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6月3日に米国でワーナーから公開される
四肢麻痺男性の恋と医師幇助自殺を描くハリウッド映画 Me Before Youをめぐって、
障害のある人たちの間から「ステレオタイプで描かれている」
「障害のある生を生きるに価しないとみなす価値観の肯定」など
批判が続出しています。

舞台は英国。

バイク事故で四肢マヒとなって医師幇助自殺を決心しているお金持ちの銀行マン、ウィル。

両親の説得で6カ月だけ生きると約束し、その間に、
両親が雇った若い女性介護人と恋に陥る、というラブストーリー。

雇われたのは、特に人生に目的意識もなく、
家族を養うために職を転々としてきた貧しいルイーザ。

彼女はウィルに生きる希望を持ってもらおうと様々に努力し、
ウィルも生きる喜びを再発見していくようにも見えるが、
最後には、ウィルは四肢マヒのまま生きる人生よりも死を選択。

そしてルイーザはウィルとの出会いによって
自分の人生に感謝しつつ生きられるように……。


映画の公式サイトはこちら ↓
http://mebeforeyoumovie.com/#/

予告編はこちら ↓
https://www.youtube.com/watch?v=T0MmkG_nG1U

原作小説はこちら ↓
(うげっ。日本のアマゾンでもベストセラーに……)
http://www.amazon.co.jp/Before-You-Jojo-Moyes/dp/0718157834?ie=UTF8&*Version*=1&*entries*=0


障害のある作家が書いたSALONの批判記事 ↓

The movie’s tagline is: “Live Boldly. Live Well. Just Live.” Yet, Will does quite the opposite. The entire premise rests on the belief that life with a disability is not worth living. In spite of each of the characters in Will’s life trying to persuade him otherwise, the fact remains that Moyes imagines a world in which disability is synonymous with misery and assisted suicide is the only solution. And in the book, amidst all this drama, Will never narrates. He speaks, but in so many ways, is voiceless. Everyone discusses him ― to his face, behind his back ― as though he isn’t there.

映画のキャッチは「思い切って生きよう、十分に生きよう、とにかく生きよう」となっているけど、
主人公の行為はその反対で、全編を通じて障害のある生は生きるに値しないとの前提があり、

原著者の想像力が描くのは
「障害とは悲惨と同意で、自殺幇助が唯一の解決策」という世界。

原著では、ドラマの展開の中でウィルは決して自分で物語るということをしない。
彼も物は言っているが、多くの意味で、声を持たないのだ。
そこでは、他のみんなが、あたかも本人がそこにいないかのように
面と向かって、あるいは背後で、彼のことをあれこれと論じているのだ。


Spare me, “Me Before You”: Hollywood’s new tearjerker is built on tired and damaging disability stereotypes
Emily Ladau
SALON, May 25, 2016


その他、記事は多数。

The message of the film is that disability is tragedy and disabled people are better off dead," Ellen Clifford, a disability activist and member of Not Dead Yet, an organization against assisted suicide, said in an interview with BuzzFeed. "It comes from a dominant narrative carried by society and the mainstream media that says it is a terrible thing to be disabled.

Not Dead Yet のEllen Cliffordの発言。

”本作のメッセージは、障害は悲劇であり、障害のある人は死んだほうがマシ、というものである。
社会と主流メディアに根強い、障害があるのは悲惨なことだというナラティブからきている"

https://mic.com/articles/144503/me-before-you-is-drawing-criticism-for-its-representation-of-disability#.XZMfP2LKr


“To paint a movie with such a tragic outcome as a love story and the choice of assisted suicide as rational … reinforces the stereotype that disabled people have such awful lives that death is preferable," actor/writer Mik Scarlet told Upworthy. "My life turned out to be more amazingly wonderful than any of my non-disabled friends might have dreamed of, let alone a paralyzed wheelchair user. Where is that story?"


