月読通信

1年近く放置すると、帰ってき難いねぇ^^;

本楽大学SF学部

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 おお、本の感想記事を三つ連続で書くとは、近年まれに見る快挙!(爆)

 とまで言うと大袈裟ですが、仕事が一段落して、鼻炎もとりあえず治まって、インフルエンザの予防接種も済ませて、まぁちょっとした「小康状態」にあるおかげで、比較的落ち着いて本が読めているので^^

 ……前置きはさておき、読んだのは、三崎亜記『鼓笛隊の襲来』です。三崎作品は、話題になったデビュー作『となり町戦争』を文庫化の際に読んで以来、二冊目です。実は、『となり町戦争』を読んだ時にも、記事を書こうと思ったのです。とてもとても面白かったので。なのに、書き始めようとしたら、意外と筆が進まず……。結局、その記事は冒頭三行ほどで止まったままになってしまいました。

 そんなこともあってか、評判になった『バスジャック』も『失われた町』も読まずにきてしまったのですが、たまたま図書館で本書を見かけたので、手に取ってみたのです。で、まずそのタイトルに惹かれ、

 (なんで「鼓笛隊」が「襲来」するんだよ!?)

 装幀に惹かれ、

 (こういうデザイン、好きだなぁ)

 さらに「短編集」であるということに惹かれ、

 (『となり町戦争』も、基本的には短編に向いたネタだよね)

 『一瞬の風になれ』の1巻とともに借りてきたという次第^^

 ともあれ、本書は短編集です。表題作を含め、9編の短編が収められています。収録作品は以下の通り。

 鼓笛隊の襲来
 彼女の痕跡展
 覆面社員
 象さんすべり台のある街
 ボタン(突起型選択装置)
 「欠陥」住宅
 遠距離・恋愛
 校庭
 同じ夜空を見上げて

 結論として、とても面白かったです。久しぶりに、「短編集らしい」短編集を読ませてもらいました。かつてSFに耽溺していた頃、フレドリック・ブラウンや、星新一、筒井康隆、草上仁などの短編集をむさぼるように読んでいた時の感覚が、ちょっとだけよみがえりました。
 もちろん、三崎作品はいわゆるSFではありません(そうしたテイストはところどころに感じられますが)。でも、読者をして「ああ!」とか「確かに!」と思わせるような隙の突き方、ワン・アイディアを過不足なく展開し、余韻を残す手際は、素晴らしいと思います。それは、私にとっての「SF的感覚」に非常に近いものなのです。

 それになにより、タイトルが秀逸です^^ 特に、前半5編は、もうどれを取っても読まずにはいられない気にさせてくれます。

 さらに、書き出しがいい。スプリントはスタートダッシュが大切ですが、その点でも、三崎亜記は優れた手腕を発揮しています。

 赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。            「鼓笛隊の襲来」

 もうね、この書き出しを読んで、続きを読まずにいられますか??ってなもんです(笑)

 それぞれの作品については、前述したように「ワン・アイディア」が勝負なので、敢えて内容には触れないでおきます。ただ、個人的な好みとしては、「鼓笛隊の襲来」「覆面社員」「象さんすべり台のある街」「「欠陥」住宅」が気に入りましたね〜^^

 あぁ、こんな記事では未読の方には参考にならないかもしれませんが、でも大丈夫! 間違いなく面白いですから♪ ぜひ、静かで淡々としていて、今ある私たちの日常とフラットにつながっているような気がするのに、いつのまにか「ずれ」ている、そして読み終わった時そこはかとなくもの悲しい、三崎亜記の短編世界をご賞味下さいませ^^
 しろねこさん主催の「本楽大学」に「SF学部」が新設されました。その昔SFを読み漁っていた私としては、素通りするわけにもいかず、早速願書を提出してみました!

