どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち!?

八ッ場ダムを中心としたダム・河川の話(工学、法律、歴史)。なお、緑色がリンクです。

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 昨日の「使わない水に64億円? Ⅰ」の続きです。


 思川開発事業は、東京がオリンピック渇水と称された大渇水(1964)に見舞われた中、計画されたものでした。集水面積がわずか12.4k㎡の南摩ダムではダム湖の水がたまらないため、水量豊富な大谷川(鬼怒川水系)から水を導水するというものでした。導水距離は20kmになります。
 当初計画では、総貯水量は約2倍の10,100万㎥であり、開発水量は5倍以上の17㎥/秒でした。これが、計画変更のたびに縮小していきます。
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 このように、当初①17㎥/秒で始まった計画は、②8.6㎥/秒→③3.202㎥/秒→④2.984㎥/秒と、現在では当初計画と比べて、その開発水量は18%まで落ち込みました。つまり、それだけ水余りが進行しているわけです。
 ちなみに、南摩ダムは①洪水調節、②利水(新規利水、不特定利水、渇水)を目的とする多目的ダムですが、洪水調節のためのダム用量は小さく、利水容量が中心です。

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 当初計画の18%にまで減少した開発水量ですが、その開発水量2.984㎥/秒(総計449億円)の内訳を見てみると、下記の通りです。これだけの自治体が思川開発事業に参加し、ダム使用権の対価として事業費を支出しています。
 (注) 事業費比率は、総事業費1,850億円に対する比率です。

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 栃木県の開発水量は、0.403㎥/秒で、この開発水量の対価は64億円、計画上は栃木県南部の市町村に配水するための水利権として申請されています(正確には、水利権の裏打ちとなるダム使用権の対価です)。
 2006年の計画変更で、南摩ダムの新規開発水量は3.202㎥/秒から2.984㎥/秒に縮小されました。縮小分は0.218㎥/秒ですが、他の申請主体の申請水量に変化はなく、栃木県の申請水量が減少した形です。
 正確に言えば、それまで栃木県から給水を受ける形だった鹿沼市が独自に水道事業を展開するものとして、新たに水利権者になりました(0.2㎥/秒)
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(注)石橋町と国分寺町は合併して下野市になった。


 002年計画では、栃木県の申請水量は0.821㎥/秒であり、その対価は86億円でした。このうち、縮小分が0.218㎥/秒、鹿沼市が独自に事業を行うことになった分が0.2㎥/秒であり、
 0.821−0.218−0.2=0.403
というわけです。
 新たに設定された栃木県の申請水量は、このようにして0.403㎥/秒となった訳ですが、64億円もの対価を支払う開発水量であるのに、実際の水道事業計画は存在しませんでした。
 この点が、今回(2012.6.29)の「検討の場」で問題となった訳ですが、この点は今回初めて判明した話ではありません。思川開発事業をめぐっては、2004年から住民訴訟が提訴されていますが(訴状2004.11.9)、その訴訟の中で原告が既に指摘してます。

 県南部2市6町に配水するはずの栃木県の水道事業ですが、64億円の対価を支払っているのに、水道事業は存在しません。これは原告団が情報公開請求で確認していることで、裁判所には甲C67号証として提出されています(2008.12.12)。
 内容は、栃木県が県南部を配水地域として南摩ダムにダム使用権を求めた広域水道事業の情報公開請求を求めたところ、事業が存在しないから、計画文書が不存在であり、そのため公開請求に対する回答は非開示決定になりました。この点は、2008年12月18日提出の第20準備書面p8に述べられています。
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 このように、2008年段階では既に栃木県はダム事業に参画したものの、実際の必要性はない(本当に必要な開発水量なら、水道事業の事業計画が存在しないはずはない)ことがわかっていました。
 しかし、未だ栃木県はダム事業から撤退しません。全く無駄な64億円の投資です。しかも、特ダム法ではダム使用権を撤回するルールが整備されています。これを行政の不作為といわずして、なんというのでしょうか。


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