こう考えるのが通常の参議院選挙の理解だろうが、民主党党首は鳩山氏、菅氏と2代続けて奇妙な行動に出た。それは、昨年総選挙における普天間発言であり、今回の消費税発言である。両方の問題ともに民主党のマニフェストには抑制的に書いてあった。特に普天間をめぐっては、普天間の「普」の字も入ってなく、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とあるのを「国外、最低でも県外」と選挙中も、首相になってからも言い続けてきた。それが、袋小路から抜け出すことができなくなり、結局、鳩山首相退陣の契機になった。
≪慎重を要した消費税の論議≫
今回の消費税についても、「早期に結論を得ることをめざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」と民主党マニフェストには書いてあるのに、菅首相は、10%と税率に触れ、さらには、軽減税率や還付にまで踏み込み、今回の争点が消費税であるかのような訴え方をした。党首の選挙中の口約束は、マニフェストの一部と考えるべきである。それは、鳩山内閣での普天間問題でいやというほど経験したはずだ。
一般論としては、歳入のことに触れるのは正しいし、マニフェストに負担や痛みを求めることは、妥当なことである。しかし、昨年の普天間発言と同様に、菅首相の消費税発言は、十分詰めた上での発言とは思えない。確かに、戦略的には、自民党の案を素材に議論するということは、批判を相殺する効果があり、また、準備を考えれば次の総選挙の直前に消費税問題をいい出すよりもましである。
しかし、過去の事例を見れば、もっと慎重であるべきだろう。つまり、税制体系全体を見た上で、歳入をどう確保するのか、「見てくれ」だけの歳出削減ではなく、実質的削減に切り込むにはどうするのか、ということの上に消費税問題がくるべきだった。
参院選の結果、3分の2の再決議を使うことができない本格的「ねじれ」がやってくる。実は、自民党が考えていたことは、改選第一党の議席と同時に、参院選の勝利だけでは政権が取れるわけではないので、次の総選挙までには与党の過半数割れ、つまり「ねじれ」狙いの選挙であったといえる。となると、民主党はこの「ねじれ」をどうしのぐのか、ということが重大なテーマになる。それは、安倍政権が敗れた2007年参院選挙後の状況に似ている。
≪「ねじれ」国会での連立は≫
過去の参院における与党側の過半数割れは、89年以降の自・公・民という「閣外連立」や98年の金融国会における政策新人類が活躍した野党案丸飲みの「金融国会」、その後の、自・自・公から自・公への連立や、2007年福田内閣が模索した「大連立」などさまざまな試みがなされた。確かに、あらかじめ衆参ともに実質的に過半数を維持しておけば法案は通過しやすいが、その連立の模索が、少数政党の地位と発言力を異常に高めてきた。
政権基盤である衆院の過半数が十分に維持されていながら、なぜ、参院の運営ができないのかということが、この問題の本質である。参院問題には憲法改正から国会運営の戦術まで多数の意見があるが、現行憲法を前提としても、工夫は多数あるし、その模索はまだ不十分なのである。
政策ごとの連立(部分連合)や、両院協議会を機能させる工夫とか、下院で勝利した党のマニフェストの主要項目は上院では否決しないというイギリス型の「ソールズベリー協定」の模索など、まだ努力すべきことは多い。
確かに、民主党は2007年の参院選の勝利を「ね
じれ国会」に持ち込むことで、政権交代のきっかけ
を作った。 今、民主党はその逆のことに直面するが、ここで述べた参院を動かす工夫と努力をどれだけ今までしてきたのか、また、それを実行するだけの知恵と人材がどれだけいるのかを考えると見通しは暗い。
(そね やすのり)