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今の一つ前に使っていたパソコンが調子悪くなったのは、確か去年の2月頃のことだったから、現在のものにパーツを入れ替えてから、かれこれ1年以上になる。パソコンは、1年で陳腐化しかねないナマモノだとかねがね思っているが、最近のパーツ動向を見ていると、それが決して大袈裟ではないかもしれないなぁと思ってしまう。
私が昨年初めにパソコン・パーツを買い換えた後に、メモリー価格があれよあれよという間に下がり、5月にメモリーを実質上限の3GBまで増設した。あの時には驚くほどメモリーが安くなったものだと感心したが、今となってはそれも昔話である。東京在住でパソコン・パーツに関心のある方なら、毎週秋葉原のパーツ・ショップの価格動向をレポートしているサハロフ佐藤氏のサイトのことはご存知だと思うが、一応そこそこのチップを載せたPC2-6400のDDR2 SDRAMが、現在2GBx2=4GBで1万円を切っている。
安くなったのはメモリーだけでなく、私が現在使っているAMD Athlon 64 X2 5200+(2.7GHz 512KBx2)は、1万円程度。当時の購入価格で、今だとクアッド・コアのAMD Phenom X4 9750(2.4GHz 512KBx4)が買える。ハードディスクについても同じことが言えて、当時の320GBと今の500GBがほぼ同じ値段である。
まぁそんなことをイチイチ比較していたら気が滅入るばかりだが、一つだけ慰めになることを言えば、そんなふうにパーツ価格が下がっても、32bit版のWindowsを使っている限り、最先端パーツの能力を活かし切れない時代にそろそろ突入しているということだろうか。
32bit版のOSが扱えるメモリーの絶対限界が4GBだということは前にも書いたし、メモリー価格が下がった現在では、たいていのパーツ・ショップでその旨の注意書きが掲げられている。この4GBは、全てのメモリーの総計、つまりハードディスクやグラフィック・ボードに乗っかっているメモリーも含めた限界である。しかも、32bit版Windowsは、ハードウェアの使用するメモリー領域を先取りしてセットアサイドするため、実際に我々が画面上で認識して利用できるメモリー容量は、3GB程度のものである。それが実質的な限界と見ていいだろう。
だが、パーツの進化は著しく、今やグラフィック・ボードで1GBのメモリーを積んでいるものまである。これだと、32bit版Windowsがハードウェア用にセットアサイドするメモリー領域を超えてしまうことになり、Windowsとアプリケーション・ソフトが使えるメモリー総量は3GBを切る計算になる。
ハードディスクなど、その他のハードウェア搭載のメモリーはグラフィック・ボードのものよりはるかに少ないが、増加傾向にあるのは間違いない。つまり、我々がOSやアプリケーション・ソフトの操作時に使えるメモリーの容量は、ハードウェア搭載のメモリーの増加によって侵食されつつある。メモリーが幾ら安くなっても、4GBの実質限界を破れない以上、お金をかけても快適さの追求はごく限定的なものとなる。
そうは言っても、パソコンをビジネスやゲームなどに使っている限り、このメモリー問題は気にならないだろう。これらのソフトは、そこまでメモリーを使わないからだ。また、クアッド・コアだってよほど激しいマルチ・タスクをしない限り、恩恵は少ないのではないか。MS Wordで文書を書いている背後でセキュリティー・ソフトがウイルス・スキャンをやる程度なら、現在主流のデュアル・コアCPUで充分なはずだ。だが、コンピューター・グラフィックス(CG)をやっている人にとっては、メモリー容量とCPUコアの数は、結構重要な問題である。
CGソフトは、バージョン・アップするたびに能力が向上し、同時に使用するパソコンのスペックも高くなる。既に私が使っているVue6 Infiniteの推奨環境は、メモリー2GBになっているが、Vue7になると、これが更に上がる可能性が高い。実際、今でもやや複雑な情景を作ると、Vueごと落ちることがたまにある。けれど、32bit版Windowsに留まる限りアプリケーション・ソフトへのメモリー割当ては2GBなので(残りはWindowsが使う)、これ以上はどうにもならない。となると、次は64bit版Windowsへ移行しないと、満足に作品作りが出来ないことになる。
