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そう,あれは私が小学生の頃のことである。国語のテストでの出来事であった。
この小説を今,読んでいるあなた,そう,あなたにも記憶があるだろう。
上のほうに5つ程度「先生が」とか「弟が」とか「猫が」という主語が並び,下のほうにも5つ程度,上に続く言葉,「ねずみを捕まえました」「こまをまわしました」「本を読みました」というようなものがあって,上と下を泉で結んで文章を作るという,あのテストである。
不幸は思わぬところから始まった。
そのテストの2,3日前,私の弟がどこからかねずみを捕まえてきおったのである。これが,今思えば,すべての不幸の始まりであったのだ。ああ,何たることを・・・
このとき,あのようなおぞましい事件が起こるとは,誰も想像できなかったであろう。
そしてテストは始まった。順調にテスト問題を解いていった私は「このテストはもらったぜ」と,ほくそえんでいたのであった。そして線でつなぐ問題に立ち向かおうとした。
そこには上と下に5個ずつ言葉が並んでいた。
私は「おおっ,これはサービス問題ではないか。はっはっは。ちょろいぜ・・・まだ時間はたっぷりあるぜ。後回しで十分!!」
そうなのだ。これが不幸の序章だったのである。
次の問題は「なんだ,これは?ちょっと難問だぞ!」動揺を隠しながら,慎重に問題を解きすすめる私。
時間は刻一刻と過ぎていく。
「ちょっとやばいぞ。もう少し時間が欲しい。おお,神のご加護を・・・」
何とか問題を解き終えた私はここで一息ついた。
「ふう・・・やるじゃねえか。でもオレと対決しようなんて10年早いぜ。チッチッチッ。さあ,元の問題にもどろう」
そこで私は時計を見た。
「ええっ?」
私は自分の目を疑った。
顔から血の気が引くのを感じた。
「なんたることだ。オレとしたことが・・・あと1分もない・・・」
朦朧とする意識のなかで,2本まで線をつないだ。時間がない!
次だ。
「弟が」?
「どれだ,どれなんだ!」
あった!!
「ねずみを捕まえました」
そのとき,私の頭の中には,ねずみを捕まえて得意げに笑っている弟の姿を思い浮かべていたのである。
「やった,できたぞ!!」
そう思ったとき,無常にも,
「ハオ,そこまでー」
という先生の声。
「待ってくれ,もう少し時間をくれ!!うおおおおおおおおお・・・」
私は残りを読まないまま,残りの2本の線を引いたのであった。
そして,テスト返却のときが来た。
先生が言った。
「猫が本読むか?」
ガーンガーンガーン・・・私の記憶はここで途切れたままである。
「弟が−−−ねずみを捕まえました」
「先生が−−こまをまわしました」
「猫が−−−本を読みました」
この瞬間,伝説は始まった。
そう,「猫に本を読ませた男」・・・
(おしまい)
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