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投資法人はいわば、REITという金融商品を保有する金庫のような存在なのである。そのため、破綻したとしても、一般の事業企業のように従業員が次々と退職し、それによって企業価値が大きく下がるということはない。 そして2つ目。それは多くの資産(不動産物件)が信託財産とされ、信託銀行によって守られていること。一般の不動産とは違い、それ自体が金融商品であることから、信託銀行に財産の保管を委託することで、資産を保全することを目的としている。また、物件にはそのままオフィスや商業施設、個人居住者が引き続き入居を続けており、たとえ破綻したとしても大きく入居状況が変わることはない。つまり、そこから賃貸収入は継続して得られるわけで、商品としての価値(収益力)が大きく毀損されるわけではない。
一般の事業会社が破綻した場合には企業価値が大幅に下落するので、ほとんどの場合「債務>資産」となり、破綻=債務超過という構図となる。しかし投資法人の場合は、必ずしもそうはならない。つまり、投資法人が潰れても、収益不動産である資産は毀損されていないため、破綻なのに資産超過という、一般の破綻では考えられない状況も発生しうるのである。 今回の破綻を受けて、J-REIT市場は大幅に値を下げた。その中でも、大手不動産会社や総合商社などの信用力の高い母体企業を持たない、資金調達力が相対的に乏しいと思われる独立系の投資法人は大きく株価を下げている。彼らも資金繰りに困窮しているものと想像でき、ニューシティと同じような状況に追い込まれないとも限らない。
そこで不動産投資信託とは直結しないが、SRIの動きをリンクして考えていきたい。少し寄り道にお付き合い願いたい。 そもそもSRIとは、投資を通じて、倫理的な企業を応援し、非倫理的な企業から資金を引き上げることで、差をつけていこうという、投資手法であり、同時に、一種の社会運動だ。伝統的に、たばこ、アルコール、ギャンブル、武器関連といった4セグメントの銘柄が投資対象から外される傾向がある。 そこでSRIへのアンチテーゼとして「ヴァイス・ファンド」すなわち悪徳ファンドを名乗る商品を出して運用する人たちもいる。 では、日本ではどうなのか。リーマンショック前の9月12日と先週末12月5日の株価を比べると、興味深い事実が浮かび上がる。 たとえば、ビール大手三社の株価を見ると、サッポロが784円から499円、アサヒが1937円から1509円、キリンが1525円から1095円に下落している。下落率にすると、サッポロが36.35%、アサヒが22.09%、キリンが28.20%だ。ちなみに、同時期のTOPIXの下落率が33.22%.日経225が35.17%である。なんかおかしい。 これら三銘柄の差は興味深い。一番下落率の低いアサヒは、利益の構成比で、他の2社にくらべて、ビールを中心とする酒類に頼る構成比が大きい。一方、下落率が一番大きいサッポロは収益上、不動産事業への依存度が高いため、銘柄としては半分不動産株だ。短期間で比較しただけだが、こうして見ると、市場が混乱しているように見えても、株価の動きは合理的であることに気づかされる。ちなみに、JTの下落率も22.6%(44万7000円から34万6000円に下落)に止まっている。 よく不景気の時にも収益が安定している銘柄は「ディフェンシブ」銘柄と呼ばれるが、こうした結果を見る限りは、確かにそうなのかもしれない(ちなみに、最近までは食品もそう呼ばれていたが、どんな不祥事が飛び出すか、何が混ざっているか分からないため、最近はディフェンシブな感じはしない)。好景気の時に他のセクターよりも目覚しいパフォーマンスをあげるかどうかは疑問だが、現在のような状況では、相対的に強そうで、ファンドマネジャーにとっては心強い銘柄群だ。 SRIファンドへの投資は、SRIが運用そのものとして優れていることを証明できない限り、年金基金の年金加入者に対する越権行為だと思う。企業年金のお金であっても、そもそも年金というのは税制上も優遇されているわけで、まったく私的な価値観で扱っていいお金ではないはずだ。
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新年そうそう鬱陶しいテーマでごめんなさい。しかし今年この不動産投資信託がかなり危険であると判断しました。なるべく早急に調べお伝えしないと、と考えました
その前にまず、J-REIT誕生の背景から。J-REIT設立の原点には、バブル崩壊がある。バブル崩壊後の90年代、不良債権処理に苦しんだ銀行や企業が次々と不動産を処分。そこに金融規制緩和の流れもあり、不動産を投資信託という安定した金融商品に変えるという「不動産流動化」のブームが起きた。そして2001年、より公正で透明な市場を作ろうということで、不動産投資信託の専門市場J-REITが創設されたのである。 REITは株式と同じように売買ができるため、個人が手軽に不動産に投資できるようになった。年率2%前後の高配当が得られ、一躍人気の金融商品になったのである。そこに2004年頃から不動産バブルが到来。そのバブルを支えたのが、不動産投資を専門とするファンド(私募ファンド)と不動産投資法人(J-REIT)だった。
私募ファンドの豊富な資金を元手に、デベロッパーは次々と物件を開発していった。そしてその物件は証券化され、収益が安定したところでJ-REITへ売却される。このような一連のスキームが出来上がり、市場は急拡大していった。ピーク時の2007年5月には、REITの時価総額が7兆円近くにものぼった。 J-REITには、収益のほとんど全部が配当に回され(つまり事業会社でいえば配当性向は100%ということになる)、原則として法人税がかからないというのも市場拡大を後押しした要因だろう。現在では、東証、大証、ジャスダックに3市場があり、計42の投資法人が上場をしている。しかし今、J-REITは、金融ビックバンのお荷物と成り下がっていくだろう。 そのJ-REITにも2007年5月頃から、陰りが見えはじめる。不動産価格の下落が始まったのである。それに伴い、REITの取引価格も大幅に下落。その直後の7月にはサブプライム問題が発生。これにより投機マネーが一斉に引き上げられ、私募ファンドや外資系ファンドといった大口投資主による第三者割当などの資金調達があてにできなくなってしまう。そして9月末には「金融商品取引法」が施行され、不動産ファンドも金融庁の規制対象になった。 そしてとどめは2008年に入ってからの金融機関による信用収縮。これにより、最後の砦となっていた銀行からの資金調達もままならなくなってしまう。資金調達力の弱いJ-REIT各社は一気に資金繰りに困窮することになる。不動産バブルでわが世の春を謳歌していたところから一転、急速な環境悪化によって、資金調達力の弱いJ-REITは一気に苦境に立たされることになったのである。 J-REITを運営している「投資法人」というのは、一般の企業とは大きく違う点がある。 まず1つ目は、“従業員がいない”こと。会社には役員会が置かれているだけであり、実際の投資信託の運営は、別の運用会社が行なっている(法律で外部委託が義務付けられている)。役員会は、通常2名の監督役員と1名の執行役員で構成されている(監督役員が執行役員よりも多いことが要件となっており、監督役員3名、執行役員2名の場合もある)。監督役員というのは、一般の企業でいう「監査役」にあたる。そして執行役員は、REIT運用の責任者であり、運用会社が適切に資産を運用しているかを管理する役割を持つ。 >続く・・・
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