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落ちこぼれゼロ法案

「落ちこぼれゼロ法案 (No Child Left Behind Act)」…なんとも美しいスローガンのこの法案は、2002年に議会を通ったブッシュ政権の新しい教育改革法案。全米の高校からドロップアウト(中退)する生徒を救いあげ、その数をゼロにする!そのために公立校を競争させ、競争による教育の質向上をめざす。どこかで聞いたことがあるような気がするのは気のせいではない。今、安部政権が参議院で成立をめざす教育基本法「改正」で本格化するであろう「教育再生計画」の先取りである。


先月、電車で3時間かけて、ジャーナリスト堤未果さんの講演会を聴きに行った。堤未果さんはニューヨークをスーツとハイヒールで颯爽と歩くのが似合いそうな美貌のキャリア・ウーマン。。。であったが、9.11テロを世界貿易センター・ビルの隣りのビルで実体験した後、憧れていた「自由」と「民主主義」の国アメリカがパニックに包まれ、急速に閉塞していくのに不信を抱き、キャリアを捨てて帰国した。
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その後、時間が「湾曲したレンズのように、こちらののぞく角度によって映し出す風景を変え」、未果さんは不信とトラウマをふっきるためにアメリカともう一度向き合ってみようと、再度渡米する。そして「もう一つのアメリカの顔」を発見する。アメリカの「弱者」による「革命」の可能性だ。イラク従軍兵士やホームレスの若者など「弱者」とよばれる人々に膨大なインタビューをして、本を綴った。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(海鳴社)。
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さて、『落ちこぼれゼロ法案』。堤未果さんの講演会で初めて聞いたけど、ウィキペディアにもちゃんと載ってる。未果さんは悪い結果についてしか語らなかったけど、一応公平のためにウィキペディアを載せとく。法案がもたらした結果に肯定的な意見と否定的な意見が両方載ってる。http://en.wikipedia.org/wiki/No_Child_Left_Behind
「中立的」に言うと、a matter of vigorous controversy(激しい論争になっている)。
和文はこちら→ http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/020301/020301m.htm


ともかくてっとりばやく和文の要約をみてもらうとわかるとおり、学校選択の幅を拡大したり、毎年学力テストをやって評価をしたり、「一人も落ちこぼれを作らない賞」を学校にあげて褒めたり、テストの総合成績の悪かった学校(失敗した学校)には制裁を加えたりして、学校同士を競争させる。以下は未果さんの話。

『落ちこぼれゼロ法案』で、結局追い詰められたのは教師たちでした。テスト結果が報償やペナルティにつながるので、教師たちはペナルティを避けるために、インチキをして学力テストの問題を事前に生徒たちに教え、生徒たちはそんなインチキでかえって勉強をナメてかかり、さらなる学力低下を招きました。さらにテストのみかけの結果を上げるために、マイノリティや貧困家庭の子供たちなど、成績の悪い生徒たちにテストを受けさせないようにしました。
(註:これはウィキペディアにも書いてある。「みかけの成績apparent performancesを上げるためにマイノリティ他のグループを学校から締め出したexcluded ので、統計上は『落ちこぼれゼロ法案』により、(学校に残った)マイノリティ全体の平均成績が向上したことになった」)

そして奇妙なことに、この法案の条項の中に一行、こう書かれている。
「すべての高校は、生徒の親から特別な申請書が提出されないかぎり、軍のリクルーターに生徒の個人情報を渡さなければならない。また、軍の関係者にも、普通の業種のリクルーターと同じように、就職説明のために生徒と接触することを許可することを義務づける(107条110項)

すべての学校がこの法案に従うことを徹底するよう教育委員会は国から指令を受けていて、学校が軍に生徒の個人情報を渡すのを拒否した場合には、政府からの助成金が打ち切られる。生徒の名前、住所、国籍、両親の職業、入学してからの成績、市民権の有無、そして携帯電話の番号まで!

「裏口徴兵政策」と未果さんは呼んでいた。軍のリクルーターはその情報の中から、貧しい、将来のなさそうな生徒を選んでアプローチし、リクルートする。ちなみにリクルーターはみなイケメン。白い歯をニコっと出してさわやかに笑い、巧みな話術で「獲物」のハートをつかむ。(どうしたらハートをつかめるかの講習をリクルーターは事前に受けている。)ピザ・ハットに連れ出して、ピザはおごり。
「君の夢ってなに?」
「夢」なんか夢みたことのない貧困家庭の若者の心にこつんとハンマーを打ち込む。
「まあ、実はこのピザ・ハットででも働ければいいと思ってるんだけどね」
「エッ?!ピザ・ハット?君みたいなガッツがあって有望な若者がピザ・ハットだって?」
信じられないというような顔をして、若者を褒めると、若者はそれだけでポーッとしてしまう。
リクルーターは赤と青の星条旗のパンフレットを渡す。軍に入隊すると大学費用が全額軍から支払われるとか、除隊した後まで医療がタダで受けられるとか、なんなら予備兵に登録すれば戦争に行く確率はわずかだとか、いいことづくしの夢のような説明を聞いて、入隊申込書にサインしてしまう。
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これがウソだということはもちろんおわかりですね?アメリカでは今350万人のホームレスがいるそうだけど、内50万人はイラクからの帰還兵。戦場に慣れた帰還兵たちは、平時にも戦場でのような反応をしてしまって対人関係を損ない、PTSDで眠れないのでドラッグを打ってエイズに感染する。イラク帰還兵の6人に1人は重度の精神障害だという。

どうしてそんなことが見抜けず、入隊申込書にサインしてしまったのか。未果さんは不思議だったそうだけれど、アメリカ各地をインタビューして回るうち、アメリカっていうのは一部の都会を除いてほとんどが保守的な田舎で、新聞を取っていない家庭もめずらしくないということに気づいたそうだ。情報といえば、テレビと教会での説教。テレビで一番視聴率の高いのはフォックスTVで、イラク戦争の凄惨な場面などカットして、星条旗をバーンと画面に映し出したり、と戦争賛美のニュアンスでニュースを流す。教会はえてして「共和党の巣窟」。インターネットは貧困家庭には無縁のものだったりする。


日本の国会で今週にも教育基本法が「改正」されようとしている時になぜアメリカの話なんか書いているかというと、「改正」で導入されるだろう「学校評価制」や「教育バウチャー」制が『落ちこぼれゼロ法案』に似ているからだ。法案に記載されている軍へのリクルートについての条項、教育基本法が「改正」されて、こんな条項を盛り込んだ新たな教育法規をつくることを政治家が思いつかなければいいけど。まさか何年後かには導入することを狙ってはいないでしょうね。

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