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インド博物館にある、10世紀西ベンガル(東インド)のドゥルガーマヒシャースラマルディニー(水牛の阿修羅を殺す女神)。
そういえば、ドゥルガーという神格は、ヒンドゥー教の主要神のパワーを集約した最強の“シャクティ”で、現在に至るまで盛んに信仰されているにもかかわらず、美術館で優れた作例に出会えることって意外と少ない気がする。
美術館に収蔵されている作品は、支配階級や有力寺院の発願による洗練されたヒンドゥー教正統派のものが中心で、密教色が濃く、民間の作例が多いドゥルガーは、あまり見かけないということなのだろうか?
いずれにせよ、このドゥルガーのイガイガした作風は、インド博物館の展示室で、異彩を放っていてインパクトがある。
図像の複雑化(儀軌の重視)と造形のダイナミズムは反比例する。ヒンドゥー教興隆期(6〜8世紀)のダイナミズムとスケール感溢れる西インド石窟寺院の壁面彫刻とは対照的に、パーラ朝(8〜12世紀)の東インドの彫刻は動感や量感が無くなり、体型も華奢で抽象的、背景もより複雑な意匠で埋め尽くされるようになった。
華奢で緻密な工芸的作風は、こういう猛々しいキャラには向いていない。そこで彫工は、10本の腕は太めに表し、ツルツルの光沢仕上げにすることが多い肉身部を、あえてざらついた仕上げに。そして、コスチュームのイガイガしたモールドとの相乗効果で、ゴツいイメージをつくり出すことによって、複雑化した図像学的約束事を守りつつも、女神の漲るパワーを演出しようとしたのかもしれない。
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