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いつか取り上げようと思っていたら、いつの間にか今日になってしまいました。
この98年にリリースされたアルバムについては少し説明を要します。
コピー的には、「50年代のパリに息づいていた、Free Sprit、へのトリビュート」とあり、
「ジャズの名曲が、今を生きるアーティスト達の愛によってよみがえる」とあります。
では、具体的にはどの様な背景、コンセプトでこのアルバムが創られたのかを手短に。
先ずタイトルの意味は、かつて50年代に自由を愛する者の集まるメッカともなっていた、
サンジェルマンに敬意を表し、サンジェルマンに捧げられたジャズ・トリビュート・アルバム
となる訳です。
次になぜジャズなのか?についてですが、(ここは、ライナーノーツより抜粋)
当時ドイツの占領下であったフランスでは、時代の先端をいく多くのアーティスト達や、
知識人などが「サンジェルマン・デ・プレ」に避難場所を求めました。
ここで、彼らの願い、野望、そして情熱を表現するために音楽は不可欠な存在でした。
そこで突き当たった音楽がアメリカからやってきたジャズでした。
ディキシーランド・ジャズに始まり、やがてビーバップ、更にハードバップへと突き進みました。
つまり、ディキシーからモダンへと革命期を辿る時期のジャズは、
ある意味、本国アメリカのニューヨークではなく、フランスのパリ、サンジェルマンで
その完熟を果たしたとも云えます。
前置きが長くなってしまいましたが、
この様にサンジェルマンで昇華された「フレンチ・ジャズ・スピリット」なるもの、
即ち、フリーでヒッピーなパワーを持つジャズをトリビュートするべく、
フランスを中心に活躍する著名なアーティスト達が集結し、創り出した答えが
このアルバムの中に、目一杯凝縮されています。
その上、フランスでしか、このメンバーでしか創り得ぬ、そんなオンリーワンな存在感が満載です。
曲の解説に移ります。
01)「Summertime」 by アンジェリック・キジョ
あまりにも著名なスタンダード・ナンバー。
ここでは彼女の存在感一杯の声から発せられる、ハミングから始まります。
コーラス、パッド、パーカッションというシンプルなアレンジをバックに、
母国ペナンのペニー語で唱われ、ニグロ・フォークのルーツともいわれるペナンのテイストと、
パリ・エスノのモダンテイストが見事にミックスされています。
02)「Les Joyeux Bouchers/The Happy Butchers」
by キャサリン・リンガー&ザ・レネゲイド・ブラス・バンド
当時のサンジェルマンの地下バーで演奏されているようなイメージです。
シャンソンの名曲ですが、ディキシー且つモダンなテイストが加味されたナンバーです。
けだるくも、勢いのあるキャサリンのヴォーカルが強い印象を残します。
03)「Lover Man」by CHINA
ビリー・ホリデイで有名なブルージーなバラード・ナンバー。
ピアノ・トリオをバックに、けだるく唱うCHAINA。彼女は次の曲に参加している大御所、
ディー・ディー・ブリッジウォーターの愛娘でもあり、フランス在住の彼女は、
97年、18才にしてソロデビューを果たしています。
それにしてもこの唄い方は、本当に20才前か!