けれど、いつまでたってもOSの主流は64bitにならない。Windows Vistaになって64bit版のライン・アップが豊富になったものの、市販のVista搭載パソコンで64bitのものは見たことがない。2010年にも出ると言われている次期OS「Windows Seven」に関する情報が、ちらほらとIT系のニュース・サイトに出始めたが、これが64bit標準になるかというと、どうもそうとも思えない。
結局、ネット系やビジネス系、あるいはヘビー・ユーザーでない普通のゲーム系のパソコン・ユーザー(ほとんどの人がこれに当てはまるハズ)にとって、OSが64bitである必要などないのである。更に言えば、メモリーが安くなったり、CPUのコアの数が増えたりしたって、これまたほとんど関係ない。パーツのスペック向上を体感できるような使い方など、大半の人はしていない。Windowsそのものだって、この先どれほど豪華な機能を付けようが、一般の人はあまり見向きもしないだろう。時代はクラウド・コンピューティングではないが、ネット上で全てを済ませる方向に進んでおり、個人が持つパソコンは、インターネットにつなげればいいだけになっていくのだと思う。スペックの向上が求められるのは、我々が使うパソコンではなくて、サーバーの方だろう。
結局CGソフト・ユーザーは、メイン・ストリームから取り残されたのではあるまいか。Windowsがバージョン・アップし、それと共にパーツも進化し、その恩恵をみんなが体感できる時代は終わったのではないのかと思う。依然パーツの進化とそれを享受できるOSの登場を待ち望んでいるのは、我々CGソフト・ユーザーやヘビー・ゲーマーなど、ごく僅かなパソコン・ユーザーだけじゃないかという気がする。そうなるとマイクロソフトも、そんな例外的な人々のためにWindowsを進化させて行っても儲からないという計算になるはずだ。つまり、64bit化なんかよりYahooの買収の方がよっぽど大事ということになる。
さて、そうして取り残されたCGソフト・ユーザーの立場を考えると、世の流れに背を向けて、独自に64bit化を図るしかないが、CGソフト以外のアプリケーション・ソフトが32bitに留まっている現状を考えれば、幾ら64bit版Windows上で32bit用ソフトも動くと言ったって、ソフト・メーカー側は64bitでの動作は保証していないだろうから、どこでトラブルが起きるか分からない。それを考えれば、32bitと64bitの二束のわらじを履くしかないことになる。2台のパソコンを持つにせよ、デュアルブートにするにせよ、パソコンを用途別に分けなければならないというのは何とも厄介である。
まぁそんなことを最近つらつら考えるようになったものだから、パソコン・パーツ価格動向にはそれほど一喜一憂しなくなった。今じゃ2万円も払えば、そこそこのチップを積んだメモリーが8GB分買えてお釣りがもらえるような結構なご時世になったが、32bit版Windowsを使っている限りは宝の持ち腐れである。幾ら安くなったところで、目に見える効果のないことをわざわざやるバカはいないだろう。パーツの進化と価格低下の恩恵を、パソコンの体感能力向上という形では享受できないというのは何だかおかしなことだが、それをおかしいと思うのはCGやゲームを趣味にする人だけだというのも悲しい事態だ。
私は今のところ、Vistaを飛ばしてWindows Sevenに行こうと考えているのだが、さて、その頃のパソコンを取り巻く状況はどうなっているのだろうか。シン・クライエントではないが、誰もがネット上で用を済ませるようになり、パソコンのスペックに重きは置かれず市販パソコンも価格勝負になっているのかもしれないあなぁ。64bit版勢力はさっぱり広がらず、一部のユーザーだけのマニアックな世界になっていたりして・・・。
一つ言えることは、CGソフト・ユーザーは、CGソフトの能力と推奨環境の向上に伴い、市販パソコンを使う人が確実に減るだろうということだ。誰でも気軽に扱えるCGソフトというのは、色んな意味で死語になるかもしれないなぁ。
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