おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

インド編

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カンダーリヤ・マハーデーヴァ、ヴィシュヴァナータ、ラクシュマナといったチャンデッラ朝最盛期の大型寺院の林立するカジュラーホ西群の中で、規模の小さいチトラグプタ(紀元1000年建立)は、うっかり見過ごしてしまいそうな寺院であるにもかかわらず、その壁面彫刻の美しさで知られている。

私が初めてカジュラーホの彫刻を知ったのは、十代の終り頃、家にあった古い世界美術全集によってだった。白黒の図版で、ミトゥナ像には誰が付けたのか、文学的な表題付きで紹介されていたのが面白かった。その中で「世界を抱く者」というタイトルが付いていたのが左画像のミトゥナ。

シヴァではなく、太陽神スリヤに捧げられた寺院のせいか、チトラグプタには性交するミトゥナ像は無く、代わりにこのように、今まさに口づけようとする情熱的な像がある。寺院西側(裏手)にある、かつて見た全集の図版と同じこのミトゥナに出会った時は、西陽が抱き合う2体を輝くように照らし出していた。

形式化した頭部の宗教彫刻らしい空々しさとは裏腹の写実的な肢体表現は、若い娘の一途な情熱を思わせて、新鮮な感動を覚える。

まだあどけなさの残る左画像の女性像に比べ、寺院北側の右画像の彫刻は成熟した肢体を激しくくねらせて魅了する。身体をゆるやかにS字型に曲げるトリヴァンガ(三屈造像法)どころではない弓なりのテンション。頭部や手足を失った今では、カジュラーホ中、最も美しいトルソといえるのでは?

ミトゥナ、スラスンダリー、ナーイカーといったヒンドゥーパンテオンの周辺的存在にこうした優れた作例が見受けられるのは、図像的制約が少ない分自由度が高く、彫工の個人的思い入れや、創意工夫を反映しやすかったからだろう。宗教美術ならではの形式化した彫像群の中、こうした作品を見つけ出すのが、カジュラーホ寺院巡りの楽しさでもある。

優れた女神彫刻には、固く乾いた石の建造物にぬめるような生動感を与え、形式化した男神像の静的な秩序を打ち破るようなエネルギーを感じる。その分強い存在感があるから、見つけ出すのはたやすい。それがシャクティでもあり、きっと、エッチだとかエロいだとかで片付けちゃいかんのだろう。


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