障害のある俳優であり作家 Mik Scarletの発言。

「このような悲劇的な結末の映画をラブ・ストーリーとして描き、
自殺幇助という選択を理にかなったものと描くのは……
障害のある人は悲惨な人生を送っており、死んだほうがマシだという
ステレオタイプな思い込みを強化するもの」

「私の人生は、単に麻痺した車椅子ユーザーというだけではなく、
障害のない、どの友人が夢に見たことがあるより素晴らしいものとなったけど、
そういう物語はどこにあるというのだ?」

http://www.upworthy.com/a-hollywood-film-about-disability-has-a-lot-of-people-feeling-left-out




【28日追記】

We are of course keen for disabled storylines to enter mainstream culture, but Me Before You is misleading and inaccurate. It spreads jarring messages about life as a disabled person to the public. With its fatal ending, Hollywood is again telling people like me that it’s better to choose death than live as a disabled person. It’s saying my life isn’t worth it.

もちろん、障害者の物語がメインストリームの文化で描かれることは我々の望みではあるが、
Me Before Youは、ミスリーディングで不正確である。

この映画は、障害のある人の生について世の中に誤ったメッセージを広げる。

障害のある人が死を選ぶという結末によって、
ハリウッドはまたしても私のような障害のある人々に向けて、
障害のある人として生きるより死を選択する方が良い、と言っている。

つまり、私の人生は生きるに値しない、と。


The representation of life as a disabled person in Me Before You is a blurred reflection of the truth. Director Thea Sharrock said that she wanted to avoid portraying the realities of living with a disability in the film, such as being hoisted into a bath or being helped to clean, because she wanted to make Will’s disability “more normal”. In doing so, she strips the character and film of any real meaning.

Sharrock is right that disability needs to be normalised, but that will only happen when people like her stop leaving my reality on the cutting room floor.


Me Befere You での障害者の描き方は、実際のありようをぼかしている。

Thea Sharrock監督は、
たとえば、バスタブに抱えて運ばれるとか、体を洗ってもらうとか。
障害と共に生活する現実をありのままに描くことを避けたかったと語っている。

それによって監督は主人公ウィルの障害を「よりノーマル」なものにしたかったというが、
結果的には、主人公のキャラクターからも映画からもリアルな意味がはく奪されてしまった。

障害がノーマルであたりまえのものとなる必要があるというのは
Sharrockの言うとおりだが、

それが実現するのは、
彼女のような人たちが映画の編集室に私の現実を置き去りにするのを止めた時だ。


Advertising disability as a fate worse than death is offensive and damaging. It’s damaging for the young people with disabilities who are watching this film. It’s damaging to the public perception of disability. It’s damaging to us – to how we live and to our aspirations for the future.


障害を死よりも悲惨な運命として宣伝するのは腹立たしく、また有害である。

この映画を見ている障害のある若者に対して有害であり、
社会の人々の障害に対する受け止め方に対して有害であり、

そして、障害のある我々にとっても、
どのように生きるか、将来にどのような希望を持つか、という点で、有害である。


Me Before You makes having a disability seem worse than death
Independent, May 28, 2016



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閉じる コメント(25)

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> tu_*a*さん

いえいえ。パワーが低下していて、すみません。

最近ツイッターをとんとご無沙汰しているのですが、リボーさん、懐かしい。よろしくお伝えください。

2016/5/28(土) 午後 8:46 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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> tu_*a*さん

いくつもの記事を読んで、批判の論点を分析し、要約して紹介、という作業に立ち向かう気力体力知力がなくて、拾った断片をとりあえず、ざっと訳してみました。

いつぞやの日本の映画で「涙活」プロモがあったように、こちらも「泣けます」が売り文句になっているみたいで、散々作られてきた、安っぽいお涙頂戴ものがまた…という「感動ポルノ」批判が中心ですけど、

映画プロモのツイッターを障害者運動がのっとって閉鎖に追い込んだという話もあり、それほどの批判の背景には、PASの合法化の広がりやカナダでは安楽死が合法化される直前でもあり、単にステレオタイプを広げ強化するではすまない「有害」さへの、切迫した危機感があるのだと思います。

日本でもリアルな危惧ですね。

2016/5/28(土) 午後 10:48 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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このブログ、もっといろんな人に読んで欲しいですね。

2016/5/29(日) 午前 5:03 [ tu_*a* ] 返信する

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たびたびごめんなさい。まとめて書けばよかったのですが。

これ、「『Me Before You(原題)』は6月3日に米劇場公開される」ってことだったんですね。
http://getnews.jp/archives/1436980 から