 さて。同期入学のCuttyさんが、「SFあいうえお」という素晴らしいレポートを提出されているので、私もそれに倣って「あいうえお」に挑戦してみましょう。もっとも、私がSFを読んでいたのは小学校高学年から高校生くらいにかけてで、その後は遠ざかってしまいましたので、最近の動向などはよく知りません。その上、SF関係の蔵書は大部分が実家に置いたままで、今は怪しい記憶を頼りに書くしかないという……もし間違いなどありましたら、ご指摘願わしく。
あ…『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス。SFファンならずとも、読んだ人は多いでしょう。映画版とドラマ版の存在は記憶から抹消。
い…『インテグラル・ツリー』ラリイ・ニーヴン。「自由落下状態の世界」という、激しくSF的な舞台設定が素敵。もしそんな世界に住んでいたら、どんな文明が発達し、どんな日常生活が送られるのか??
う…『宇宙家族カールビンソン』あさりよしとおの傑作SF漫画(笑)そもそも「宇宙家族ロビンソン」というテレビシリーズがあって、さらにアメリカ海軍に「カールビンソン」という原子力空母があると知っていることが前提。
え…『エイリアン』リドリー・スコット監督作品。エイリアン本体はもちろんのこと、宇宙船ノストロモ号のデザインも秀逸。なお、個人的に「2」以降は認めない派。
お…『おもいでエマノン』梶尾真治。生命が誕生してから今日までの記憶をすべて持つ少女「エマノン」をめぐる短編集。‘EMANON’は‘NO NAME’の逆さつづり。
か…『火星年代記』『華氏451度』レイ・ブラッドベリ。ブラッドベリの作品に、中学時代に出会えたというのは、幸せなことだと思う。
き…『銀河鉄道999』松本零士。松本作品は、厳密に言えばSFではないけれど(「宇宙空間でマントをなびかせるデスラー総統」とかね)、やっぱり好きだったなぁ。
く…クラークの三大法則。アーサー・C・クラークが提唱した法則。1. 高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。2. 可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。3. 充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。特に第三法則が有名。
け…『幻魔大戦』平井和正。大風呂敷を広げすぎると、たためなくなるということ。
こ…小松左京。日本SF界の大御所。私としては『日本沈没』より『さよならジュピター』をリメイクしてほしい(笑)
さ…サイバー・パンク。W・ギブスンとか読んだけど、ピンと来なかったなぁ。いや、わかるんだけど、趣味じゃないという感じかな。
し…『11人いる!』萩尾望都。いわずと知れた名作。やっぱり天才ってのはスゴイ。
す…『スペース1999』アメリカのテレビシリーズ。月が地球の衛星軌道を外れて、月面基地ごと宇宙空間をさまよう話。個人的には「スター・トレック」より好き。
せ…センス・オブ・ワンダー。SFをSFたらしめるための要件とされる感覚。この言葉を使うと、何となくわかったような気になるから不思議^^
そ…『ソラリスの陽のもとに』スタニスワフ・レム。「意志を持つ惑星」をテーマにした古典SF。映画版は、観た人のほとんどが寝てしまうといういわくつきの(笑)映画。
た…タイムマシン。H・G・ウェルズを引くまでもなく、SF草創期から書き続けられている、古くて新しいテーマ。
ち…カレル・チャペック。『山椒魚戦争』『R.U.R』を書いたSFのルーツのような作家。R.U.Rはロボットの語源になった。
つ…冷たい方程式。宇宙船内で密航者が発覚し、目的地にたどり着くための酸素や食料が人数分に満たない場合に発生する問題。要するに、誰を宇宙空間に放り出すか、ということ。
て…『天の光はすべて星』フレドリック・ブラウン。ブラウンにしてはロマンティックな佳作。というかタイトルが大好きなんです。
と…『時計仕掛けのオレンジ』アントニイ・バージェス。日本語訳には相当苦労しただろうと思われる。キューブリックによって映画化されている。
な…『夏への扉』ロバート・A・ハインライン。時間テーマSFの古典的傑作。山下達郎がこの作品をテーマに曲を作っていたっけ。
に…『2001年宇宙の旅』アーサー・C・クラーク。スタンリー・キューブリック監督の映画を見た人(そして、なんだかよくわからなかった人)は多いはず。しかし、2001年てもう「6年前」なんだよねぇ^^;
ぬ…ぬえ。スタジオぬえ。ハインライン『宇宙の戦士』日本語版の表紙と挿絵を担当。ぬえの宮武一貴氏による「パワード・スーツ」のデザインは、その後のロボットアニメに多大なる影響を与えた。
ね…『猫のゆりかご』カート・ヴォネガット。愛は負けても親切は勝つ!
の…『残された人々』アレクサンダー・ケイ。『未来少年コナン』の原作。でも、世界設定を使っているだけで、ストーリーは全然違う。
は…パラレル・ワールド。平行宇宙。我々のいるこの宇宙以外に、無数に枝分かれした別の宇宙が存在するという考え方。時間テーマと複合的に用いられる場合もある。
ひ…『百億の昼と千億の夜』光瀬龍。日本SF史上に輝く一大叙事詩。読んで損はない。萩尾望都による漫画版も(原作とストーリーは違うが)傑作。
ふ…『ブレード・ランナー』リドリー・スコット監督作品。原作はP・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』である。どちらも傑作。
へ…「ペリー・ローダン」シリーズ。現在まで250巻以上書き続けられている、スペース・オペラの最長寿シリーズ。実は読んでないので、詳しいことはgakiさんに訊いてください^^
ほ…『星を継ぐもの』J・P・ホーガン。SFであり、謎解きであり、冒険ものである。初めて読んだ時の興奮は、今も忘れられない。
ま…「魔王子」シリーズ。ジャック・ヴァンス。宇宙を舞台にした復讐譚。悪役のキャラが立っていて、なかなか面白いですよ。
み…『みすて♡ないで!デイジー』長野のりこ。多くは語りませんが。面白いので読んでみてね!
む…C・L・ムーア。『大宇宙の魔女』の作者。この話には「シャンブロウ」という異星人が出てくる。「異星人で美少女で危険」というキャラクター類型の原点かも。
め…「メド・シップ」シリーズ。マレイ・ラインスター。「国境なき医師団」の宇宙版みたいな話。オーソドックスな展開で安心して読める。すごい名作というわけではないが、なんだか記憶に残っている。
も…『もし星が神ならば』グレゴリイ・ベンフォード。割と地味なファースト・コンタクトものですが。とにかくタイトルが素晴らしい。
や…『山の上の交響楽』中井紀夫。1988年星雲賞受賞作品。数百年間ずっと演奏され続けている交響曲の話。素敵な作品です。
ゆ…『遊星からの物体X』ジョン・カーペンター監督作品。あのね、犬の首が取れてね、切り口から蜘蛛みたいな足がたくさん(以下略)
よ…『妖精配給会社』星新一。さて、どんな話だったかなぁ^^;
ら…フリッツ・ライバー。『闇の聖母』の作者。SFというよりファンタジーかな。「ファファード&グレイマウザー」シリーズも、結構好きだった。
り…「リングワールド」シリーズ。ラリイ・ニーヴンのハードSF。とある恒星を囲むようにして存在する謎の構造体「リングワールド」をめぐる冒険物語。これぞSF!
る…ジョージ・ルーカス。「スター・ウォーズ」の生みの親。誰でも知ってるね。
れ…『レンズマン』E・E・スミス。いわゆるスペース・オペラの古典。読んでないけど。
ろ…ロボット三原則。アシモフが提唱した、ロボットが守るべき原則。 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。…アトムもこの原則に従っているのだ! 
わ…『わたしを月まで連れてって!』竹宮恵子。これも傑作。今読んでも、実にキュートな漫画。
 というわけで、思いつくままに書いてみましたが、やはり記憶力が錆び付いてますね〜^^;ロボット三原則とか、正確には思い出せませんでした(ので調べました)。でも、なんだかまたSFを読んでみたいなぁ、という気持ちになってきました。最近の作家や作品を知らないんですが、どのあたり読めばいいでしょうね? りあむさんに訊くのが一番早いかな(笑)

