キリスト者として今を生きる

風は冷たいけれど春の訪れを感じます。。。

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おばさん力

この前の記事で、電車の中、マナーが悪く態度も最低のネエチャンたちについて書いたけど、バスに乗ったら、今度は座席にすでに坐っていたオバサンが手を伸ばして私の服の裾にさわり、「ここ、空いたからお坐りなさいよ」「まあ、ありがとうございます」「バスが揺れて危なさそうだったから」

日本という社会、世の中が悪くなったのは、こういう「おばさん」の美点が正当に評価されなかったからではないかと思っている。こういうことをしてもらうと有難いとは思うけれど「オバサンはえらい」「オバサンはすごい」とまでは誰も思わない。でも私は思うのだ。「おばさん力」ってすごい。今の日本に欠けているのは「おばさん力」だ、と。田舎のおばさん(むしろ「おばあさん」)は、ローカル線の中でミカンを分けてくれる。

もっとすごいと思ったのは、野辺山に旅行に行ったとき。なんだかむしょうに焼きトウモロコシが食べたくなり、たまたま入った駅前の食堂で、「トウモロコシはありませんか」と聞いたら、おばあさん、気の毒そうな顔で「トウモロコシはやってないのよ。でも、そうそう、アタシがあとで食べようと思ってゆでといたトウモロコシが冷蔵庫にあるよ」と言って、「ゆでトウモロコシ」を出してくれた。トウモロコシは残念ながら冷たくて、「ゆで」より「焼き」が食べたかったのだけれど、そんなことはどこかへ行ってしまうくらい、この出来事は印象深かった。「あたしのだから、御代は要らないよ」とおばあさんは言った。

「関わる力」…こういうおばさんやおばあさんは人の目をまっすぐ見る。日本という社会はこういう人たちを正当に評価せず、軽く扱ってきたのではないかしら。「かなわないなあ」と心の底から感心するのだけれど。

リトル・チルドレン

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映画を観てきた。「ヒロシマ・ナガサキ」でもなく「夕凪の街 桜の国」でもなく「リトル・チルドレン」だ。http://www.little-children.net/

スターは別に年がらねんじゅう「戦争と平和」や「教育」についてだけ考えているわけじゃないのよ。いやあ、面白かった。ヒロインのケイト・ウィンスレット(タイタニックのレオ様の相手役の女優さん)も上手かったけど、まぶたに焼き付いて離れないのは、性犯罪者の役をやったジャッキー・アール・ヘイリーの演技である。頭が禿げ上がった変質者役のヘイリーは、往年のヒット作「がんばれベアーズ」の子役だそうね。ラスト、伏せておきます。ラストは月並みじゃない。


ところでこの映画のサブ・タイトルには「大人になれない大人たち」ってあって、アメリカの郊外で豊かな生活を送り、可愛い子供までいながら、不倫に手を出し駆け落ちまでしようとする、現状に満足できない大人、現実と折り合いをつけていくことのできない大人たちを「リトル・チルドレン」と呼んでいるのだけど、そういうタカビシャな見方はわたしはキライです。「少女みたい」って、その前に「いい年をして」と付け加えたいんだろうなあという評をブログ上でもリアル世界でも時たま頂いたりするから、きっとわたしも「リトル・チルドレン」なんだろう。

それで、じゃあ「大人」ってなんなんだろうと考えてしまうワケだ。「リトル・チルドレン」(アダルト・チルドレン)と同じくらい、「仮面夫婦」も「家庭内別居」もある。ブラッドみたいな司法浪人で夢想家の男が、バリバリのキャリア・ウーマンに養われるのは現実にはあんまりありえないことで、一方、サラのように郊外の裕福な家庭の専業主婦におさまってしまったら、その生活と身分を捨てようとはまず思わないだろう。結果としてサラとブラッドは潜在的にはともかく現実的にはマジョリティではなく、公園でブラッドとキスを交わすサラを道徳的に断罪する公園ママのメイたちがマジョリティなのだ。「大人」にはまず打算があり、その打算が動機となって「現実との折り合い」をつけていく。夫にはもはやトキメかなくとも、「ヨン様」とか「プロム・キング」とかでエロスを「安全に」処理していく。サラの夫リチャードだってそう。妻にはトキめかないが、ネット上の仮構の女には欲情する。

現実と折り合いをつけていくことがそういうことを意味するのだとしたら、実につまらない。そしてそのくだらなさをサラもブラッドも身をもって感じているのだ。だからサラはメイの道徳的断罪にたいして「ボヴァリー夫人」擁護で自分の不倫も正当化してみせようとする。「自分自身の人生を生きようとした」と。


「リトル・チルドレン」はしかしイノセントではない。元警官のラリーや変質者のロニー、サラ、ブラッド、それぞれある場面で決定的に罪を犯しているのだ。

元警官のラリーは、変質者ロニーから大切なものを奪ってしまう。ロニーは他の女性にならともかく、彼に対して心を開いた精神的に不安定な女性に、けっしてやってはならないことをしてしまう。その行為は他の女性になら彼が「変質者」とレッテルを貼られることですむことかもしれないが、心に傷を抱える女性にたいしては、法的道徳的な意味での「罪」の概念を越える「罪」である。サラは、ブラッドとの情事に夢中で、娘ルーシーのいじらしい愛に気づかない。ブラッドは自分を養ってくれる妻キャシーが今度こそと期待をかける司法試験をすっぽかして、サラとの不倫旅行に出かけてしまう。

これらの罪はあまりにもさりげなくて、見過ごされてしまいそうだけれど、不倫や幼児性愛を断罪するブルジョアジーのモラルを取り払ったところで残る罪なのだ。どんな罪かっていうと、好むと好まざるとにかかわらず自分がすでに関わった人間と、きちんと向き合うことをしなかったという罪だ。「テーゼ」にたいして「アンチ・テーゼ」を主張している間は決して気づかないけれど、これらの現実をどれだけ眼を見開いてしっかり見るかということが、じつは「大人」ということなのではないだろうか。サラとブラッドがお互い元のさやに戻ったところで、未来を築いていくことはけっして生易しいことではないだろう。エンディングは解決ではなく、むずかしい課題と向き合う新たな始まりなのだ。

監督のまなざしはあたたかでヒューマンだ。紋切り型の「裁き」とは異なった光が全編を満たしている。


「リトル・チルドレン」渋谷・文化村ル・シネマで8月末まで上映中。

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