どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち!?

八ッ場ダムを中心としたダム・河川の話(工学、法律、歴史)。なお、緑色がリンクです。

八ッ場ダム関係資料

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 前回は、「遺跡保存の話」でした。
 シンポジウム(2012.9.22)のもう1つのテーマであった、ダム建設予定地の危険性(地質・地すべり問題)の動画につき、編集が終わったようなので、お知らせします。

その1



その2



その3



その4



その5



 続きです。
 八ッ場ダム住民訴訟は、ダム反対運動の一環として選び取られた戦術の1つですから、ダム建設を止めるため、ダム事業費の支出差止めが中心となっています。
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 細かく言えば、訴訟上請求されているテーマは上記のように多岐にわたるわけですが、中心はダム事業費の差し止め請求です。そして、差し止め請求において中心争点となっているのも、治水・利水上の公金支出の必要性でした。具体的に法的根拠として言えば、

 ・治水上の請求(公金支出)
→河川法63条1項
本来、国が全額負担(河川法59条)すべきだが、ダム建設により、下流都県に「著しい利益」があることを根拠に国が費用負担を請求しているが、「著しい利益」は存在しない以上、請求は違法で、従って支出も違法である。

 ・利水上の請求(公金支出)
→特ダム法12条ほか
各自治体は、保有水源を増やすために水利権(河川法23条)を申請し、その水利権を満たすために、ダム開発に参加するわけです。具体的には、ダム使用権というものを取得する訳ですが、その対価として支払う支出は違法なのか。

を問うものでした。
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 最重要争点の治水・利水争点を個別に見ると、下記の通りです。
 まず治水でみると、利根川治水計画で本当に八ッ場ダムが必要なのかであり、具体的に言えば、
  • ①八斗島地点22,000㎥/秒という治水計画の想定は、妥当なのか(目標流量の算定は妥当か)。
  • ②仮に、その治水計画が妥当だとしても、八ッ場ダム地点にダムは必要なのか。利根川洪水の特徴から見て、八ッ場ダムは意味があるのか。
というものです。

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 ②について言えば、政府答弁書(2008.6.6)において、カスリン台風洪水の再来において、八ッ場ダムの効果は0であることが示されており、カスリン台風が再来すれば、首都圏に34兆円の被害をもたらすという「宣伝」は、まったくの虚偽宣言であることになります。
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朝日新聞2008.6.11

 もう1つの争点・利水については、過去の水需給を考えれば、なぜダム開発が必要なのかを問うものでした。
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 上に見たような水需給の状況でありながら、東京都を始め、1都5県はダム事業に参加しています。その理由は
  • ①水需要の実績(統計)に反して、突然反転増大するという需要予測は不合理なもので、裁量権の逸脱・濫用にあたり、違法ではないのか。
  • ②各自治体は、a)現状の保有水源、b)将来の渇水時の保有水源を過小評価することにより、本来不要なダム事業に参加することになっているのではないか。
というものです。
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 住民訴訟の争点・概説は以上です。そのうち、今回の続きとして、訴訟上の争点につき、詳説を書きたいと思います。

 12/9の8周年集会は、少し「総括的な集会」になるかもしれません。少し、八ッ場ダム住民訴訟の争点などについて、簡単な概説を書いておきます。

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 上記・写真はダム候補地・吾妻渓谷ですが、この吾妻渓谷をダム湖の下に沈める計画がカスリン台風(1947.9.13)をきっかけにもちあがります。1952年でした。ダム計画はその後、紆余曲折を経て今日に至っており、60年の歴史があります。その経過については、11/18の新聞記事紹介において付録として掲載したので、それを参照願いたいと思います。
 住民訴訟が始まったのは、2004(H16)年の年末、利根川流域1都5県(群馬、栃木、埼玉、東京、千葉、茨木)を相手取り、訴訟が始まりました。このタイミングで訴訟が提起されたのは、ダム事業の基本計画(特にダム法4条1項)が改定され、事業費が4,600億円に増額されたことがきっかけでした。
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  住民訴訟というのは、少し特殊な訴訟制度であり、戦後改革の中でGHQが地方自治法に規定したもの(地方自治法242条の2)です。GHQは、地方自治を「民主主義の学校」と位置づけていましたので、地方自治には、少し特殊な制度も導入したのです。
 模範となったのは、米国にある「納税者訴訟(Tax Payer's Suit)」で、納税者が税金の使い道・管理について物を言うことがいえる制度です。具体的には、住民が地方財政の健全性を確保することを目的に、自治体の財政管理につき、違法を主張することができる訴訟制度です。
 日本の訴訟制度は、具体的な権利侵害を受けた人を救済することを基本的目的とする(主観訴訟)ので、権利侵害の救済を目的としない(客観訴訟)住民訴訟は、少し特殊なんです。
 さて、その住民訴訟で対象とできるのは、自治体財政に関することなので、八ッ場ダム住民訴訟で言えば、八ッ場ダムに関わって支出された税金が「違法」なのかということが、訴訟上の争点になります。
 