2016/5/29(日) 午前 5:18 [ tu_*a* ] 返信する

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> tu_*a*さん

いろいろ、肝心な情報が漏れたりズレてて、すみません。訂正しました。ありがとうございました。

2016/5/29(日) 午前 8:16 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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お久しぶりです。この映画悩ましいですね。

原作の日本語訳が昨年2月集英社文庫として出ている模様。
http://goo.gl/jdN0xt

アメリカのamazonでは原作本に対して、星一つの酷評は全体のレビューの2%と少数派ですが、それでもかなりの人が酷評を寄せていました。陳腐な感動ポルノとして批判するものと、障害当事者・その家族らから抗議のコメントの両方。「これ頸損が理由じゃなくて鬱状態で自殺する訳だから要するに普通の自殺。それを美化してるんだからとんでもない」というような意見には「そうだよね」と思いました。
https://goo.gl/CVzZpW

2016/6/2(木) 午後 6:00 [ Ackkie ] 返信する

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原作著者・映画脚本のJojo Moyesが、2013年のインタビューでPASに関する質問を受けこんな無責任な回答をしているのを発見しました
https://is.gd/ZqUNQg
(次のコメントに続く)

2016/6/3(金) 午前 9:44 [ Ackkie ] 返信する

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(続き)
質問
In last November’s election voters in Massachusetts defeated the “Death with Dignity” Initiative, which would have allowed terminally ill patients to be given lethal drugs. Did you have an opinion about assisted suicide before you wrote Me Before You? Did it change after finishing Me Before You?

(コメント欄の文字制限が500字以内なのでさらに続きます)

2016/6/3(金) 午前 9:47 [ Ackkie ] 返信する

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(続き)
Moyesの答え
I didn’t have an opinion and to some extent I still don’t. I’d like to think that if it happened to me I could be graceful about it and find a new purpose, like Christopher Reeve, but I’m also conscious that I could end up horribly bitter. The Christopher Reeve Foundation reached out to me and has been extremely supportive of Me Before You. I think the one thing I do believe is that we shouldn’t judge someone else if we haven’t stood in their shoes.

2016/6/3(金) 午前 10:07 [ Ackkie ] 返信する

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連投失礼。全米封切りに合わせ障害者団体Not Dead Yetが各地の映画館前で配布するチラシを発見
http://notdeadyet.org/wp-content/uploads/2016/05/Me-Before-You-flyer-Color-national-final.pdf
また同団体のFacebookページにはフォロワーからの「『ミリオンダラー・ベイビー』のときと同じ問題だ」と当然の反応が。

日本の障害者団体にPASの問題に敏感なところが少ないのはつくづく問題です。

2016/6/3(金) 午前 10:23 [ Ackkie ] 返信する

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幾度も連投ごめんなさい。
ワーナー映画社とプロデューサー宛のオンライン抗議署名サイトが立ち上がっています
http://www.citizengo.org/en/lf/34858-new-film-spreads-message-disabled-lives-are-not-worth-living-we-say-they-are?tc=fb&tcid=23080388

2016/6/3(金) 午前 10:35 [ Ackkie ] 返信する

> Ackkieさん
いろいろありがとうございます。明日、某学会のシンポにでるため、出かけており、スマホからでは思うように書けないのですが、本当におっしゃる通りと強く賛同しつつ、感謝しております。

2016/6/3(金) 午後 0:21 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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6月2日(全米公開前日)付けのNot Dead Yetのプレスリリースです。
とても良い内容。

NDY Press Release: Advocates Protest Disability Snuff Film “Me Before You”
http://notdeadyet.org/2016/06/ndy-press-release-advocates-protest-disability-snuff-film-me-before-you.html

2016/6/4(土) 午後 8:37 [ Ackkie ] 返信する

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主人公のウィルとほぼ同様の四肢麻痺になって13年のダン・ハーヴェイさんが、この映画について原作の引用をしながら語るYouTube動画とても良い内容でした。PASの肯定・美化といったことに留まらず、具体的な誤認のひとつひとつ、男らしさということについての偏見など様々の大事な点についても触れてくれています。
https://youtu.be/Z9bkWJtm-mU

