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医師からの提言 体育館型避難所から避難する選択肢を −避難所の皆様へ伝えてください− 震災から2週間以上たち、避難所で亡くなる方々が増え始めています。災害後の避難所での死亡率は通常の60倍であり、死因の4分の3は感染症であるという論文報告があります。食糧、電気、水道、暖房、排泄などがままならない体育館のような避難所で、大勢が 密集して生活する環境では、感染症の流行は防ぎようがありませんから、体育館型避難所での生活 そのものに死亡リスクがあると言わざるを得ません。もちろん、この死亡リスクを減らすために、多くの 方々が物資を送り、様々な医療団が現地入りするなど、全国の皆様のご尽力には感激していますし、 今後もこうした支援が広がることを願っています。しかし、たとえどんな対策を講じたとしても、避難所 生活が長期化すれば、命を落とす方が今後も増え続けることは避けられないでしょう。 避難所で人命を奪う代表的な感染症は、呼吸器感染症(風邪、インフルエンザ、肺炎など)と下痢や嘔吐(ノロウイルス、ロタウイルスなど)です。インフルエンザ、肺炎、下痢が発生していることはすでに報道されています。過去の報告では、避難している子どもの死亡のうち80%は肺炎にマラリアや下痢が重なったものだったという報告や、災害後早期の死亡の40%が下痢によるものであり、そのうち80%は2歳未満の子どもという報告があります。これらのデータの多くは途上国のものですから、日本ではこうはならないと思いますが、避難所は通常の日本の環境とは異なる点に留意が必要です。通常であれば、日本では栄養状態もよく、たくさん水分摂取でき、清潔を保てるので、成人は恐れるに足りない感染症であっても、避難所の環境では、体力の弱い者から、つまり多くは、小さな子どもや高齢者などから、命を奪っていくのです。 仮設住宅の建設は始まっていますが、上水道などライフラインを根こそぎ破壊した津波被害で建設場所が限定され、最初の1カ月の供給量をはるかに超える量が必要なため、仮設住宅の整備は長期化するようです。大勢が長期間、避難所生活を続けては、かなりの死者数を出すことになってしまいます。 避難所の死亡リスクを回避する方法は、一刻も早く通常の環境に「移住」することです。すでに、全国各地から、住居を用意して被災地の方々を迎えるという情報がたくさんあり ます。たとえば、以下のYahooのサイトから、全国で提供されている住宅について検索することができ ます。 Yahoo! 被災者受け入れ情報 http://dir.yahoo.co.jp/Society_and_Culture/Environment_and_Nature/Disasters/Earthquake/2011_The_Pacific_Coast_of_Tohoku_Earthquake/Ukeire/?q=%C8%EF%BA%D2%BC%D4%BC%F5%A4%B1%C6%FE%A4%EC%BE%F0%CA%F3 いち早く実現した「老健疎開作戦」は、亀田総合病院が調整した「鴨川モデル」です。地震・津波・原発の被害により深刻な状況にあった、福島県いわき市の老人保健施設小名浜ときわ苑を千葉県鴨川市のかんぽの宿へそのまま疎開させました。お年寄り120人と、職員とその家族70数人の「集団疎開」です。介護事業のため組織化され、一体として機能する人・物(施設以外)・金・情報を、散逸することなく丸ごと移転し、介護事業を鴨川市で継続することができます。いわき市が今後も介護報酬を支払うのです。被災地のコミュニティや機能を維持したままの「集団疎開」ですから、将来いわき市で事態が好転した場合にも、復興が容易です。一部の 報道では、バスで移動中に入所者2人が亡くなったことが取り上げられましたが、すでに体力が落ちたお年寄りの中には肺炎球菌による肺炎が何人かいましたし、バスから自力で降りられないほど弱っていた方がたくさんいたそうです。いわき市に残っていたら、かなりの死者が出ても不思議はなかったのですから、移動中の死亡がわずか2人で済んだのはむしろ驚異的です。200人近い命が救われ、今後の新しい生活を築いていけることは、将来のいわき市の復興にも希望をもたらしました。こうした「集団疎開」が各地で実現すれば、より多くの命が救われ、将来を見据えた生活を始めることができるのではないでしょうか。 福島原子力発電所の影響で、東日本の電力は供給不足が続く見込みです。一般の住宅も医療機関も交通網も、皆、計画停電に悩まされています。被災地からの移住先は、東日本ではなく、60Hzの西日本を目指すほうがよいでしょう。 こうした「集団疎開」や「移住」は、まだわずかしか進んでいないように見受けられます。その一因として、体育館型避難所の生活に死亡リスクがあることや、全国で住宅の提供が増えているといった情報が、通信手段がまだ限られている避難所の方々に、あまり届いていない可能性があります。被災した方々にも、こうした情報を知っていただき、まずは今を生き抜くことを考えていただきたいのです。住み慣れた土地から離れたくない方もいらっしゃるでしょうけれど、その 一方で、他の土地に親類がいる場合など、自主的に疎開した方もたくさんおられます。移住する選択肢があるとわかれば、一刻も早く、体育館型避難所から避難して、新しい生活を築こうと考える方も増えるかもしれません。それが、結果として一人でも多くの命が助かり、一日も早い復興につながるのではないでしょうか。 http://yamagata-np.jp/feature/shinsai/img_2011031300133.jpg
http://yamagata-np.jp/feature/shinsai/kj_2011031200275.php 体育館で暖をとる被災者のみなさん ■筆者プロフィール 村重直子 (むらしげ なおこ) 1998年東京大学医学部卒業。横須賀米海軍病院、ベス・イスラエル・メディカルセンター内科(ニューヨーク)、国立がんセンター中央病院を経て、 2005年厚生労働省に医系技官として入省。2008年3月から大臣直属の改革準備室、7月改革推進室、2009年7月から大臣政策室。2009年10月 から内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)付、2010年3月退職。現在、東京大学勤務。 |
被災者支援情報
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阪神大震災の時と大きく違うのは、被災者のモチベーションだと思うのです。今回は喪失感が余りに大きく、実際の被災エリアも大きいので被災者が自分たちで考え立ち上がる意思が低いように思えます。
それは仕方が無いことで、阪神の時から十数年、被災者の平均年齢は20歳以上高いと想像します。もう動けないのでしょう。
自分たちで動けない人達に自らの要望や意思を聞くより、まず避難所から出してあげることだと思います。もう3週間たっているのにこの状態は何もしていないことと同じです。
2011/4/1(金) 午後 6:20
dunubの窓さん
いらっしゃいませ。
そうですね。今回は、TVを見ているだけの人にも強いストレスがかかっていると報道があるくらいです。現地のかたに、いかに強烈なストレスがかかっているかを考えると、胸がつまります。
>自分たちで動けない人達に自らの要望や意思を聞くより、まず避難所から出してあげることだと思います。
今回は街ごとなくなる(津波に流される)ということが起きているので、まずは一旦移動して、少しずつ状態がおさまってから地元に戻る、ということをしてもいいかもしれません。
生まれ育った街を後にするのは、辛いことかもしれませんが、この医師の指摘によると「まずは生きること。生き抜くこと」と言われているので、一時の対応としてよい案かもしれませんね。
2011/4/2(土) 午前 1:12 [ success ]