おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

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エクステリアであれインテリアであれ、寺院や教会の建築装飾としての美術など本来は退屈なものだ。それが真面目に造営されたものであればある程、同じ像を延々と彫り続けて行くうちに形式主義に陥って、芸術としては生気を失ってしまう。

アンコールの寺院だって例外ではない。ジャヤヴァルマン7世の時代(12世紀)の寺院など、数多く造営されたものだから、その壁面に彫られたデヴァターもつまらないものが多い(バイヨンは別として)。タ・ソム寺院だったと思うが、そこに彫られたデヴァターは皆が皆、顔がジャヤヴァルマン7世の彫像とそっくりでうんざりしたものだ。なんでデヴァターの顔を全部オッサンにしてしまうの!? 1体や2体なら笑えるけど…。

ましてやアンコール・ワットのように、広大な境内に2000に及ぶ数となるとなおさら…、と思うのだが、あにはからんや、人がよく通る場所から離れれば離れる程、確かにヘタクソにはなるものの、けっして形骸化はしない。彫工の趣味丸出しになったり放縦になったりと、宗教美術としての約束事を越えて、妙にデモーニッシュな創作意欲が顔を覗かせるのだ。

この西塔門東側だけを見ても、“その1” の中央入口の、技術は高いが無骨で真面目な彫像に始まり、その付近の新しい様式への試行錯誤とその成果を感じさせる “その2”。完成した様式から “その3” “その4” “その5”、と中央入口から離れるに従い、洗練されて創造的エネルギー感が薄れ、ついには形骸化…、とはならずに、画像のように摩訶不思議な造形が現れ出すのだ。

いいものは残るというけど、こういうものが何百年経っても立派に残っているのを見ると、出来はどうあれ、朽ち果てない材質の石はスゴいと妙に感心してしまう。

いずれも、これまでのように宝冠を冠っていないところからして、他の西側壁面のデヴァターたちとは制作時期そのものが違いそうだ。下画像の浅い浮彫りと背景の花のパターン模様(これは他の西側壁面と遜色無い)は西側のものでも技術的に歴然とした差があって、何ともアヤシイ。右側デヴァターの、洗い髪を絞るようなしぐさは仏教・ヒンドゥー文化圏では伝統的な主題で、バイヨンでも見られるが、アンコール・ワットでは珍しい。それにこのポーズ、右腕が胸と重なるのでデッサンが難しく、案の定、見事に失敗しているのがご愛嬌。コスチュームの写実的な描写とプロポーションをわきまえた他のデヴァターとは明らかに趣きが違う。

上画像は、マカラを配した背景の植物文が “デヴァターのギャラリー” として知られる西塔門東側壁面のものだし、こういうヘアースタイルのヴァリエーションや、柔らかで厚みのある造形感覚も東側で展開するものだから、場違いな印象がする。それにしても3体ともプロポーションが崩れ(例えば中央の像は左右のオッパイの大きさが違う)、顔もぜんぜん美人じゃないのが可笑しい。西側のデヴァターにしては肩幅も広いので、男がコスプレやっているようにも見えるし、東側壁面の華麗なデヴァターたちのパロディーみたいで、これもなかなか笑える。


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