejudices against life with disability.

(英文がちょっとおかしいですが)
障害のある子どもの親の中には、
子どもを救うことができる治療があるのに、
それを差し控えることを選ぶ親や
治療を差し控えなさいと勧める医師らからの圧力に屈してしまう親がいるけれど、
ただ親と医師が障害をもって生きることに対して同じ偏見の持ち主だったからというだけで
子どもから将来を奪うことは許されるべきではない。


この裁判は2009年から続いているもので、
UWHCの医師らの行動が、同州または合衆国の憲法に照らして、患者の権利を侵害した、とする
障害者団体の主張を、事実審裁判所は却下。それがこのたびの上訴となった。

州法では、子どもの命を救うために必要であれば
障害のない子どもの親はその治療を提供しなければならない。
糖尿病を治療せずに子どもを死なせた親に対して
同州最高裁は2013年に殺人罪を認めている。

ウィスコンシン大学といえば、
Norman Fostがブイブイ言わしているところだからなぁ……と、
記事を見た瞬間に思ったんだけれど、

やっぱり……。

最後のところでFostの名前が登場。

UWHCの倫理委員会の委員長として、
この訴訟の被告でもある。

記事では
障害のある子どもたちの権利については
多くの論争で物議をかもす側の立場に立ってきた人物とされ、

挙げられているのは、
障害児者の行動変容のために電気ショックを用いようとする立場と
“アシュリー療法”を支持する立場。

当ブログでは他にもノーマン・フォストの
「物議をかもす立場」からの発言は多々拾っており、
それについては文末にリンク。

その他、意見書に参加している団体は、

ADAPT, American Association of People with Disabilities, American Council of the Blind, Association for Autistic Community, Association of Programs for Rural Independent Living, Autism Women’s Network, National Association of the Deaf, National Council on Independent Living, National Disability Rights Network, Quality Trust for Individuals With Disabilities, United Spinal Association, and the Wisconsin Board for People With Developmental Disabilities.


(記事の末尾に意見書へのリンクもあります)


なんとも象徴的な事件の展開……。

考えてみれば、私は2007年から
アシュリー事件がここに向かっていくことを
予感していたような気がします。

ノーマン・フォストの障害児への、ほとんど嫌悪感に近い蔑視は
アシュリー療法論争のあちこちでも露呈していたし、

2007年段階で彼はすでにコスト論に基づいて
重症障害児への治療停止をめぐる医師の絶対的決定権を主張していましたから。

例えば、ノーマン・フォストは
2007年7月のシアトル子ども病院での小児科生命倫理カンファで、2度に渡って、
極めてラディカルな、コスト論込みの「無益な治療」論を展開しています。
その内容はこちらに ↓
生命倫理カンファレンス(Fost講演 2)(2007/8/25)
Fostのゴーマン全開(2007/9/12)


前者のプレゼンでは

仮に裁判所の判断を仰ぐことなしに、
親の意向に逆らって治療停止をしたら、一体どうなるか。

いまだかつてアメリカの医師が
どんな年齢の患者であれ、どんな治療であれ、
延命治療の停止によってliabilityを問われたことは
民事・刑事いずれにおいても皆無である。

いったん有罪になった訴訟はあるが、最後には覆っている。
末期患者の自殺幇助で有罪となり先ごろ出所した“Doctor Death”ことKevorkianのように、
自ら有罪になろうと必死になった医師ですら、
あれほどの努力と歳月を要したのだ。

要するに病院と医師には大きな自由裁量が与えられているということだ。


後者のパネルでは、

重い障害を持った子どもというのは昔から殺されてきたのだよ。
それが80年代から生命倫理の議論が始まり、倫理委員会というものもできて、
ここまで変わってきたのだ。
今では障害を理由に通常の医療を拒まれる子どもはいない。
しかし、生命倫理が主に子の利益を考えるとしても、
それ以外に家族のこともコストのことも考えなければならない。



その他、Norman Fostの過激な発言の数々はこちらに ↓


英文のまま、Fost関連の元情報を集めたエントリーはこちら ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/52953334.html

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この2つの事例、NRDNの報告書で取り上げられていたものと思われるので、詳細を取りまとめたエントリーを以下にTB。

13歳の少年のケースについては、拙著『死の自己決定権のゆくえ』の第3章でも簡単に報告しています(p.166-167)

2014/5/29(木) 午前 10:10 [ spi*zi*ara2 ]

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自閉症児に大きな声が出なくなるよう手術が行われていたのもウィスコンシン大でした。TB。

2014/6/4(水) 午前 11:34 [ spi*zi*ara2 ]

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その後、この訴訟の上訴判決が出て、DRWが敗訴しているので、以下にTB。

2015/1/16(金) 午前 10:42 [ spi*zi*ara2 ]

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