04)「Watermelon Man」by ディー・ディー・ブリッジウォーター
ハービー・ハンコックの名曲。
ジャジーでありながらファンキーなキーボードをバックに、自然なフェイクを始め、
その流石の唱いぶりと存在感は強烈でもあります。
05)「I'll Be Seeing You」by フランソワーズ・アルディ&イギー・ポップ
これも有名スタンダード・ナンバーですが、驚くのはこの組み合わせです。
かたや、クール・テイストなフランソワーズ・アルディ、
一方は、パンク創始者でありカリスマ・ロッカーのイギー・ポップ。
ところがどっこいです。ゆったりとした4ビートをバックに唱うイギーの歌声は、
何と実に甘く、せつないではありませんか!素晴らしいデュオに仕立てられています。
06)「II N'Y A Plus D'Apres/There Is No More Tomorrow」
by ザ・ジャズ・パッセンジャーズ with デボラ・ハリー
ジュリエット・グレコの名唱でお馴染みのナンバー。
このバンドはニューヨークで活躍する、アバンギャルドなセクステット。
間奏でのトロンボーンとサックスのかけ合いではそんな雰囲気を堪能出来ます。
片やデボラですが、その独自の持ち味とは別の側面を聴かせてくれます。
07)「La Javanaise」by ジャッキー・テラソン
セルジュ・ゲーンスブールの作品。
パリ在住のジャッキーは、バド・パウエルの再来とまで云われた、90年代の新星ピアニスト。
95年にはワールド・ワイド・デビューを果たしており、その後カサンドラ・ウィルソンなど、
多くのセッションも行っています。
4ビートジャズを基調としながらも、全体にカリプソ・ビートをあしらっています。
ピアノ+ウッドベースのみですが、グイグイと引き込まれます。
08)「Black Coffee」by パトリシア・カース
ペギ・リーの代表曲。
いわゆる王道のジャズアレンジをベースに、ギター、ミュートトランペットなどが、
アバンギャルドなオブリを聴かせてくれます。
ここでのパトリシアは語りかけるような歌声を聴かせてくれ、何とも云えぬ大人の色香をも
十分に感じさせてくれます。
09)「God Bless The Child」by プリンセス・エリカ
ビリー・ホリデイでお馴染みの曲。
プリンセス・・・何か日本にもいるような?・・・ですが、小生は初めて知りました。
カメルーンからフランスに移住、レゲエに目覚めた後、88年にデビュー。
92年にファーストアルバムをリリース、社会問題や差別などもテーマとし、ダブ、ファンク、
そしてカメルーン・ミュージックを織り交ぜた、新しいフランス・ポップスを構築。
ここでは、そんなサウンドをバックに、彼女の実に伸びやかで翳りのないヴォーカルが
堪能出来ます。
10)「Autour De Minuit/'Round Midnight」by レ・ニュビアン
レ・ニュビアンとは(ここでも小生初めて知りました)エレーヌとセリアの姉妹ユニット。
ウッド・ベースとパーカッションのみをバックに、透明感漂う歌声とコーラスが
実に心地良いです。気持ち、ニューヨーク・ヴォイセスに通じるところも感じます。
全体はオルタナティブ&アシッドジャズ・テイストが溢れています。
そういえば、原曲の面影は殆どありません。
11)「These Foolish Things」by ジェーン・バーキン with ジミー・ロウルズ
お馴染みのスタンダード・ナンバーですが、これが素晴らしい仕上がりになっています。
この二人の共演は、90年封切りの映画の中で実際に共演したものの再演となります。
ジミーのピアノをバックに唱う、恋多き女、ジェーン・バーキン。
ささやくような、語りかけるかのようなその歌声は正にジェーン・ワールドそのものです。
見事なまでに、引き込まれていきます。
尚、途中から参加するジミーの何とも渋い歌声、これぞ大人のデュオではないでしょうか。
12)「La Caranane/The Caravan」by ブリジット・フォンテーヌ
ヴェンチャーズや寺内タケシでも有名な曲・・・古いか・・・
ここでは、ブリジットの語りかけるようなヴォーカルとアシッドジャズテイストが組み合わされ、
見事なまで、パーフェクトなブリジット・ワールドに浸りきれます。
且つ、シュール&アバンギャルドな雰囲気も溢れています。
13)「Sophisticated Lady」by エリ・メデイロス
デューク・エリントンの名作。
エリ・メデイロスもここで初めて知りました。
ただ、彼女のデビューは古く、76年のパンクムーブメント時代。
以降はテクノ&エレクトロニック・ポップスに変身し、ヨーロッパ全域で人気を博しました。
しかし、その声は何ともアンニュイな可愛らしい声を聴かせてくれます。
14)「J'Suis Snob/I'm A Snob」by ポリス・ヴィアン
最後を飾るのは、このアルバムのコンセプトとなるようなアーティスト、
39才という余りにも若くしてこの世を去った、天才アーティスト、ポリス・ヴィアンです。
このスペシャルとも云えるトラックは、ポリスが54年に行ったリハーサル・レコーディングの
そのものズバリのトラックです。
但し、途中から歌詞を忘れ、そこからフェイドアウトという、1分にも満たないトラックです。
しかし、これこそがフランス人たる所以でしょう、日本人プロデューサーであれば
このような考えは到底考えつきません。
この様なアルバムですが、聴かれてない音楽ファンの方々には超オススメです。
実は、相当な名盤とも思っています。
そう、ジャケットにもエスプリなどを感じます。
〜END〜
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