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なかなか人気があるOVAシリーズのノベライズということになるが、OVAと少し流れが異なる感じの箇所も見受けられる…が、ハッキリ言って私はこの小説版の方が好みだ…
この物語は、士官学校を出て日が浅い、新人士官のシローが最前線で初めて小隊長に任じられ、そこで展開される彼の揺れ動く心や成長や、戦いの顛末というストーリーだ…OVAでは、何か「どうしたものか“アイナ!!”で最後に行方を眩まして…」と何やらよく判らず、「登場するメカと雰囲気が好い…」という程度に終始していた…が、小説版に触れると、なかなか深い物語だと思った…
シローは、少年時代に楽しんでいたアクションドラマに漫然と憧れていたような次元が出発点で、何となく軍人になったが、パイロットとしての適性もあり、決して無能ではない若者だ…戦争が始まり、彼は「コロニーへの毒ガス攻撃」という凄惨な現場に居合わせ、「こういうことをする敵に立ち向かう正義の実現」を胸に任地に向かうことを誓う…
そんな彼は、味方を救援しようとボールで強引に出動し、試作型のザクと戦う…ボールとザクが共に損なわれてしまった中、宇宙艦の残骸の中で敵方のアイナと出会う。互いに撃ち殺すことも出来た状況だったにも拘らず、手を携えて救援を呼ぶ努力をした…この際にシローはアイナの懐中時計を手にする…
と、ここでこの時のアイナを気に掛け、「何時か時計を返しに、彼女に会いに行こう」というような想いを胸に、アイナとは擦れ違いながら…という程度の物語の方が、私は好みなので、以降のシローとアイナの関係を巡るストーリーには、余り入れ込めなかった…
が!!「理想家肌で“裏表”がない、愚かなまでに真っ正直な若者」として描かれるシローが戦争と向き合う様は、何か“ベトナム戦争関係の映画”を思わせるものがあった…小説は劇中人物の背景や想いが、多少くどく描き込めるため、こういう感じを打ち出すという意味で優れていると思う…(逆に言うと、OVAはストーリーが消化不良だったのかもしれない…画は、殊にメカは素晴らしかったのだが…)
キキの村の人々とシロー達…ギニアスとアイナの兄妹や、側近のノリスやジオン軍の面々…シローの上官であるコジマや連邦軍の面々…OVA以上に明確で詳細な性格付けが施され、実に面白い!!
小説版の“キキの村”は“寒い時代”の象徴のような描かれ方をしているように思う…この村を巡って、シローは信じていた“正義”の揺らぎを感じ、自棄的になってしまう…しかし、老兵から「大事な人達を守るのではないのか?」と問われ、何とか戦い抜こうとする…
カレン、サンダース、エレドア、ミケルと言った、シローと行動を共にする第08小隊の面々も、この小説ではなかなか良い。それぞれの背景が語られ、シローという新米の隊長との出会いを通じた彼らの心の動きがなかなか良く描かれている。“手紙”という体裁で、一部に“語り手”的な役も演じるミケルがなかなか魅力的であると思った…
公的には“ギニアスの側近”で、私的には“恩義ある上司の遺児である兄妹の後見人”であるノリス…この人物の描き込みが凄く好きだ!!OVAでは窺い難かった、彼の兄妹への想いや、指揮官たる者の矜持というものが伝わる…シローとの何度かの対決の場面で見せる「武士(もののふ)!!」というムードも好い!!
指揮官たる者の矜持と言えば…作中では「アジア方面に展開するジオン軍の司令官」という位置付けになっているユーリ・ケラーネである。彼は開戦の理想を強く信じ、何とか部下を生かそうと奮闘する…「上に立つ男」として、なかなか魅力的に描かれている…
好感の持てるノリスやユーリが居るからこそ、“悪役”として、狂気を帯びたようなギニアスが、また映えているようにも思った…
上・中・下と3冊もあるが、「1日1冊…」という次元でどんどん読み進められる…実際、私は朝・夕に喫茶店で読了してしまったのだが…
“ガンダム”というものだが…私はメカやその模型なども好きなのだが、“SF戦記”としての「なかなかに深いドラマ性」とでもいうようなものが凄く気に入っている!!そういう趣向の方には、本作をお勧めしておきたい!!
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