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Poser は、あまたある3DCGソフトの中にあって、やや特異な地位を占めている。このソフトは、3Dオブジェクトを作るためのモデリング・ソフトではなく、既に制作済みの3Dオブジェクトを画面に配置し、レンダリングするためのソフトである。ただ、特異なのは、その3Dオブジェクトの対象が人物に特化しているという点にある。
では、何のためにこのソフトが生まれ、今何に使われているのかということになると、これがなかなか面白いのである。
Poser 付属の説明書によれば、Poser を生み出したのは、イラストレーターを目指していた Larry Weinberg という青年である。彼は人物画のポーズを勉強するために、画材店に行き、ポーズを付けられる木製の小さなマネキン人形を買って来る。
しかし、このマネキンにポーズを付け、それを元にイラストを描こうとしても、うまくいかない。そこでWeinberg 氏は、パソコンの中で動かすことのできるデジタル・マネキンを作ることを思い立つ。この時点での Poser には、まだ高品質のレンダリング、影付け、アニメーション、テクスチャといった機能はなかった。Weinberg 氏は、それを1995年に公開し発売する。「Poser 1」の登場である。
そこからの Poser の歴史は、Weinberg 氏の想定を超えていた。「Poser 1」は爆発的にヒットし、96 年には早くも「Poser 2」が発売される。そして Poser は、科学、医学、建築、CAD、演劇、ダンスなどのパフォーマンスやプレゼンテーションに使われるようになる。現在 Poser は「Poser 6」にバージョンアップしているが、付属説明書によると使用分野は更に広がり、巨大彫刻、漫画、医療用のイラストや使用説明書、訴訟事件の再現にまで使われるようになったとある。
さて、以上が付属解説書に載っている Poser の歴史なのだが、Poserを使っているユーザー諸氏や、その作品を日頃見ている人は、何やら不思議に思わないだろうか。何がって?
では、私の疑問を率直に言おう。私は日本で、Poser が科学、医学、建築、CAD、演劇、ダンスなどのパフォーマンスやプレゼンテーションに使われているのを見たことがないし、巨大彫刻、医療用イラストや使用説明書、訴訟事件の再現に利用されているのも知らない。かろうじて知っているのは、漫画に使われているということで、他の用途は、米国ではあるのかもしれないが、日本では著名事例を知らない。あるいは私が浅学菲才なだけかもしれないが…。
他方、日本で幅広く使われていながら、この Poser 日本語版解説書には一言も触れられていない利用方法がある。それは何か? 自分なりのキャラクター製作である。
Poser にはモデリング機能はないのだが、既にある人物データを変形することによって、顔や体型を変えることができる。例えば、人物データの顔は、無数の頂点を線で結び、線で囲まれた空間に面を張って構成されている。この頂点を移動すると、線が伸び縮みし面も合わせて変形する。これにより、表情が変わったり、顔かたちが変化したりするのである。これを Poser ではモーフ(morph)と呼んでいる。この機能を使うと、様々な顔立ちの人物データを作ることができる。そして、現実にたくさんのキャラクターが作り出され、サイト上で有料・無料で配布されている。
私の見るところ、こうしたキャラクターの作成や、その新キャラクターに好みの格好をさせての作品制作というのが、Poser の使われ方としてほぼ全てを占めるように思うのだが、どうだろうか。こういう使われ方は、当り前すぎて解説書に書いていないということかもしれないが、もしかして販売元が、想定外の使われ方として内心嫌がっていたりして…。でも、これなくしては、Poserは売れない。これもまた、厳然たる事実である。
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