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山の上の交響楽

中井紀夫の『山の上の交響楽』という作品をご存知だろうか。
星雲賞をとった作品なので、SFファンの間ではよく知られている短編である。
でも、そうしたジャンルを越えて、多くの人に読んでもらいたい話なのだ。

よく「すべての芸術は音楽を指向する」などというが、ある意味音も映像もない「小説」という手法を逆手にとって、実際には決して実現できない音楽を、文字によって表現してしまうという、まさに短編SFならではの試みが、見事にはまった稀有な作品と言える。
なにしろ、通して演奏するだけで一万年はかかるという長大な交響楽を、すでに二百年にわたって演奏し続けているオーケストラの話なのだ。ね、これだけで読んでみたくなったでしょう?
しかも、その交響楽最大の難所「八百人楽章」に、まさにさしかかろうとしている時が、話の舞台なのである。
もともとこの作家は、ワン・アイディアを一つの世界として構築してしまうことに長けているのだが、この作品はまさにその才能を遺憾なく発揮した作例であろう。これによく似た作品は、私の知る限りでは、小林恭二の『小説伝』しかない。こちらは音楽ではなく、小説そのものが小説になっているという、入れ子構造の眩暈感も味わえるのが特徴だが、いずれまたメインで紹介することとしたい。

ともあれ、SFやファンタジーは読んだことないけどクラシックは好き、という人にはぜひとも読んでいただきたい一品である。本書に収められたほかの短編も、それぞれに完成度が高く、読んで損はない作品集に仕上がっているので。ハヤカワ文庫1989年刊。

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