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豪、ニュー・サウス・ウェールズ大の研究者 Magnolia Cardona-Morrelらのチームが、

高齢者が病院に入院する際に、
30日以内に死ぬ確率の高い患者と、
12週間以内に死ぬ確率の高い患者を
識別するためのチェックリストを考案し、

BMJ Supportive & Palliative Careに論文発表している。

チェックリストのタイトルは
Criteria for Screening and Triaging to Appropriate aLternative Care。

略して、CriSTAL。

識別のための「スクリーニング」だけでなく「トリアージ」も
目的に含まれていることが、このネーミングからも見て取れるし、

その「トリアージ」では
「スクリーニング」で「もうすぐ死ぬ」とされた患者が
「適切な代替ケア」に振り分けられるのだろうことも推測できる。

著者らが112の研究を精査したうえで、
予測要因としてチェックリストに盛り込んだ29の項目とは、例えば、

年齢(65歳以上)、虚弱、疾病、精神障害、過去1年の救急または集中治療室入院歴、
心拍数、血中たんぱく、ナーシングホーム入所者、認知障害、など。

また、このチェックリストが
「入院時の使用」を前提に開発されたというところもポイントのように思われる。

Telegraphの記事の冒頭には、以下の下りがある。

Health experts say the checklist will prevent futile and expensive medical treatment witch merely prolong suffering.

このチェックリストは、単に苦痛を引き伸ばすだけの無益で高価な治療を防ぐ、と医療専門職が言っている。

また、MNTの記事の最後には以下のくだりがある。

By giving families and patients some options about the preferred place of death, CriSTAL could also help prompt the development of more appropriate services than hospital for managing patients at the end of their life, they suggest.

どこを死に場所にしたいかについて家族と患者に一定の選択肢を与えることによって、CriSTALは病院よりも終末期の患者管理により適したサービスの開発を促す可能性がある、と著者らは示唆している。

If the checklist proves accurate in the prediction of death within the next 30 days, a shortened version could be used every hospital admission, they add.

もしも、このチェックリストが30日以内の死を正確に予測できることが証明されれば、短縮版をどの患者の入院時にも使えるだろう、とも著者らは追記している。


さらに論文からの引用箇所を抜いてみると、

“Delaying unavoidable death contributes to unsustainable and escalating healthcare cost, despite aggressive and expensive interventions,” they write. “These interventions may not influence patient outcome; often do not improve the patient’s quality of life; may compromise bereavement outcomes for families; and cause frustration for health professionals.”

積極的に高価な介入にもかかわらず避けがたい死を遅らせることは、医療費を歯止めなく増大させることにつながる。

このような介入は患者の治療結果には影響しない可能性があり、多くの場合で患者のQOLも改善しないし、患者の死後の家族の喪失感にも悪影響をもたらす可能性があり、また医療専門職のフラストレーションの元ともなる。


だから、医療費節減と、患者のQOLと、家族と医療職の心理的負担解消のために、
「どうせもうすぐ死ぬ人」は入院時に選別し、
家にお帰りいただいて(あるいはホスピスケアで)、
どうせ「無益」に決まっている積極的な治療はなしで
「尊厳死」をしてもらいましょう……。

そういう主張に聞こえる。

Telegraphの記事によると、
当ブログでも追いかけてきたように、英国では
本来の丁寧な看取りケアのための手引きだったリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が
現場で「鎮静と脱水で死なせるための機械的な手順書」と堕してしまったことから
LCPの使用が中止され、

the Health Select CommitteeがLCP後の緩和・終末期ケアを調査しているところだが、
現在LCPに替わるものがないために、
死にゆく患者へのケアが病院ごとに大きくばらついている、と

この記事が書かれる直前に
ケアの質コミッションの関係者から警告があったばかりだとのこと。

しかし、本来は丁寧な看取りのための手順書だったはずのLCPですら、
あっという間に思考停止のチェックリストと化したというのに、
その教訓が生かされるどころか、

今度はこんなにもあからさまな「チェックリスト」が
最初から堂々と提案されてくる。

「無益な治療」論が、結局ここへ行き着いていくのだろうことは、
だいたい想像はついてはいたし、

「無益な治療」論については、前のブログから追いかけながら、
これらの変質を警告し続けてきたけれど、

改めて、「無益な治療」論とは、
すでにして紛れもない「無益な患者」論であり、
「患者の自己決定権」を否定する「医療の決定権」論なのだと、
しかも、その変質は、そうした正体を隠そうともしない段階に至ってきたのだと痛感する。

「無益な治療」論とは、もともとは、固有の患者さんの固有の状況と症状に即して、
その患者さんにとって甲斐のない治療で無駄に苦しめることは止めよう、という
個別具体の丁寧な医療判断を指向した理念だったはず。

それが、いつのまにか、
「どうせ○○になったら治療は無益」と病名や年齢で線引きをする、
一括の切捨て論になり、医療の判断ではなく、医療経済の判断に変質している。

そのことの矛盾と危険性について、Telegraphの記事では、
Age UKという高齢者チャリティのディレクターが以下のように述べている。

The ability to accurately identify people entering hospital who are nearing the end of their lives out to help ensure they receive high quality care, appropriate to their needs, so we welcome this development. However, in practice, access to good end of life care services remains extremely variable and discussions with older people and their families about this most difficult of subjects are not always handled sensitively and well.

入院してくる人の誰が人生の終わりに近づきつつあるのかを正確に特定することができれば、患者が自分のニーズに適した良質なケアを受けることが保障されるので、我々としては今回の(チェックリストの)開発を歓迎します。しかし、現場では、終末期医療サービスへのアクセスそのものに極めて大きなバラつきが依然としてありますし、この最も難しい話題をめぐる高齢者やその家族との話し合いが必ずしも繊細な配慮をもって適切に行われているわけでもありません。

So as well as improved analysis and triage of people’s needs, better training and support for medical staff in speaking compassionately with older people and their families about end of life care is also required.

したがって、患者のニーズの分析とトリアージが改善されていくだけでなく、終末期ケアについて高齢者やその家族と温かい共感を持って話ができるよう、医療スタッフへの研修と支援が改善されていくことも必要です。


LCPの実態報告書でも、最大の問題として指摘されていたのは
医療職の患者や家族に対する共感の姿勢の欠落と劣悪なコミュニケーションだった。






LCPの報告書については、シノドスにとりまとめています ↓

『どうせ高齢者』意識が終末期ケアにもたらすもの―英国のLCP報告書を読む』
http://synodos.jp/welfare/6606

その他、関連エントリーはこちらにリンク一覧 ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara2/63823809.html

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