2016/6/5(日) 午前 0:22 [ Ackkie ] 返信する

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追記:
上のDan Harveyさんの動画で、彼はこのDignitasで自殺するというプロットに例のDaniel James事件等の影響を指摘し、Jojo Moyesよりもそのような近年の社会背景の方に批判を向けています。大切な視点だと思いました。

2016/6/5(日) 午前 6:23 [ Ackkie ] 返信する

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> Ackkieさん

詳細なその後を追いかけてくださって、ありがとうございます。私も、こういうメディアの動きは安楽死やPAS合法化のうねりと無縁ではないと考えており、実際に米国で自殺件数が急増しているとのデータも出ていたと思うので、そういう空気の中で、この論争がどのように展開していくのか、気になりますね。

まだ拾ってくださった情報を読めていないのですが、昨日出張から帰って来てとりあえずチェックした受信メールに、映画監督の反論(差別した人はみんな「誤解だ」と同じことを言いますね)があったので、こちらもまだ読めていないままでが、取り急ぎ、メモのみ。

http://www.people.com/article/me-before-you-disability-controversy-director-thea-sharrock-responds

2016/6/6(月) 午前 9:35 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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ありがとうございます。Sharrock監督の弁解はナンセンスですね。併記されているSarah-Janeさんというブロガーの擁護論も。

さて、先週末のRochester,NYでのモール前の抗議行動をABC系列のテレビ局WHAMが伝えています(動画+文字起こし)
http://13wham.com/news/top-stories/disability-rights-advocates-protest-me-before-you-film
この報道で問題なのは、最後のNY州でPAS法支持運動をしているSusan Rahnというがん患者に、PASは末期がん患者には必要だが障害者には不必要という意見を語らせそれを結論としていることです。
うーん、こういう展開になるか!と嘆息しています。

2016/6/6(月) 午後 6:05 [ Ackkie ] 返信する

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> Ackkieさん

Ackkieさんに全然ついていけていないので恐縮するばかりですが、NY州はヤバイ空気になってきていますね。「生きたい障害者に死ねとは誰も言っていない」みたいな恫喝的なことを推進派はすぐに言いますけど、カナダでも法整備前に特例的に安楽死を認められている人たちは必ずしも終末期ではなく、神経筋肉疾患の人たちが多数含まれていますし、

そもそも、この映画の主人公が終末期の人じゃなくて重症障害者なんだから、この映画への批判をそこへ落とされたのでは、話を捩れさせるのもいいかげんにしてほしい、と言いたいところですよね。

2016/6/6(月) 午後 8:59 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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既にブログなどで取り上げておられる件でしたらおゆるしください。

Million Dollar Babyや今回のもの以外でPASを扱った映画に、2004年にアカデミー外国語映画賞他多くの賞を取った「海を飛ぶ夢(Mar adentro/The Sea Inside)」
https://is.gd/yfYzdO
があるのですね。有名な作品とのことですが知りませんでした。

この映画をめぐって起きた論争について英語で読める記事のリンクを二つほど:

Film reopens euthanasia debate in Spain
Gonzalo Casino
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC521636/

BBC News: Sea Inside's death debate
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/4257497.stm

映画って本当に怖いですね。

2016/6/6(月) 午後 10:31 [ Ackkie ] 返信する

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> Ackkieさん

おはようございます。ありがとうございます。映画はほんと、こわいですよね。すっごく簡単に世論形成がされてしまう。

「海を飛ぶ夢」は、ずっと気にかかってはいて、もう長いことアマゾンのリストにDVDが居座ったままになっているんですけど、個人が「見ておかねば」で買うにはあまりに値段が高いのと、イマイチ進んで見たいわけでもない、むしろ見るには気が重いのとで、なかなかカートに移動させる思い切りがつかず……。

このところ「できれば見たくない。知りたくない。楽しいことだけ考えて余生を送りたい」という逃避傾向が強くなってきているので、Ackkieさんの問題意識と行動力に目を見張りつつ、脱帽、敬服しきりです。

2016/6/7(火) 午前 9:23 [ spi*zi*ara2 ] 返信する

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