おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

中国編

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故宮博物院その1

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遺跡に魅力があるのはそれが死んだものだからではなく、新たな生を生きているからだといえなくもない。前回の雲岡はもとより、ピラミッド、アンコールワット、パルテノン神殿、マチュピチュ等、それらは少なくとも一度は放棄されて荒廃し、原形をとどめていないものだ。

近代建築の廃墟というやつもそうだ。あれがきれいなまま原形をとどめていたなら、誰も面白がってスケッチにいったり写真を撮りにいったりしないだろう。

時代や地域あるいは宗教が違う(他者である)文明の産物 → しかも壊れて用途や意味がわからない → 自分たちのいる世界を相対化する異界の存在 → 好奇心をそそる……となる。

ゴシックホラーの謂れは、放棄され朽ち果てた英国のゴシック教会の廃墟から来ているらしいが、やはり人智の及ばない異界の存在をそこに見るからだろう。

グロテスク(怪奇幻想趣味)の語源はグロッタ(洞窟)。ルネサンス時代に発掘された洞窟内の壁画から来ているが、元々は洞窟ではなくローマ皇帝の邸宅が地中に埋もれたもの。建築家は古代に学んだ古典様式の建築の傍ら、人口洞窟のある庭園づくりにもいそしんだという。

いずれも当時の人類の叡智を結集して造った巨大建造物が、放棄され風雨にさらされ、地中に埋もれて崩壊し、人智の及ばない造形をかたちづくったもの。人々はそこに、日常の社会的規範や合理性の檻から解放されるようなワクワクする快感を覚え、イマジネーションを逞しくしていく。

これは、既存のものを新たな文脈の中に読み取って(誤解して)、自己意識を拡大しようとする芸術表現の手法でもある。ようするに、人間の脳の働きがそうさせるのだ。


で、やっと故宮の話である。その点故宮は、文字通り死んだ宮殿。崩壊もせず、あらたな生(意味付け?)を受けることも無いまま世界遺産になってしまった。

この住人を失ったヒューマンスケールを超える巨大な空間では、人は巨人の国に迷い込んだかのように、焦点も定まらないまま彷徨い歩くしかない。

そして、それは巨大で原形をとどめたままであるが故に空虚だ。

そんな中、ほっとさせられたのが、お土産物屋の奏楽人形。自分が小人に思えるこの空間では、自分よりさらに小さい可憐な存在に、いとおしさを感じてしまうようだ。……と、これは単に都市文明の中で働く大の男が美少女フィギュアに萌える精神性に過ぎないか…?


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