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 八ッ場ダムに関わって、財政支出の違法性を問えるテーマはいくつかあり、
  • ①河川法63条に基づき国から請求されている「治水分担金」は違法なのか。
  • ②水利権(河川法23条)を安定化させるために、ダム使用権(特ダム法2条ほか)を申請し、その対価を支払うために利水負担金は違法か。
  • ③ダム計画は、深刻な環境破壊をもたらすのであり、治水・利水上の必要性のないダム計画のために、深刻な環境破壊をおこすことは違法な公金支出ではないか。
  • ④ダム候補地点は、危険な地盤であり、ダム建設に不適切であり(軟弱な地盤、湛水地すべりを起こす危険性)、ダムとしての基本的な資質を満たさない。
というものです。
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 このように、争点は①治水、②利水、③環境、④危険性と多岐にわたるわけですが、訴訟において最重要争点となってきたのは、治水と利水でした。
 

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 11/4のネイチャーウォークの写真、その3です。厳密には、下見に行った10/28の写真だそうです。コメント付きで、写真を頂きました。感謝。写真に誘われるようにして、1人でも多くの方が川原湯温泉・吾妻渓谷に興味を持ってくれたらいいなぁと思います。

【写真17】
川原湯温泉街手前の大沢。この橋の山側には、ちょっと急な沢があり、崖側は結構急な感じで滝のように水が落ちている。この音を聞くと、川原湯に来たな、という感じがする。

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【写真18】
王湯。建物の下に、源泉がある。内湯と露天があり、お湯は内湯のほうがいい気がする。けど露天は空が見えるという良さも。湯かけ祭りは、この王湯の前で行われる。後ろの高田屋さんも柏屋さんも解体してしまったので、寂しくてちょっと寒い感じがする。

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【写真19】
不動大橋(2号橋)からみえる不動の滝。紅葉に色づく不動の滝(写真中央部)。

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【写真20】
同様に、不動大橋から。弱った松の木の枝のくぼみから、別な木が芽を出している。こうやって樹木も世代交代していく。ダム計画は、そうした歩みを全て止めてしまう。

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【写真21】
渓谷の中。こういうの沢がいくつもある。普段水が流れていなくても雨のあとに流れたり、たくさん流れていなくても、なんとなく水の道。

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森林保水力

 昨日(2012.11.13)紹介した記事は、実は「驚きの新事実」ではなく、はっきり言って常識ですよね。しかし、ダム建設にとっては、まことに都合の悪い事実です。
 だから、森林が発達しても洪水対策には役に立たないという理屈を、国は必死になってしてきました。その1つに、2001(H13)年に日本学術会議が出した答申があります。

 この答申で言っているのは、こんな話です(要約)。
  • 確かに、森林が発達することにより土壌浸透力が大きくなるのは事実だが、その効果は中規模洪水までで、治水計画上想定されているような、大規模洪水では、緑のダム効果は発揮されない。だから、脱ダム派がいう「緑のダム効果」は、洪水対策として成り立たない。
というものでした。
 しかし、これは変な話に思います。
 治水計画は戦前は「既往最大洪水主義」といい、それまでに記録された最大洪水に対処することを目標に、計画が立案されていました。だから、過去最高を上回る洪水が来るたびに計画改定を余儀なくされました。利根川もそうでした。
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 しかし、戦後になり、既往最大洪水を対象に治水計画をたてるという方針をやめ、流域の重要性を考え、それに見合う治水安全度を保障するという方向に、治水計画の方針が変わります。制度的には、1958(S33)年に『河川砂防技術基準』という、河川管理のマニュアルが出されますが、そこで採用された方針でした。
 利根川でいうと、1980年の工事実施基本計画から、この方針です。具体的には、治水安全度1/200を目指し、基本高水(治水計画上の想定・目標洪水流量)は、22,000㎥/秒になりました。

【1980年策定】
 工事実施基本計画(旧河川法16条)
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 このように、現在の治水計画は、過去に記録されたことのない洪水を目標・想定洪水を定めるので、その洪水流量を正確に算定することがきわめて重要になるわけですが、最もメジャーな流出解析法である「貯留関数法」では、それがかないません。
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 既往最大洪水を上回るような「大規模洪水」、これが正しく算定できないんです。いくら中規模洪水が正しく算定できても、大規模洪水が正しく算定できなければ意味はないんですが、貯留関数法にはそこに難点があります。

 貯留関数法をはじめとする流出解析では、降雨量のどれだけが土壌に浸透するかがポイントです。
 なぜなら、降雨の土壌浸透が多ければ多いほど、河川流出量が減り、洪水流量は減ります。メジャーな貯留関数法は、浸透域・流出域に二分するモデルですが、貯留関数法では、1度飽和雨量に達し、土壌が降雨を吸収できる限界を超えると、土壌の浸透力は2度と回復することなく、あとは降雨を河川に流出するだけと想定し、そのため、大規模洪水には「緑のダム効果」は発揮されないというわけですが、自然のメカニズムはそうではないことを、蔵治准教授らは立証しました。
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 貯留関数法の中で組み立てたモデルは、飽和雨量を超えると、土壌が降雨を吸収することはなく、後は河川に降雨を垂れ流すだけと想定します。
 しかし、実験結果はそうではなく、400mmを超える雨(飽和雨量を超える雨)であっても、発達した森林は、一定の降雨吸収をするのです。荒廃した森林ではダメですが、発達した森林では、飽和雨量を超えるような大雨でも、土壌吸収力は失われないんです。

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 それを実験結果は示しています。
 日本学術会議(H13答申)は、貯留関数法の想定をドグマ化したものにすぎませんでした。そう思います。
 

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