| 朝鮮戦争は、さすがに私が生まれる前(笑)。日本の敗戦から5年後、それまで焼け野原だった日本が、「朝鮮特需」によって経済復興のきっかけをつかみ、私が生まれた頃(東京オリンピックの頃)から始まった高度経済成長につながったというのは有名な話。そしてこの朝鮮戦争の頃から、敗戦とともに打ち立てられた日本の体制が大きく変わっていくことになります。それまで軍備を持たない決意をしていた日本に、「警察予備隊」という、名前は警察だけど実際には軍隊であるものができ、警察予備隊はその後、自衛隊になります。「思想・信条の自由」が憲法で保障されたはずの日本で、共産党員が再び弾圧されていくことになります。共産党員やそのシンパは公職や企業から追放され(レッドパージ)、失業してしまいます。「レッドパージ」と引き替えのように、これまで戦争を起こした責任者として巣鴨に拘留されていたA級戦犯が釈放され、外務大臣や総理大臣にまで返り咲きます。安部総理大臣のお祖父さん岸信介もこの時釈放され、その後総理大臣になり、「憲法改正」を唱えます。岸信介は反共主義者で、統一教会系の反共政治団体「国際勝共連合」日本支部の創設にもあたりました。(ウソだと思ったらウィキペディアを見てみて下さい。孫の安部首相もこの団体に深く関わっていることまで書いてあります。)統一教会というのは、かつて歌手の桜田淳子が広告塔になり、「霊感商法」で非難を浴びた、キリスト教系の新興宗教です。 |
| さて、朝鮮戦争をきっかけにした日本の針路変更は、アメリカの対日政策が「反ファシズム」から「反共」へと変わったことに拠っています。私は9条に象徴される日本の平和憲法が、単に「人類および世界の理想だから」実現したとは思っていません。大田光の『憲法9条を世界遺産に』でも書いてありますが、憲法9条は当時の世界の情勢と、戦争はもういやだと心から思った当時の日本人の願い、アメリカ人の中に地下水のように流れていた理想、の3つが合体して、奇跡のように生まれたのだと思っています。そして「当時の世界情勢」は、キケンな日本を封じ込めて二度と戦争をできなくさせてしまおうという「反ファシズム」でしたが、5年後にはファシズムよりも共産主義の拡大のほうが怖い、とアメリカは判断し、日本を反共の防波堤にしよう、そのために軍備も持たせようと考えを変えたのです。 |
| 私がわからないのは、「日本国憲法が押しつけ憲法だ」というのなら、同じリクツで、自衛隊だって改憲だってアメリカの押しつけということになるのではないでしょうか。アメリカのその時々の都合で押しつけられた政策なんだから。「いや、岸信介は自分の信念と理想で反共と再軍備と改憲を追求したのだ」というのならば、同じように自分の信念と理想で平和と軍備の放棄と憲法9条を追求した人だって多いはずです。 |
| 敗戦から2年後に文部省が出した副教材『あたらしい憲法のはなし』には、解釈でモメる9条が本来どういうことを意図したものだったのか、小学生にもわかるやさしい言葉で書いてあります。ヘリクツをこねて日本はこれまで9条をゆがめてきましたけれど、こんなに単純明快なことだったのです。 |
戦争の放棄
みなさんの中には今度の戦争に、お父さんや兄さんを送りだされた人も多いでしょう。ご無事にお帰りになったでしょうか。それとも、とうとうお帰りにならなかったでしょうか。また、空襲で家やうちの人を亡くされた人も多いでしょう。今やっと戦争は終わりました。二度とこんな恐ろしい、悲しい思いをしたくないと思いませんか。
こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、恐ろしい、悲しいことが、たくさん起こっただけではありませんか。戦争は人間を滅ぼすことです。
そこで今度の憲法では、日本の国が、決して二度と戦争をしないように、二つのことを決めました。
その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさい持たないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「捨ててしまう」ということです。
しかしみなさんは、決して心細く思うことはありません。
日本は正しいことを、他の国より先に行ったのです。
世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
| そして挿絵がついています。武器をすべて釜で燃やしてしまっている絵です。(この教科書は朝鮮戦争が始まってしばらくすると使われなくなってしまいました。) |
| 「こんなのは現実的でない、現実の動きを踏まえない理想にすぎない」というのならば、アメリカの世界政策に追随して「大量破壊兵器」もなかったイラクを爆撃し、「アメリカの正義」のために世界を不安定にさせ、ただでさえワーキングプアが問題になっている日本でさらに軍備のための税金を重くすることが「現実的」で「現実の動きを踏まえている」のかどうか聞きたいと思います。 |
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